日本人DFの海外移籍について語った宮澤ミシェル 日本人DFの海外移籍について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第83回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、海外クラブに移籍する日本人DFについて。一昔前までは、他のポジションと比べて海外への移籍が少なかった日本人のDFだが、ここにきて海外から求められる選手が増えてきた。その理由は、長谷部誠が体現していると宮澤ミシェルはいう。

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海外に移籍した日本人選手のポジションを見ていると、時代が変わった思いが強くなるよ。これほど日本人のDFが海外クラブで評価されるなんて、一昔前ならありえなかったし、想像できなかったことだよね。

プレミアのサウサンプトンでレギュラーを張る吉田麻也を筆頭に、フランスにはマルセイユの酒井宏樹がいて、今冬から昌子源(前鹿島アントラーズ)もトゥールーズに移籍し、ベルギーでは富安健洋(シント・トロイデン)が腕を磨いている。

オランダには板倉滉(前ベガルタ仙台)がフローニンゲンに入団し、中山雄太(前柏レイソル)もズウォーレに移籍したけど、オランダリーグは昔からステップアップリーグとして定評があるから期待したいね。

バルサやレアル・マドリードで活躍した元ブラジル代表のロナウドも、バルサのスアレスも国外リーグのスタートはオランダリーグだったし、日本人選手も小野伸二、藤田俊哉、小倉隆史、平山相太、本田圭佑、吉田麻也などがプレーした。これからトップへと登りつめようとする選手たちが、しのぎを削るリーグで、大きく成長してもらいたいよ。

そして、日本人DFが海外クラブから求められるようになった理由を体現しているのが、長谷部誠だよね。日本代表ではボランチとして長く活躍したけれど、所属するフランクフルトではリベロとして存在感を発揮している。

リーダーシップがあって、先を読む力が高い。パスもドリブルも1対1も、スペシャルに際立っているわけではないけれど、すべてが上手い。なにより気が利く。外国人選手は体のサイズやフィジカル能力などでは長谷部よりも優れているかもしれないけれど、長谷部のようにチームのために目配り、気配りをしてポジションを変えられないんだよ。

そして、この部分こそが日本人DFに求められているものなんだろうな。昔もいまも日本人選手はサイズ面でも身体能力面でも海外選手と比べたら劣っているけれど、それだけでできるほどサッカーは単純ではないんだ。とりわけDFはコミュニケーションをとりながら、頭を使わないといけないポジションだから、そこに活路を見出せれば、若い日本人DFたちも各クラブでポジションをつかみ取れるはずだよ。

やっぱり若いうちはサッカー選手に限らず、どんどん世界に出ていって見聞を広めた方がいいんだよ。だけど、いまの日本社会は若い子たちが海外に向かわない時代。そのなかにあって、サッカー界は時代に逆行して、世界基準で勝負できる選手になろうとしている。サッカー発信で、日本中の若い人たちが世界に目を向けるようになったらいいよな。

ただ、海外クラブに行けば実力が上がるかと言ったら、そこは各自の意識ひとつ。言葉も文化も違うなかでの生活は煩わしいことの連続だけど、そのなかでどう自分を落とし込んでいくのか。そこが海外でフィットできるかの鍵だよ。

僕の息子はドイツでサッカーをしていた頃、就労ビザをもらうために役所で数日間、働いている人間を観察したそうだよ。言葉が喋れないと発行されないものだけど、人の良さそうなオバさんに狙いを定めてアタックしたら、ビザが取れたんだって。そういう部分からメンタルを含めて鍛えられていくからね。

サッカーの評価基準、食べ物、風習など、なにからなにまで違うなかで、日本とは違うと嘆くくらいなら日本に戻った方がいい。サッカー選手の現役でいられる時間を考えたら、1年間は貴重なものだからね。それでまたJリーグで腕を磨き、チャンスが来たら再び海外に挑戦するのも手だよ。

いずれにしろ、これだけ海外の厳しい環境のなかに身を置く選手たちが増えたのは、日本代表の将来にとっては明るさしかないよ。彼らが高いレベルで日本代表の座を争う日が、早く来てくれるのを待ち望んでいるよ。

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