W杯は世界中で無料で見られる大会であってほしいと語るセルジオ越後氏

理由はシンプル。国際サッカー連盟(FIFA)がもっともっとたくさんお金を集めたいんだ。

先日、FIFAの理事会が開催され、2022年カタールW杯の出場チームを32から48に拡大する案が「実現可能」と認められた。カタールをメイン開催国としつつ、一部の試合を近隣国で開催することが条件。共催候補にはオマーン、クウェートなどがリストアップされているとのこと。6月のFIFA総会で正式決定される見込みだ。

アメリカ、カナダ、メキシコが共催する26年W杯に関しては、48チームでの実施が以前から決まっていた。でも、このタイミングでカタールW杯も増チームになるとは驚いた。中国、アメリカ、中東勢など、お金はあってもサッカーのレベルが高くなく、W杯になかなか出られない国にもチャンスを与えて放映権料、スポンサー収入を増やす。目的はそれしかない。

48チームになれば、大会の質は下がると思う。グループリーグを3チームずつ16組に分けるみたいだけど、出場国の実力が今まで以上にばらつき、大味な試合が増える。それを防ぐには、例えば1次リーグと2次リーグを設けて、FIFAランキング上位のシード国は2次リーグから登場させるとか、何か工夫をしないと、大会の盛り上がりに影響が出るかもしれない。

また、テレビの放映権料も莫大(ばくだい)な金額になるだろう。今は有料のネット中継も充実していて便利だけど、各国リーグの中継はともかく、サッカーの普及という意味では、W杯は世界中で無料で見られる大会であってほしい。

個人的には、32チーム(1998年フランスW杯から18年ロシアW杯まで)、もしくはもっと凝縮された24チーム(82年スペインW杯から94年アメリアW杯まで)が適正だと思う。グループリーグ初戦から強豪国がしびれる戦いを繰り広げる。それが4年に一度の大舞台、W杯の魅力だった。時代の流れといえばそれまでなのかもしれないけど、少し寂しさを感じるね。

この出場チーム拡大は日本にどんな影響を及ぼすか。48チームになると、アジアの出場枠はこれまでの4.5から8.5に増えるといわれている。ただし、カタール、オマーン、クウェートの3ヵ国が開催国として出場するなら、アジア枠は3つ減ることになる。少なくとも22年のW杯に関して、予選の難しさはこれまでとほぼ変わらない。

一方、本大会で勝つことは今まで以上に難しくなるんじゃないかな。欧州や南米の出場枠が増えれば、単純に日本よりも格上のチームが増えるからだ。昨年のロシアW杯では強豪のイタリアやオランダ、当時の南米王者チリが本大会に出られなかったけど、そうした予選での波乱も少なくなるだろう。

昨年から欧州でネーションズリーグが始まるなど、親善試合のマッチメイクは年々難しくなっている。それでも日本がW杯で過去最高の成績(ベスト16以上)を目指すのであれば、今までの国内での興行優先の親善試合メインのやり方では限界がある。なんとかスケジュールを調整して、スポンサーを説得して、強い相手を求めてどんどん外に出ていくしかない。

土下座してでも次回のコパ・アメリカ(南米選手権)にも参加させてもらう。お金はかかるけど、覚悟を決めてアウェーに出向く。それができなければ、日本はW杯に出場するだけで満足しなければいけない国になってしまうだろう。

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