年内最後の国際親善試合を終えた日本代表について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第73回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、年内最後の親善試合を終えた日本代表について。ベネズエラ戦、キルギス戦を1勝1分で終えたが、アジカップにむけて課題と収穫の両方があったと宮澤ミシェルはいう。

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日本代表はベネズエラ代表と1対1の引き分け、キルギス代表を4対0で下して年内最後の国際親善試合を終えたが、ベネズエラ代表は手強いチームだったね。南米最弱と言う意見もあるけれど、スアレス抜きだった10月の対戦相手のウルグアイ代表よりも全然よかったと思うよ。

キルギス代表は個の力が欠けていて、日本代表が圧力を持って攻撃を仕掛けると、ただ自陣に引いて守るだけだったけれど、ベネズエラ代表は違ったね。しっかり個の力も持っていたし、4‐1‐4‐1の布陣を敷くベネズエラが、中盤にしっかり5枚並んだときは、日本代表でも崩しきれなかった。

中央にスペースがなくなったことで、両サイドMFの堂安律と中島翔哉は立ち位置が難しかったね。強い相手になるほど相手のストロングポイントを消してくるだけに、日本代表にとっては今後、攻撃のポイントである両サイドMFを封じられたときにどうするかは興味深いよ。

ベネズエラ戦は相手の守備網が固いなかでシュートチャンスを数多くつくったし、決めるところを決めていたら勝てた試合だけど、そこに到達するまでの相手のプレッシャーがきつかったことが、最後の最後で日本代表を慌てさせた。

ただ、ベネズエラ戦の日本代表は交通渋滞にハマって、会場到着が大幅に遅れて満足なウォーミングアップができていなかったことを考えれば、評価できる内容だったよ。

キルギス戦はスタメン11人を総入れ替えして臨んだが、結果的には途中から起用したスタメン組の大迫勇也、堂安律、南野拓実、中島翔哉の攻撃レベルの高さが際立つものになったね。

森保ジャパンの攻撃のカギは、相手ゴール前のバイタルエリアをどう攻略するか。キルギス戦のように相手に引かれてゴール前を固められた時には、バイタルエリアを攻めるには逆サイドから一発で斜めに入るボールが必要になるんだけど、それが見られなかった。相手守備網の外側を各駅停車の横パスでつなぐだけで、縦を突くパスがなかなか入れられなかったしね。

左右のMFに入った伊東純也と原口元気は槍タイプなことも、攻撃を空回りさせた要因のひとつ。彼らは縦にスペースがあったときに最大限に持ち味を発揮する選手だけど、中央に絞ってのプレーでは、それを得意にする中島や堂安との差が出ちゃった。

ただ、原口にしろ、伊東にしろ、途中出場からは使える目処が立ったのは好材料だね。スタメンとしてのクオリティーは少し劣るけれど、チャンスメイカーとしては抜群なのはアピールしてくれたよ。

来年1月にUAEで開催されるアジアカップではグループリーグでウズベキスタン、オマーン、トルクメニスタンと対戦し、優勝するには最大7試合を戦わなければならない。UAEの1月は暑く、勝ち上がっていくには、キルギス戦のようにサブ組にスタメンを任せなくてはならない試合もある。

常にベストメンバーで臨めない大会になることが予想されているだけに、キルギス戦ではそのテストができたのは収穫だったと思うよ。もちろん、キルギス戦のサブ組メインの時間帯で見せたような攻撃では迫力不足で不安も残している。けれど、アジアカップにぶっつけ本番でサブ組をスタメン起用したら手にできなかった課題が浮き彫りになったのは収穫だったね。

アジアカップまで日本代表が活動する時間はないけれど、1試合でも経験しているかの違いは大きいよ。サブ組がこの経験を振り返って各自が課題を持って次の日本代表での活動に臨めるからね。

森保一監督のもとで日本代表が始動してから3ヶ月。親善試合で4勝1分けと、アジアカップへの期待感も大きくなっている。若く新しい日本代表がアジアの頂点を決める舞台でどんな戦いを見せてくれるのが、いまから楽しみでならないよ。

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