ジェフ千葉と柏レイソルについて語った宮澤ミシェル ジェフ千葉と柏レイソルについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第86回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、千葉県にホームタウンを置くジェフ千葉と柏レイソルについて。J2に降格してから10年目のジェフ千葉と今季よりJ2を戦う柏レイソルだが、両チームともJ1復帰への意欲が強く感じられると宮澤ミシェルはいう。

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今年もようやくJリーグが始まったよ。選手にとってオフシーズンは短く感じるだろうけど、我々にとっては待ちに待った開幕だからね。開幕戦から白熱した試合が多くて、今シーズンも楽しくなりそうだよ。

ただ、今季のJ1には千葉県にホームタウンを置くクラブがいなくて、千葉県民としては残念。開幕直前の『第24回ちばぎんカップ』で、柏レイソルとジェフユナイテッド市原千葉のプレシーズンマッチ(2対2、PK5-6でジェフ勝利)を観たけど、両チームともに来季はJ1を戦うっていう意欲を強く感じられたよ。

レイソルは今季、J2降格にともなって主力だった伊東純也(→ゲンク)、中山雄太(→ズヴォレ)、中川寛斗(→湘南)、キム・ボギュン(→蔚山現代)などが移籍したけれど、J2を戦い抜けるメンバーが揃っている。なにより大黒柱のクリスティアーノが残留したのが強みだね。
 
課題は前線3人と中盤との距離感。3人で構成する中盤が、DFラインに引っ張られすぎると、CFのクリスティアーノ、左の瀬川祐輔、右のガブリエルと連動できなくなる。そうなると攻撃が個々の能力頼みの単発になる可能性が高いんだ。

開幕戦はいい距離感を保って、クリスティアーノが2ゴールを決めて勝利できた。だけど、中盤の3選手はハードワークが不可欠だから、シーズンが進むなかで疲労が溜まったり、累積警告で出場停止になったりしたときにどうなるか。ヒシャルジソン、大谷秀和、手塚康平を軸に、小泉慶、江坂任、田中陸などを使いながら、上手に回していければ長いシーズンを乗り切れるんじゃないかな。

中山と鈴木、キム・ボギュンの抜けたCBは、染谷悠太、鎌田次郎、古賀太陽で回していくだろうね。高さで強さのある染谷が中心だろうけど、柏のユース出身の古賀がおもしろい存在だね。去年はアビスパで経験を積んで戻ってきたけれど、強さがあってアグレッシブな守備をするんだ。まだ20歳、ここからの成長が楽しみだよ。

今季からチームを率いるネルシーニョ監督はリスクをあまり取らず、バランスを重視するタイプだから、長いシーズンの先を見据えて着実に勝ち点を積み上げる気がするよ。しかも、コーチには昨季はアビスパ福岡を率いた井原(正巳)がいる。ネルシーニョもJ2を戦った経験はあるけれど、昨年にJ2を戦った井原の存在は大きいな意味を持つんじゃないかな。

もうひとつのジェフはJ2に降格してから今季でもう10年目だよ。J2に落ちた数年は古巣OBとして期待していたけど、あまりの体たらくにいつしかシラケちゃった。今季も開幕2戦で勝ち星なし......。だけど、今年はやってくれると密かに思っているんだ。

ポイントは攻撃の核だった生粋のドリブラー・町田也真人(→松本山雅)の抜けた中盤。セントラルMFに熊谷アンドリューと矢田旭、右MFに堀米勇輝、左MFに茶島雄介が入る中盤の構成が機能するのか。佐藤勇人、小島秀仁、為田大貴、山本真希、工藤浩平といった選手たちを交えて、うまく動かしていければ長いシーズンで安定して戦えるんじゃないかな。
 
FWは計算できるからね。アラン・ピニェイロは昨季までの東京ヴェルディ4年間で29得点。船山貴之も千葉に加入してからの過去3年で31得点。ふたりに加えて、今季加入した元ブラジル代表のFWクレーベも188cmとデカくてゴール前での迫力がある。ポストプレーで存在感を見せられれば、攻撃陣のバリエーションが充実するよ。

18年ぶりに復帰した佐藤寿人は、FWの序列の中では4番目のオプションだけど、点の取り方を知っているから、大事な一戦では存在感を発揮してくれるはずだよ。

昨季までのジェフで最大のネックだった守備陣は、ファン・エスナイデル監督が就任3年目でようやくまともなDFラインを敷くようになったよ。今年のDFラインの高さを見ると、無謀な高さをDFラインに求めて失点を重ねた1年目が何だったのかと思っちゃうけどな。

現役時代の経歴はサイドアタッカーとしてレアル・マドリードやユベントスなどに所属していたエスナイデル監督だけど、監督としては勝負の年だってことを十分に理解しているってことだよ。GKとDFラインの距離感にだけ気をつけて守備を安定させることができれば、攻撃力はあるだけに、昨年の14位のような成績はないはず。

横浜FC、町田ゼルビア、大宮アルディージャ、東京ヴェルディ、アビスパ福岡、レノファ山口など、力のあるチームが揃っている。そのなかで、J1復帰に向けて千葉県勢の2チームが、どんな戦いをしていくのか、しっかり見届けていこうと思っているよ。

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