今回はワークウエアで知られる自重堂の撮影で緊急来日した新庄氏を直撃!

2006年、日本ハムを44年ぶりの日本一に導き、現役を引退。現在はバリ島で自由な生活を満喫しているという新庄剛志(しんじょう・つよし)、46歳。

「野球界への未練はゼロ」と語るこの男に、今の日本球界はどのように映っているのか?

* * *

■「僕とイチロー君、どっちが守備うまい?」

――現在はバリ島在住と伺いましたが、どんな生活を?

新庄 思いつきでバリ島に移り住んで10年。その間、20億円横領されたりとかいろいろあったんですけど、そのあたりは僕が9月に出した本を読んでください(笑)。バリでは時計も必要ないぐらい、ゆったりとした生活を送ってます。まぁ僕ももう53歳なんで。

――いやいや、46歳ですよね。

新庄 あ、違うか(笑)。今日のスタッフの方はみんな僕より年下だよね? 僕、こんな感じでメチャクチャ明るいんでよろしくね。

――存じております。最近は日本のプロ野球はご覧になったりされていますか?

新庄 いや、まったくご覧になってないですね(笑)。たまに日本に帰ってきたときに、記者の方から今年はどこが優勝したとか、一緒にやっていた誰々が監督になった、コーチになったと聞くぐらいで、情報もほとんど知らないです。僕、インターネットとかもよくわからないんで。

――実際に野球から離れてみて球界に未練はないですか?

新庄 ないない。僕、「終わり」って言ったら本当に終わりなんですよ。06年にファイターズで日本一になって、いや、日本一に"させた"って言ってもいいのかな。本当に毎日そういう気持ちですべてを出し切ったので、未練とかはまったくないですね。

――当時はまだ34歳で、十二分に余力を残しての引退にも見えましたが。

新庄 今思えば、しがみつけばあと5、6年、いや7年、10年はできたのかもしれないけどね。イチロー君とかはそっちのタイプでしょ。野球が大好きだから。あれ、イチロー君て、まだやってるの?

――まだ、現役です。

新庄 ごめん、もう僕、野球のことは全然わからないから(苦笑)。

――引退から12年、球界では毎年スゴイ投手や打者が出てくるものの、新庄さんのようなエンターテイナー型のスターはなかなか出てきません。

新庄 スター性っていうのは持って生まれたもので、みんなが持ってるわけではないのでね。やっぱり僕にしかない......ってちょっと、ツッコんでよ(笑)。ツッコんでくれないとこっちが偉そうやん(笑)。だけど、阪神時代は僕、ほとんどメディアにしゃべらなかったですよ。

――そうでしたか?

新庄 当時は、僕が理髪店に行っただけでスポーツ紙は「新庄、髪切った」って1面になる時代でしたから。先輩が活躍した日もみんな新庄、新庄、新庄って。それは違うやろ!って思ってたし、すごく居心地が悪くてイヤでしたね。実際、先輩にもイジメられたし、じゃあもう出しゃばらないでおこうって。

――01年にメッツに移籍されますが、その点、アメリカは居心地がよかったですか?

新庄 ニューヨークではそういう記事もまったくなかったし、自分の思ったことをすべて言える環境だったから本当に行ってよかったです。最初、給料は50分の1ぐらいになったけど、守備なら僕は当時、メジャーでも3本の指に入るという自信はあったからね。僕って守備うまいでしょ?

――も、もちろんです。

新庄 イチロー君とどっちがうまい?

――そ、それは......

新庄 アハハ、迷ってる(笑)。でも僕は自分では世界一うまいと思ってやってました。バッティングだって、集中力さえ続けば3割3分は打てたはずなんだけどね(笑)。

――生まれもってのスター性ということでいえば、先ほど話に出た本の中で長嶋茂雄さんとご自身を比較されていたのが印象的でした。

新庄 長嶋さんは「ワンちゃん(王貞治さんのこと)、僕の靴下知らない?」と言って、右足に2枚ソックスをはいてたような人ですよね。僕はもっと計算していましたよ(笑)。ただ、長嶋さんがスイングしたときにわざとヘルメットを落として、カッコいい空振りの練習をしていたっていうのは近いものがあると思います。

――新庄さんはどんな練習をしていたんですか?

