注目を集めた今年のフリーエージェント。各球団の気になる「人的補償」は? ※写真はイメージです

例年になくプロ野球ファンの注目を集めた今年のフリーエージェント(FA)市場。各球団の残留・移籍交渉の末に、丸佳浩(よしひろ/広島→巨人)、浅村栄斗(ひでと西武→楽天)、炭谷銀仁朗(西武→巨人)、西勇輝(ゆうきオリックス→阪神)といった大物選手が新天地に活躍の場を求めた。

そこで気になるのが、「人的補償は誰になるのか」だ。先の4選手の年俸はチームの10位まで(1位~3位までがAランク、4位~10位までがBランク。外国人選手は除く)に入っているため、移籍元の球団には移籍先の球団から選手をひとり獲得できる権利が生まれる。

誰でも引き抜いていいというわけではなく、移籍先の球団が設定する「28人のプロテクト枠」から漏れた選手の中から、必要と判断した選手を選ぶ。そのリストにお眼鏡にかなう選手がいなければ、移籍元の球団は金銭のみを受け取る「金銭補償」を選択しなければならない。

通常、プロテクト枠から漏れるのは、実績はないが将来性のある若手選手か、ある程度結果を出した中堅・ベテランの選手。過去の人的補償の成功例としては、2013年に巨人にFA移籍した大竹寛の補償として、広島が獲得した一岡竜司が記憶に新しい。巨人時代に出番に恵まれなかった右腕は、今やリーグ3連覇を果たした広島に欠かせない中継ぎ投手に成長した。

今年もそんな"眠れる大器"がいるのか。まずは、阪神が獲得した元オリックス・西の人的補償から予想する。

オリックスはエースの金子弌大(ちひろ/旧・千尋)も日本ハムに移籍したため、先発投手の補強が急務。阪神からリスト漏れしそうな投手としては、ベテラン左腕の岩田稔がいる。

プロ12年で56勝という実績はあるものの、今季は勝利がなく、35歳という年齢も大きなネックになりそうだ。20代前半の将来性を感じさせる若手投手では、青柳晃洋(こうよう)、高橋遥人(はると)、尾仲祐哉、望月惇志(あつし)、浜地真澄らが候補に挙がってくる。

それを見越した阪神が、あえて若手投手を中心にプロテクトするかもしれないが、資金力が豊富なオリックスは「大物野手の獲得もありえる」と牽制(けんせい)。リスト漏れがあれば、手薄なサードを任せられる鳥谷敬(たかし)、DH起用も可能な福留孝介、出戻りとなる糸井嘉男を獲得する"ウルトラC"の可能性もあるだろう。

浅村と炭谷を同時に失ったパ・リーグ覇者の西武の課題も、やはり投手陣にある。打線が強力だった一方で、今季のチーム防御率はリーグ最下位の4.24。さらにエースの菊池雄星がポスティングシステムでメジャーに移籍することも決定しているため、2球団から計算できる投手を獲得したいところだ。

まずは浅村が移籍した楽天だが、実は岸孝之が2年前にFAで同球団に移籍した際、西武は人的補償を見送っている。しかし今回は、投手陣に苦しむ西武にとって魅力的な選手がいるかもしれない。リスト漏れの候補としては、釜田佳直(よしなお)や戸村健次といった実績のある中堅投手の名も挙がるが、面白そうなのが24歳のサウスポー・森雄大だ。

12年にドラフト1位で入団し、長く苦しいシーズンを経て昨季から存在感を見せ始め、今季は9試合19イニングの登板ながら防御率は2.37。150キロ近い伸びのあるストレートを軸にしたスタイルで、変化球は特にカットボールに光るものがある。今季は中継ぎとして回またぎの登板が多かったが、昨季までは先発として勝利を挙げているため、西武としては狙い目の選手と言える。

一方、炭谷を獲得した巨人は、昨年も西武からFAで野上亮磨(りょうま)を獲得し、人的補償として高木勇人を放出。その高木は今季1勝にとどまったが、巨人で通算15勝を挙げているだけに、来季に期待が持てる。

FAだけでなく、他球団の主力選手が続々と移籍してくる巨人には、実力はあるが出番に恵まれない若手選手が多い。前出の広島の一岡、14年にヤクルトに移籍した奥村展征(のぶまさ)、17年にDeNAに移籍した平良拳太郎らも、順調にチーム内で結果を出している。

今の巨人の若手には、イースタン・リーグ4連覇の原動力になった楽しみな選手がゴロゴロ。球団もそういった選手をプロテクトする可能性が高く、ベテランや移籍組の選手がリストから漏れることも考えられる。大竹や森福允彦(まさひこ)、今季6勝を挙げた吉川光夫も当落線上。

20代前半から半ばの生え抜き選手であれば、今季30試合に登板したサウスポーの中川晧太(こうた)、25試合に登板した谷岡竜平(たっぺい)の名が挙がる。

それらの投手が有力候補だが、炭谷を流出した西武は、森友哉、岡田雅利に次ぐ第3捕手が不在の状態。打撃がいい宇佐見真吾や、17年ドラフト2位の岸田行倫(ゆきのり)がリスト漏れとなれば獲得に動くかもしれない。特に岸田は、昨年のドラフトで西武が狙っていたという話もあるため要注目だ。

そして、丸を失った広島もまた、補強ポイントは投手になる。野手に関しては、丸ほどの打撃は期待できないまでも、成長著しい野間峻祥(たかよし)ら若手を中心に厚い選手層を誇っているからだ。

それに対して投手陣は、先発の駒は揃そろってはいるものの、中継ぎ投手を含めて右投手が圧倒的に多く、安定感もリーグ4連覇に向けて盤石とは言い難い。そこで、前述した巨人の投手陣から、中川や谷岡、ほかにはサウスポーの池田駿(しゅん)あたりがターゲットになる可能性が高い。

今季2年目の池田は27試合に登板。防御率は4.07だが、広島戦に限っては5試合6回1/3を投げて5奪三振。目立つ存在ではないものの広島戦では好印象を残している。26歳とこれからピークを迎え、リリーフはもちろん先発もこなせる万能型左腕だ。広島に移籍すれば"第二の一岡"になれるかもしれない。