2017年から無敗の快進撃を続け、大晦日は「RIZIN女子スーパーアトム級タイトルマッチ」に臨む浅倉カンナだが、今年は「なんかモヤモヤしていた」という 2017年から無敗の快進撃を続け、大晦日は「RIZIN女子スーパーアトム級タイトルマッチ」に臨む浅倉カンナだが、今年は「なんかモヤモヤしていた」という

2017年の大晦日、「RIZIN女子スーパーアトム級トーナメント」で優勝して以降、18年は無敗で走り続けた女王・浅倉カンナ(パラエストラ松戸)。昨年に続き今年7月の再戦でもRENAを下し、いよいよ大晦日の大一番に挑む。

その相手は、アメリカ女子総合格闘技団体「Invicta FC」で世界王座に君臨した経験を持つ浜崎朱加(あやか)だ。この一戦は「RIZIN女子スーパーアトム級タイトルマッチ」として行なわれるが、世界的な強さを誇る浜崎との対戦を前に、浅倉は何を思うのか? 女子格闘技界を背負うRIZIN女王としての成長と葛藤について語った──。

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──浅倉選手には、今年の年明けにも週プレNEWSにご登場いただきましたね。ほら(当時の記事を見せながら)。

浅倉 うわっ、懐かしい! なんか私、幼く見えますね。

──約1年で、だいぶ大人っぽくなりましたね。

浅倉 それ、今の私にとって一番の褒め言葉です(笑)。

──ハハハハ! 昨年のトーナメントで優勝してベルトを巻いて以降、心境や環境の変化もあったと思いますが、この1年はどうでした?

浅倉 本当にいろいろありました。「チャンピオンだ!」と言ってくれる人が増えたり、街中で声をかけてもらえることも増えたり......それはうれしいことなんですけど、実感がないというのが本音です。というのは、「チャンピオンなんだから」と思って行動するのは自分らしくない気がしていて。「今までと変わらずにいたい」というのが本音で、あんまりチャンピオンらしくできなかったかなあ。

──それは、どういう理由からですか?

浅倉 もともとの性格もあるかもしれないですけど、「まだまだ強い人はいっぱいいる」というのが一番ですね。まだ何かが足りていない気がするし、自分の中では「途中」なんです。なんかモヤモヤしていましたね。

──11月上旬にアメリカへの出稽古を決行しましたが、それはその「モヤモヤ」を断ち切るため?

浅倉 そうなんです。ずっとアメリカで練習してみたいと思っていたんですけど、今回はその希望が叶いました。エディ・ブラボー主宰のジム『10th Planet』で2週間ちょっとお世話になりました。ここは寝技が強いジムで、女子選手も凄くたくさん練習しています。私は国内では男子選手と練習することが多いのですが、男子選手相手だとどうしても体力面では負けてしまうから、自分が成長しているという実感を持ちにくいんですね。やっぱり、女子選手との練習のほうがギリギリのラインで「今日はどっちが強いか」を毎日競えますから、やっていて楽しいんですよ。

──最も勉強になったことはなんでした?

浅倉 「こんな技があるんだ」という発見があったことです。たくさんやられたんですけど、やられた技はひたすら聞き返して覚えるようにして。だから、今回の出稽古で一番伸びたのは寝技への防御力かもしれないですね。一回やられた技って、次に仕掛けられると「これヤバいかも」とわかるようになるんですよ。あとは、強い人を目の前にしてモヤモヤが吹っ切れました。女子のUFCファイターとも初めてスパーリングしましたが、向き合った瞬間に「この怖さは体感したことがないぞ」と思えたのも、いい経験でした。

──「もっと強い人」と練習したことで、逆に安心したんですかね。

浅倉 たくさんやられちゃったのに、逆に自信がついたんですよ。結局、悩んでも練習するしかないんだから、楽しくやっているほうが絶対に強くなれるなって。

11月にアメリカへの出稽古を敢行。「もっと強い人」と練習することで「モヤモヤ」を断ち切ったという 11月にアメリカへの出稽古を敢行。「もっと強い人」と練習することで「モヤモヤ」を断ち切ったという

──帰国後には、浜崎朱加選手とのタイトルマッチ調印式が行なわれました。その記者会見の場で、RENA選手が「9割は浜崎さんが勝つと思う」という強烈な爆弾発言を投下しましたね。

浅倉 ......まさかの発言でした(苦笑)。そのときはちょっとイラッと来ましたけど、よくよく考えたらRENAさんは浜崎さんとずっと一緒に練習しているし、浜崎さんの強さをよくわかっているので仕方がないのかもなって。でも、素直に「なんであんなこと言うんだろう......」とは思いましたね。

──なぜ、RENA選手はあんなことを言ったんだと思いますか?

