今季のヴィッセル神戸について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第76回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、今季のJリーグで1番の話題を振りまいたチーム・ヴィッセル神戸について。世界屈指の選手・イニエスタの加入という日本サッカー界の歴史にとっても大きな出来事をもたらし、さらに来季に向けて元スペイン代表・ビジャの加入も決定。そんな、多くの話題を提供してくれたヴィッセル神戸の1年を宮澤ミシェルが振り返る。

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今年のJリーグを振り返ると、最大の出来事はやっぱりイニエスタだね。6月のW杯ロシア大会を最後にスペイン代表から退いたとはいえ、世界屈指の名手が現役バリバリのタイミングでヴィッセル神戸に来た。

サッカーファン以外からの注目が集まったのは、いつ以来か思い出せないくらい、久し振りにJリーグが世間の中心になったよね。

Jリーグ移籍後の初ゴールなんて、「さすがイニエスタ!」と唸らされたし、ボールを持ってないときの動き方、パスを受けた後の判断、ピッチでの佇まいなど、何から何まで「さすが!」の連続だった。

だけど、ヴィッセル神戸の成績はと言えば、リーグ戦の最終順位は10位。一時は降格圏間際まで追い詰められた。

昨年はポドルスキー、今夏はイニエスタと、ドイツ代表とスペイン代表のW杯優勝メンバーを獲得しながら、それに見合う順位でなかったことにガッカリした人も多いんじゃないかな。

でも、やっぱりサッカーは11人でやるものだってことなんだよ。世界的スター選手が一人二人いるくらいでは、いまのJリーグは勝てないレベルだからね。まぁ、でも、メッシならそれでも勝たせちゃうかもしれないんだけど。

ヴィッセル神戸はシーズン終盤にバルセロナで育成に定評があったリージョ氏を監督に迎え、降格圏からの脱出と来シーズンの指揮を託した。だけど、監督が代わったくらいでバルサのようなサッカーは出来たりはしない。

バルサ・スタイルを実現するには、選手のクオリティーが必要不可欠。パスなら味方の受けたい側の足元にビタッと入れる。トラップも次の動きでパスを出せるように一発で止める。そういう基本プレーの精度と質が高い選手を揃えないと難しいんだ。

本当の勝負はここからだよ。来季に向けてどんな戦力を揃えられるか。そこがカギだね。

クラブもそれをわかっているから、来季に向けて元スペイン代表FWのビジャを獲得した。バルサ時代はイニエスタと一緒にプレーしたから、イニエスタとの相性はバッチリ。攻撃陣は着実にリーグトップクラスの陣容になったと言ってもいいよね。だからこそ、守備陣のレベルアップを果たせるかどうか。

なぜならポドルスキーに守備はまったく期待できないからね。今季は相手にボールを持たれたときに彼の運動量の少なさでDF陣にしわ寄せがいって失点するシーンが目についた。センターバックで大崎礼央や渡部博文、宮大樹、アーメド・ヤセルが使われたけれど、彼らは頑張っていたからね。

中盤でプレッシャーがかからないとDFラインは後手を踏んでしまうんだよ。シーズン終盤はイニエスタが中盤の低い位置にポジションを取ってリスクを減らしたりしたけれど、それだと宝の持ち腐れ。やっぱり彼にはもう一列前でプレーして攻撃の起点になってもらわないと。

そのためには、やっぱりボランチのところとサイドバックだよね。ここをどう補強できるかが神戸にとっての来季の課題だよ。ポドルスキーの守備の弱さを埋めて、さらにお釣りが出るくらいの選手を補強できれば、それだけで守備のレベルは今季よりも断然高まるからね。

報道ではセレッソ大阪から山口蛍をボランチに獲得するだとか、トルコのベシクタシュに所属する元バルサのSBアドリアーノ・コレイアを獲るだとかが出ている。

移籍交渉は本決まりになるまでどう転ぶかわからないけれど、こうした報道が出るのは裏を返せばクラブがちゃんとイニエスタを生かすメンバーを揃えようとしている証でもあるよね。

クラブがしっかりとクオリティーの高い選手を揃え、イニエスタやビジャを活かせるチームをつくろうとしている。それが実現できたときには、来季のヴィッセル神戸はリーグ戦の中心になるだろうし、どんなサッカーを見せてくれるのか楽しみにしているよ。

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