先日行われたクラシコについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第88回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、先日行なわれたラ・リーガのクラシコについて。宮澤ミシェルが現地・スペインで観た伝統の一戦は、思いもしない結果だったという。

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まさかの結果だったね。現地スペインで2月27日のコパ・デル・レイ準決勝の第2戦と、3月3日のサンティアゴ・ベルナベウであったラ・リーガのクラシコを観てきたけど、レアル・マドリードが2連敗するとは思いもしなかったよ。

日本を発つ前はサンティアゴ・ベルナベウでバルセロナが勝つところを見たいと思っていたし、実際にそうなったけど、今回はレアルが悪すぎたね。
 
クラシコでのレアルは、キックオフ直後はよかったんだ。勝利すればリーグ制覇に一縷(いちる)の望みをつなげることができたからね。だけど、バルサのラキティッチに先制点を奪われた途端に、ピッチにもベンチにもスタンドのサポーターにも諦めムードが漂っていた。
 
やっぱり、クラシコ直前にあったコパで、バルサに0対3で敗れたショックは想像以上に大きかったってことだね。翌週にはチャンピオンズリーグでアヤックスに1対4で負けて、ラウンド16で敗退。わずか1週間でリーグ戦とカップ戦の優勝、チャンピオンズリーグ4連覇の夢が消えてしまった。
 
レアルの敗因はサンティアゴ・ソラーリ監督が、メンバーを固定しすぎた結果だよね。とくにヴィニシウス・ジュニオールに固執しすぎた気がするな。圧倒的な彼のスピードが、低迷していたチームに躍動感をもたらし、劇的な復調に導いたのは間違いない。だけど、彼はまだ18歳。相手に対応の仕方を研究されると手詰まりになってしまったね。

バルサは右サイドにセルジ・ロベルトを置いて、コパではその後ろにネルソン・セメドを入れる対策をとって、ヴィニシウスを孤立させる守り方をしたんだ。だから、彼がクロスを上げてもピケが余裕を持って全部を弾き返せちゃった。ヴィニシウスがシュートが上手ければ状況は違っただろうけど、そこが彼にとって来シーズン以降の課題だよね。

結局のところ、レアルは個の集合体だけど、バルサはチームとして戦っている差が出たよね。バルサでいまいち噛み合ってなかったデンベレが、コパでは大活躍。味方を使ったり、味方に使われたり、味方を生かすために動いたりと、チームの中で機能していた。デンベレほどの個の能力がすごい選手がそういう戦い方をする。バルサのチーム力をまざまざと見せつけられたよ。

レアルはコパでもクラシコでもコンビネーションがなかったね。攻撃でも守備でも味方のサポートがないから個人で対応しなければならなくて、ミスをすると目立つし、リズムもテンポも作り出せなかった。クラシコでのベイルなんてやる気が感じられなくて、実況解説のマイクがオフのところでボロクソ言っちゃったくらい酷かったね。

今シーズンのレアルはロペテギ体制で陥った緊急事態をソラーリ監督のもとで乗り切ってきたけど、付け焼き刃のメッキが剥がれちゃったよね。アヤックスに敗れた後はソラーリの首を切って、監督には昨季までCL3連覇を成し遂げたジネディーヌ・ジダンが電撃復帰。試合結果もだけど、その顛末でもまさかの展開が待っていたね。

タイトルという目標を失ったチームを、シーズン終了までの3ヶ月でジダンがどう立て直すのかは興味深い。ソラーリ体制で干されていたイスコやマルセロは目の色を変えているだろうから、ジダンに与えられるチャンスでどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだね。

そして、これはすでに来季のクラシコへの伏線が始まっているってこと。ここからのドラマをしっかりチェックしていくことが、来季以降のクラシコの伏線になって、クラシコというドラマがもっと楽しめるものになっていくんだ。

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