欧州の冬の移籍市場が閉じた。今季は日本人選手も多く動いたけど、目玉はやはり香川だね。移籍市場が閉まる直前にトルコの強豪ベシクタシュへの期限付き移籍が決定すると、チーム合流3日後のリーグ戦でデビュー。めったに蹴らない直接FKからゴールを奪うなど、いきなり2得点を挙げた。日本代表がアジア杯で残念な結果に終わった後だけに、うれしいニュースだ。
今季、ドルトムントでの香川の出場機会はほぼゼロ。このままの状態が続けば、どんどんさびついてしまう。いつも言っていることだけど、プロの選手は試合に出てなんぼ。香川が新天地を求めたのは当然の判断だ。
ベシクタシュはドルトムントに比べれば、クラブの格もレベルも落ちる。また、香川本人は「スペインに行きたい」と公言していた。でも、移籍は自分の意思だけではどうにもならない部分が多い。最終的にベシクタシュに決まるまで紆余曲折(うよきょくせつ)あったはず。それだけにデビュー戦でのこの結果は価値があるし、本人にとっても弾みがついただろう。
今後も継続的に活躍し、ドルトムントに「お願いだから帰ってきてくれ」と言わせられたら痛快だ。また、個人的にはロシアW杯以降遠ざかっている日本代表にも名乗りを上げてほしい。
森保監督が日本代表を率いるようになってからは南野がずっとトップ下を務めているけど、決して絶対的な存在とはいえない。もし香川が代表に呼ばれれば、南野にも危機感が生まれるし、ほかの選手にとっても刺激になる。だから、次の代表戦(3月のコロンビア戦、ボリビア戦)に向けて、「俺もいるんだぞ」というところをぜひ見せてほしい。
鹿島からフランスのトゥールーズに移籍した昌子もレギュラーの座をつかみ、上々の滑り出しを見せている。彼はなぜアジア杯に招集されなかったのだろう。ロシアW杯、クラブW杯での活躍を見れば、代表に必要な選手であるのは誰でもわかること。
センターバックといえば、アジア杯で20歳の冨安が脚光を浴びたけど、足元の技術やドリブラーへの対応にはまだまだ課題があるし、トータルで見れば昌子のほうが上。フランスのレベルの高さを考えても、当然、次の代表戦に呼ぶべき選手だ。
一方で、どう評価すべきか難しいのが、ポルトガルのポルティモネンセからカタールのアル・ドゥハイルに移籍した中島のケース。日本人史上最高の移籍金(約44億円)といっても、中東を経由しての今後のステップアップはかなり難しい。
半年後にフランスのパリ・サンジェルマン(PSG)に移籍するという噂もあるけど、そんな話は信じようがない。左サイドにネイマールのいるPSGがそこまでして中島を欲しがる理由が見当たらない。そうした状況を踏まえて、中島本人がどういったキャリアプランを描いてカタール移籍を選択したのか、気になるところだ。
そのほかでは、日本代表の伊東(柏からベルギーのゲンク)や、五輪世代の中山(柏からオランダのズヴォレ)、板倉(仙台からオランダのフローニンゲン)など、複数の選手が新たに欧州に渡ったけど、ひとりでも多くの選手が新天地で結果を出し、アジア杯で「選手層の薄さ」という課題を露呈した日本代表に大きな刺激をもたらしてくれることを期待したいね。