新庄 タイガース時代は必ず2サイズ大きい帽子をかぶっていたんですよ。それでダイビングキャッチをしたときに帽子が脱げて"吉田栄作ヘア"を見せれば絶対人気が出るはずだって思ってて(笑)。当時、僕の中では髪型はあれしかありえなかった。吉田栄作ヘアって今の若い人はわからないかもなぁ(笑)。

■監督になったら開幕戦はジーパン

――新庄さんといえば阪神時代、あの大谷翔平選手よりもはるか以前に二刀流にチャレンジされていました。

新庄 僕、小学生のときはピッチャーをやっていたんですよ。でも面白くないから自分から辞めたんです。だって相手はみんな三振ばっかりだから。「なんで僕ひとりで野球しないといけないの?」って思って、外野に行きたいって監督に直訴したんです。外野って一番地味なところだけど、そこでカッコいいプレーをしたいと思って。だってそのほうが目立つでしょ?

――ザ・新庄イズムですね。

新庄 99年に阪神で野村監督にピッチャーをやれって言われたときも、オープン戦で2試合に投げて「なんだ、抑えるのって簡単やな」って全然、面白くなかったんですよ。小学生の頃と同じじゃんって。だから野村監督に「足が痛いからもう、ピッチャーやりたくないです」って言って。

――ウソだったんですか?

新庄 もちろん! 野村監督は「そうか、わかった」って言ってくれたんですけど、心の中では「うそピョ~ン」って思ってました(笑)。

――もし、当時ピッチャーを続けていたらその後、どうなっていたんでしょう?

新庄 そりゃ大谷か新庄かっていうぐらいには......ウソウソ(笑)。でも、野球なんて人生の暇つぶしなんだから、自分が面白くないことやってもしょうがない......って、こういうこと言うから僕、怒られるんだよね(笑)。まぁ、8歳の少年がそのまま大人になって野球をやってたと思ってください。

――球界への未練はゼロとおっしゃっていましたが、最近、新庄さんが某イベントで「僕が監督になったら面白いんじゃない?」と発言したと聞きました。

新庄 面白いでしょ? 今までの監督像とはまったく違うことになるよ。もし僕が監督になったら、まず開幕戦はジーパンで行くんじゃないかな。

――おおっ!(笑)

新庄 別に監督なんて何もしなくていいと思うんですよ。チームのテンションを上げれば、選手は勝手に結果を出してくれるんだから。ある選手がバントをミスしたときに「なんでおまえはあそこでミスしたんだ!」って怒る監督がいるけど、そんなことしたって選手が固まっちゃうだけ。監督が普通にうまい選手、肝っ玉の据わった選手をバント要員にすればいいだけの話で。

――なるほど。仮に新庄監督が誕生すると、どんな組閣になるのでしょうか?

新庄 ヘッドコーチに福山雅治。守備走塁コーチが木村拓哉。僕の友達ばっかり(笑)。

――本当の"お友達内閣"じゃないですか!

新庄 でも、これならファンもバンバン球場に来るでしょ。球団もホクホク。もう勝たなくてもいい、みたいな(笑)。それは冗談だけど、彼らが3ヵ月に1回でいいから、ベンチに入ってくれたら話題になるし、面白いよね。

――面白すぎです。

新庄 ピッチャーなんて打席に立ってもどうせ打てないんだから、それなら「ましゃ兄、打席立って」って(笑)。「代打・福山雅治」って見たくない?

――野球界でその発想を持っているのは新庄さんだけだと思います。

新庄 そもそもセ・リーグとパ・リーグの組み合わせが毎年同じって面白くないよね。それなら箱の中にセとパのボールを入れて、クジで「巨人は今年はパ・リーグ」「日本ハムはセ・リーグ」みたいにバラバラにしたほうが絶対、面白いと思うんだけどなぁ。

――リーグドラフトですか。

新庄 そこで優勝したチームとアメリカの優勝チームがシーズンの最後にワールドシリーズを戦って、勝ったほうにアラブの石油王が賞金50億円とか出してくれたら、メッチャ盛り上がるんじゃない。その監督が僕、みたいな(笑)。

――これは日本球界復帰宣言と受け取ってよいですか?

新庄 いや、大丈夫。絶対、話来ないから(笑)。

●新庄剛志(しんじょう・つよし) 
1972年生まれ、福岡県出身。89年ドラフト5位で阪神タイガースに入団。01年にメッツへ移籍。日本人選手初の野手としてメジャーリーグで活躍。ジャイアンツ、メッツを経て04年には日本球界に戻り、北海道日本ハムファイターズに入団。06年に現役引退し、現在はバリ島に在住

新庄氏が人生を超ポジティブに生きる方法を説いた新刊『わいたこら。』(1300円+税)と、プロデュースした着るだけで脂肪燃焼の効果がある加圧シャツ「VIDANTHE GHOST」(3900円+税)が好評発売中!