浅倉 ......え? なんでだろう? 確かに、なんで言ったのかなあ? そんなこと、全然考えなかったです(笑)。

──RENA選手の発言で、ますます浅倉カンナvs浜崎朱加は目が離せない一戦になったような気もします。

浅倉 あ~。じゃあ、もしかして私のためなんですかね? そう捉えたほうがいいのかな? そうだったら感謝します!

──めっちゃ素直ですね(笑)。

浅倉 確かに、私の中でもあの日はRENAさんの発言が一番心に残りましたし。でも、私も言い返したい気持ちはあったんですよ......。

──それこそ浅倉選手はRENA選手に2回勝利しているので、言い返す権利は十分にあったんじゃないですか?

浅倉 咄嗟(とっさ)のことだったんで、「がんばります」しか言えなくて。でも、私も思いました。「2回も負けてるのになぁ」って。

──だからなおさら、言い返してもよかったと思いますよ。

浅倉 う~ん......よく言われるんです。「チャンピオンなんだから、もうちょっと言ってもいいんじゃない?」って。でも、私の中では「もっと強い人がいるんだから」というのがブレーキになっちゃうんですよね。

──浅倉選手が交際中の那須川天心選手は、どういう発言をしたらメディアやファンの注目を集めるか、よく理解しているような気がします。那須川選手から学ぶことはありますか?

浅倉 正直、そこはあんまり意識していないですね。

──では、一番刺激になっている部分とは?

浅倉 えー、どこだろう......。難しいですね。あんまり普段そんなことは考えてないし、別に強いから一緒にいるわけじゃないですし......。でもひとつ挙げるなら、背負っているものは大きいけど、それを人に見せないところですかね。同年代なのに全然違うなあ、凄いなあ、と思うときはあります。

レスリング時代から磨き続ける得意のタックル。大晦日の相手、浜崎朱加には「倒しても下からの極めもあるので油断はできない」と浅倉は言う レスリング時代から磨き続ける得意のタックル。大晦日の相手、浜崎朱加には「倒しても下からの極めもあるので油断はできない」と浅倉は言う

──大晦日のフロイド・メイウェザー戦なんか、やっぱりとんでもない試合ですもんね。お話をうかがっていると、今年の浅倉選手は等身大の自分が、ベルトを獲って予想以上に大きくなった「女王・浅倉カンナ」像に追いつくために必死にもがいていたという印象を受けます。

浅倉 ああ、そうですね。ベルトを獲って一気に飛び級しちゃった感じなので、現実に追いつくために必死でした。だから、その溝を早く埋めたいんです。

──そこが埋まったときに、RENA選手へのカウンタートークにも対応できるんじゃないか、と。

浅倉 確かに、それは言えるようになるかもしれないですね。

──そこを埋めるのに重要なのが、やはり浜崎選手との一戦ということですね。

浅倉 浜崎さんは今まで闘ってきた選手とレベルが違うぐらいの実力者ですから。2年前に一緒に練習をしたこともあるんですけど、当時はボコボコにされましたしね。

──浜崎選手のRIZIN参戦が決まった時点で、闘う予感はありました?

浅倉 予感はありましたし、9月の『RIZIN.13』で浜崎さんが黒部(三奈)さんに1R一本勝ちしたときに、「次は私だ」と思ってドキッとしました。対戦するにはちょっと早すぎるなあとも思っていましたが、決まった以上は一気にスイッチが入りましたし、「勝てる」と信じています。

──どんな試合になると思います?

浅倉 判定決着の苦しい試合になることは覚悟しています。得意のテイクダウンは狙っていきたいんですけど、浜崎さんは倒しても下からの極(き)めもあるので油断はできないです。でも、なんといってもタイトルマッチですから。

──「初代チャンピオン」のベルトがかかると燃えますか。

浅倉 よけいに燃えますね。ベルトは特別です。今、(昨年のトーナメント優勝のベルトが)家の棚の上に飾ってあって、愛着もありますから(笑)。初代チャンピオンのベルトも獲って、ふたつ並べたいです。1年前にベルトを獲ったときは、心から「格闘技やっててよかった」と思えたんです。今回はさらにそれを上回りたいんです。それができたときに、やっとひと皮むけるのかなって。

──ひと皮むけたら、いきなり"ブラックカンナ"が降臨したりして。

浅倉 じゃあ、口喧嘩の練習もしないと(笑)。でもその前に、やっぱり私はベルトです。まずはしっかりベルトを獲って、ちゃんと「女王・浅倉カンナ」を実感したいですね!

●浅倉カンナ
1997年10月12日生まれ、千葉県出身。パラエストラ松戸所属。2014年プロデビュー。16年大晦日のRIZIN初参戦では苦杯を飲んだが、17年の「女子スーパーアトム級トーナメント」では決勝でRENAを下し優勝。18年も無敗の快進撃を続けている。大晦日、浜崎朱加を相手に初代女王決定戦に臨む

■その他の対戦カードなど詳細はRIZINオフィシャルサイトまで