レアンドロ・ダミアンとマギーニョは早くも川崎にフィットしていると語るセルジオ越後氏 レアンドロ・ダミアンとマギーニョは早くも川崎にフィットしていると語るセルジオ越後氏

Jリーグの優勝候補2チームが明暗を分けた。リーグ開幕を前に行なわれたゼロックス・スーパー杯で昨季王者・川崎が、天皇杯王者・浦和に1-0で勝利。チームの完成度、仕上がり具合共に、スコア以上の大きな差があった。

川崎は新加入の外国人選手、レアンドロ・ダミアンとマギーニョが早くもフィット。特に決勝ゴールを挙げたダミアンは"当たり"だ。188cmの高さに加えて強さ、足元の技術も兼ね備え、ハードワークを厭(いと)わない。ポストプレーやワンツーなど味方を生かすプレーもできる。小林や(中村)憲剛との連係もよく、浦和のDF陣にとって、常に脅威となっていた。

ダミアンには欧州での実績はほぼない。でも、ロンドン五輪得点王の肩書はダテじゃなかった。さすがインテルナシオナルなどブラジルの名門でプレーしてきただけのことはある。この一戦で周囲との信頼関係も深まったはず。昨季得点王のジョー(名古屋)と同等か、それ以上にゴールを量産しそうな期待感がある。

川崎はチームとしての仕上がりも順調そうだ。浦和を圧倒した前線からの激しいプレッシングは昨季から進化した部分といえるだろう。

課題を挙げるなら、運動量が求められるあのスタイルで夏場をどう乗り切るか。浦和戦でも最後は足が止まっていたけど、あのリズムで90分間プレーし続けるのは難しい。もっと試合運びにメリハリをつける必要がある。

ただし、それは鬼木監督も選手たちもわかっているはず。また、他チームならスタメンをはれる阿部や齋藤がベンチにいるなど、選手層は着実に厚くなっている。ターンオーバーも可能だし、チームとしてたくましくなったように見える。昨季はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグで、1勝も挙げられずに敗退して批判を受けたけど、今季はケガ人さえ出なければ、ACLでも十分に戦えるんじゃないかな。

一方、浦和はまだチームが出来上がっていない。キャンプでほとんど練習試合を組まなかったというから、連係面はこれから向上するだろう。

とはいえ、内容が悪すぎた。シュートはわずか1本で、それも枠に飛ばないのでは話にならない。特に興梠(こうろき)と新加入の杉本のツートップが機能していなかったのが気になる。ふたりの動きが重なったり、一方が孤立したり、お互いの動きを把握できておらず、混乱していた。浦和は昨季までの"興梠頼み"の攻撃を改善するために杉本を獲得したはず。でも、オリヴェイラ監督が彼をどう生かそうとしているのかは見えなかった。

個人的にはふたりの役割分担をもっと明確にすべきだと思う。高さがあってターゲットにしやすい杉本をワントップにして、興梠を少し下げた位置でプレーさせたい。興梠のほうがポストプレーはうまいけど、彼は器用だから2列目からの飛び出しもできるし、何より前を向いてプレーする機会、つまり得点の機会を増やせる。運動量のある武藤(負傷離脱中)と共に杉本に近い位置でプレーさせたほうが、川崎戦で距離が開きすぎていた前線と中盤をリンクさせられる。

併せてトップ下では厳しいマークを受け、いまいち持ち味を発揮できない柏木をボランチに下げることで攻撃にリズムが生まれると思うけど、どうだろう。2季目のオリヴェイラ監督の手腕に注目だ。

★『セルジオ越後の一蹴両断!』は毎週木曜日更新!★