昨年10月のシカゴマラソンで日本記録を更新し、3位となった大迫。東京五輪でメダル獲得を期待されるエースは、初の東京マラソンでどんな走りを見せるのか 昨年10月のシカゴマラソンで日本記録を更新し、3位となった大迫。東京五輪でメダル獲得を期待されるエースは、初の東京マラソンでどんな走りを見せるのか

昨年は設楽悠太(Honda)の日本記録更新と"1億円ゲット"に沸いた東京マラソン。3月3日に行なわれる第13回大会は、過去最多の3万8000人が出場する予定だ。

前々回から高速コースにリニューアルされたこともあり、今年も世界最高峰の選手たちが参戦。史上初の東京マラソン"マルチ優勝者(14年、18年)"であるディクソン・チュンバ(ケニア)ら、2時間4分台が4名、同5分台も2名が出場を予定している。

日本勢では"東京五輪の星"ともいえる大迫 傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)が初登場。5000mの日本記録を保持する大迫は、マラソンを走るたびにタイムを短縮してきた。17年4月のボストンマラソンで2時間10分28秒、同年12月の福岡国際マラソンで2時間7分19秒。そして昨年10月のシカゴマラソンでは、設楽のタイムを21秒上回る2時間5分50秒の日本新記録を叩き出した。

今大会の注目は、「世界のトップランナーに対してどんな走りを見せるか」。大会主催者側も日本人エースにフィットするようなペースメイクをイメージしているようで、第1集団は1km2分57秒~2分58秒ペース(2時間4分28秒~2時間5分10秒相当)で進ませる考えだ。

ペースメーカーは30kmまでの契約になるが、終盤に強い外国勢と競り合っていければおもしろい。シカゴマラソンはペースが不安定だったことを考えると、今大会のペースが安定すれば、大迫の状態次第では日本記録を上回るペースでの上位争いが見られるかもしれない。

昨年12月の福岡国際マラソンでもMGC出場権獲得を狙っていた神野だが、やはり腹痛の症状が出て失速。東京マラソンは正念場のレースになる 昨年12月の福岡国際マラソンでもMGC出場権獲得を狙っていた神野だが、やはり腹痛の症状が出て失速。東京マラソンは正念場のレースになる

ほかに第1集団でレースを進めそうなのは、昨年9月のベルリンマラソンで自己新となる2時間8分16秒で4位に食い込んだ中村匠吾(富士通)、昨年の東京マラソンで2時間8分58秒の自己ベストを出した佐藤悠基(日清食品グループ)。一方の第2集団は1km3分0秒ペースを想定しており、2時間7分~2時間9分台を目指す日本人選手には絶好の流れになる。

東京五輪の選考レースである、今年9月のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場資格を持っていない選手たちは、出場権獲得を視野に入れてのレースになる。日本人1~3位の選手は2時間11分0秒以内で、同4~6位の選手は2時間10分0秒以内で出場権をゲットすることができる(すでに出場権を持っている日本人選手は順位に含まれない)。

また、17年8月1日~19年4月30日までの「国際陸上競技連盟が世界記録を公認する競技会」で2時間8分30秒以内のタイムを出すか、それらの競技会で記録した上位ふたつのタイムの平均が「2時間11分0秒以内」だった場合でも「ワイルドカード」でMGCに出場することが可能だ。

現時点で男子は24名が出場権を獲得しているが、ニューイヤー駅伝を3連覇している旭化成の選手はひとりもいない。2月3日の別府大分毎日マラソンでは、大六野秀畝(だいろくの・しゅうほ)、市田兄弟(孝・宏)という駅伝Vメンバーの主力が出場したものの不発に終わっている。

そんな旭化成の悲願をかけ、東京マラソンには村山謙太が挑戦する。1万m日本記録保持者の紘太を弟に持つ村山は、スピードと積極性が持ち味。16年の大会ではトップ集団に食らいついていったが、今回は第2集団でレースを進めていくだろう。

村山は「ワイルドカード」の対象レースである、昨年7月のゴールドコーストマラソンで2時間9分50秒の自己ベストを出しているため、今大会を2時間12分10秒で走ればMGC出場権を得られる。上位も狙っているだろうが、確実なレース運びでそのタイムをクリアしたいところだ。

また、マラソンで苦戦が続いている神野大地(セルソース)にも同様にチャンスがある。前回の東京マラソンで2時間10分18秒をマークしている神野は、2時間11分42秒が出場権を得るためのラインになる。これまでの苦戦の原因になっている腹痛が気になるとこだが、慎重なレース運びで状況を打開したい。

さらに、東京五輪が近づくにつれ、選手たちのシューズにも熱い視線が注がれている。世界のメジャーレースを席巻しているナイキの"厚底シューズ(ズーム ヴェイパーフライ 4%フライニットなど)"は、ベケレ、チュンバ、大迫、村山らが履いている。

ミズノの契約選手である佐藤は、別注シューズが間に合わなかったこともあり、昨年9月のベルリンにはナイキの厚底シューズで出走した。コンセプトは少し異なるものの、佐藤も厚底タイプのシューズ製作を依頼しており、東京マラソンは新シューズでの走りに注目が集まる。

一方、"厚底"と対極の"薄底"で勝負するのがニューバランスだ。「現代の名工」「黄綬褒章」を受賞しているシューズ職人・三村仁司氏が、"山の神"と呼ばれた今井正人(トヨタ自動車九州)と神野の別注シューズを手がけており、巻き返しに気合いが入る。

ほかの有力選手は、木滑 良(MHPS)がミズノ、大塚祥平(九電工)と下田裕太(GMOアスリーツ)がアディダス。一色恭志(GMOアスリーツ)は、東京マラソンのメジャーパートナーを務めているアシックスを履く。そんな、激化するシューズメーカー争いからも目が離せない。