「スタメンで出られない『怒り』をプレーに出すことの重要さはこっちで学びました」と語る南野拓実選手 「スタメンで出られない『怒り』をプレーに出すことの重要さはこっちで学びました」と語る南野拓実選手

昨年9月に約3年ぶりに日本代表へ復帰すると、森保ジャパンが2018年内に行なったテストマッチ5試合すべてでプレーした南野拓実。出場時間341分は全選手のなかで最長であり、3試合連続を含む4ゴールを挙げてチーム得点王にも輝いた。

所属するオーストリア1部のレッドブル・ザルツブルクでも、今季は8月にリーグ通算100試合出場を果たしたほか、ヨーロッパリーグ第4節(11月8日)のローゼンボリ戦(ノルウェー)でハットトリックを達成するなど、要所で価値あるゴールを決めている。

クラブでも代表でも、これほどゴールを生み出せているのはなぜか? "日本代表の新エース"を現地直撃した。

■苦しい時間のおかげで今がある

南野は森保ジャパンの初陣となった9月のコスタリカ戦(3-0○)でチーム2点目となる代表初ゴールを決めると、続くパナマ戦(3-0○)でも前半終了間際に華麗なターンで相手DFを翻弄(ほんろう)し、最後は左足で冷静に先制弾を流し込んだ。

圧巻だったのは10月16日のウルグアイ戦(4-3○)。序盤に左サイドでボールを持った中島翔哉(ポルティモネンセ)からのパスをペナルティエリア付近で受けると、ワールドクラスのDFとしても知られるディエゴ・ゴディン(アトレティコ・マドリー)のマークを受けながらも巧みな反転トラップで振り切り、右足を一閃(いっせん)して先制点をゲット。

後半にも堂安律(フローニンゲン)が放ったミドルシュートのこぼれ球に素早く反応して押し込み、2ゴールの活躍で南米の強豪に競り勝つ立役者となった。

4-2-3-1の「3」の中央であるトップ下の位置で、端正なマスクには似合わない泥くさいプレーも厭(いと)わずにゴールを目指す姿は、まるで飢えた獣のようにも映った。

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──年内の5試合を4勝1分けで終えた森保ジャパンの活動を振り返り、今どんな思いですか。

南野 自分の得意なプレーでもある、ターンしてボールを受けながらシュートまで持ち込む形だったり、中盤で前向きに縦パスを受ける動きなどが代表でもある程度できたことは自信になりました。

例えばウルグアイのような強豪相手にも、攻撃のコンビネーションを含め、チームで連係するなかで自分の特長を出せたんじゃないかという手応えもあります。もちろん、そのなかでゴールを取って勝利に貢献できたのもよかった。

ただ、あくまで親善試合なので、すごくうれしいかと言われるとそうじゃない(苦笑)。やっぱり公式の大会で何かを成し遂げないと意味がないし、(2019年1月の)アジア杯に向けて、いいアピールができたってくらいじゃないですか。

11月のベネズエラ戦(1-1△)は、相手もしっかり日本を研究してきて(ウルグアイ戦と違い)撃ち合いにならなかったことで、個人的には相手のアンカーが潰(つぶ)しにきたときの対応など、今後の課題になりました。

──森保ジャパンでは、大迫勇也選手(ブレーメン)を頂点に置き、その下に左から中島選手、南野選手、堂安選手と並ぶ攻撃の基本布陣が固まりつつあります。

特にロシアW杯後、同じタイミングで代表に定着した中島選手、堂安選手とは、「新ビッグ3」やそれぞれの頭文字を取った「NMD」と称され、メディアをにぎわせていますが、実際に彼らと一緒にプレーした感想はどうですか。

南野 サコ君(大迫)はめっちゃボールを収めてくれるし、あらためてW杯を戦ってきた選手はたくましいなと感じました。翔哉と律も、縦にどんどん仕掛けてくれて自分としてはすごくやりやすい。

翔哉とは年代別の代表でも一緒にやっていましたし、律とはこの代表で会ったのが初めてですが、ふたりとも上を目指そうとギラギラしている。今後は僕らの世代が代表を引っ張る存在にならないといけないですし、ふたりからいい刺激をもらっています。

──森保ジャパン最多の4得点を挙げ、ヨーロッパリーグではハットトリックも記録しましたが、好調の要因についてはどうとらえていますか。

南野 難しいですね。正直今までやってきた何かを劇的に変えたわけではないので。ひとつ要因を挙げるなら、今はホントに体の調子がいいんです。それに代表でゴールして、チームに帰っても得点を取れたということで、また次の代表戦につながったというか。いい相乗効果が生まれたことは間違いないです。

やっぱりノッてるときって自分が思った所にボールがこぼれてきたりとか、シュートが想像以上にいいコースに行ったりすることはあるんです。3点取ったローゼンボリ戦なんかは、まさにそんな感じでした。

──外から見ていると、ジェスチャーを交えて味方にボールを要求したり、ゴールへの積極性などが以前と比べても出てきたというか、より貪欲になった印象を受けるのですが。

南野 ゴールへの意識は日本にいたときからあったんですが、欧州でやっていることで、さらに高くなったのは確かですね。やっぱりゴールしないと、こっちでは評価されないですし、正直ゴールすると周りの対応が変わりますから(苦笑)。

それに日本人同士なら「ここが得意な場所だから出してほしい」と言えば、すぐにわかってもらえますが、こっちだと感情をむき出しにして喧嘩(けんか)するくらいの気持ちでアピールしないと全然パスが出てこないから、それが代表に戻ったときも少し出ているのかも。

ただ、ザルツブルクでやっているときに比べれば、代表でやるときは監督の指示ひとつにしても、顔を見なくとも何を言ってるかは頭に入ってきますし、すごく楽というかやりやすいです。この感覚、久しぶりやなって感じています。

──特に変わったことはせず、これまでの積み重ねが結果につながっているということ?

南野 そうですね。代表に選ばれていないときも、プレーしていて確実に成長できていることは実感していましたし、選ばれたときには絶対に結果を残してやろうという気持ちで常に取り組んでいたので。まあ苦しい時間のおかげで今があると思っています。

正直、コスタリカ戦やウルグアイ戦で相手のDFと駆け引きし、振り向いてシュートまでいったシーンはザルツブルクでずっと磨いてきたプレーですから。

こっちでも同じようなパターンで何度も決めていましたし、代表では周りの選手もすぐに自分のやりたいことを理解してくれたので、イメージどおりにプレーできたシーンもいくつかありました。ただ、まだ少し結果が出ただけで全然満足していないですし、これを続けていかないと意味がないと思っています。

■3年でステップアップする予定だった──。理想からは遅れている

現在、リーグ5連覇中のザルツブルクは、オーストリアでは敵なしの強さを誇っている。南野は2015年1月に加入し、2015-2016年シーズン以降は4シーズン連続で2桁得点(カップ戦を含め)を記録しているが、決してレギュラーが確約されているわけではない。

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──チーム内の競争が激しいことも成長につながっているのでは?

南野 もちろん、オレだって絶対的なポジションをつかみたい気持ちはありますが、チームにはほかにもいい選手がいますし、代表から戻ってコンディションが悪ければ、またレギュラーを奪い返さないといけないって環境はいいのかもしれません。

特に、昨季なんてヨーロッパリーグの大事な試合はたいていベンチスタートでしたが、短い時間のなかでも危機感を持ってプレーしていましたから。

だいたい、ザルツブルクにいて代表にも呼ばれていなかったら、結果を残さないと日本では報道さえしてもらえないですから(笑)。そういう意味でも、「ここで絶対に結果を残す」という気持ちでずっとやってきたのがよかったのかもしれません。

正直、なんでオレがスタメンじゃないんだって怒りを持っていたこともあったし、そういう気持ちをプレーに出すことの重要さもこっちで学びました。

「プレミアは好きだが、やってみたいのはスペインかドイツ。オファーがあれば、すぐにでも行きたい気持ちがある」と野望を語る 「プレミアは好きだが、やってみたいのはスペインかドイツ。オファーがあれば、すぐにでも行きたい気持ちがある」と野望を語る

──とはいえ、ザルツブルクはあくまでステップアップの場として考えていた部分もあったと思います。

南野 ここに来たときは3年以内に、別のクラブにステップアップするようなイメージだったので、理想からは遅れています。

──ヨーロッパリーグでは開幕5連勝で決勝トーナメント進出を決めました。今冬の移籍の噂も出ていますが、昨季ベスト4までいったことを考えれば、今冬は残留したい気持ちのほうが強い?

南野 いや、行きたいリーグやチームからオファーがあれば、すぐにでも勝負したい気持ちは強いです。まあ、(クラブスタッフがすぐ隣にいるため)ここでは大きな声では言えないですが......。チャンピオンズリーグは出てみたいし、そこを経験しているか、していないかはサッカー選手の格にもつながると思うので。

もちろん、ヨーロッパリーグで決勝トーナメントに入れば、チャンピオンズリーグレベルの試合になることもあるし、そこで結果を出せれば、自然とそういうところでプレーするチャンスも広がってくると思います。プレミアリーグ(イングランド)は好きでよく見ますが、やってみたいのはスペインかドイツですね(苦笑)。

──ザルツブルクは今季国内リーグで優勝すれば、来季はCLにダイレクトで出場できます。

南野 今まで毎年プレーオフで阻まれてきたのに、来季はそうみたいですね(苦笑)。ただ、今はそのことはまったく気にしていません。次のステップに行くために今を100パーセントでやるだけ。アジア杯も日本は優勝を目指せるチームだと思うし、自分もメンバーに入れば、そこに貢献できるようにしっかりプレーするだけです。

──ちなみに、代表でゴールを連発したことで、今まで以上に注目が集まっていますが、何か変わったことはありますか。

南野 いや、正直それはまったく感じてないです。ゴールを祝うメールをしてくる友達が少しはいましたが、もともと友達は少ないんで(笑)。まあ、4年もひっそりとザルツブルクにいましたし、応援してくれる人を少しでも喜ばすことができたらいいですね。

●南野拓実(みなみの・たくみ)
1995年1月16日生まれ、大阪府出身。2013年にセレッソ大阪のトップチーム昇格。2015年にオーストリア1部のレッドブル・ザルツブルクに移籍。16年リオ五輪出場。森保体制では全5試合に出場し、チームトップの4得点