香川真司について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第90回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、香川真司について。日本代表に戻ってきた香川真司を見て、実力は出し切れていなかったが、次への期待を感じさせるものだったと宮澤ミシェルは言う。

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香川真司が日本代表に戻ってきたね。昨年のW杯ロシア大会以来となった背番号10のユニフォーム姿を見たら、『10』はやっぱり香川の番号という感じがしたよ。

ただ、プレーに関して言えば、香川の力はあんなものじゃないからね。コロンビア戦は途中出場から、ボリビア戦は先発出場して、乾貴士とのコンビネーションから相手を崩そうというアイデアは見えたけど、まわりの他の味方がそこについていけてなかった。

森保一監督のもとでの初招集だから連係が十分ではないのは仕方ないし、ほかの味方との連動性も高まったら、どんな攻撃を組み立ててくれるのかと次を期待したくなるものだったよ。

香川が中島翔哉や堂安律がどう絡むのかもっと見たいし、それこそポジションのかぶる南野拓実ともコロンビア戦では10分間ほど一緒にプレーしたけれど、組み合わせの可能性は無限にある。日本代表が香川という大きな武器を上手く取り込めるようになっていくといいよな。

やっぱり選手というのは普段から試合に出てナンボ。香川は今冬にドイツのドルトムントからトルコリーグのベジクタシュに移籍して試合に出るようになった。移籍直後にいきなり2ゴールを決めて、チーム内でのポジションを確立できたのも大きかったね。

ベジクタシュからの香川への期待値は相当に高かったから、普通ならプレッシャーを感じて本領発揮できないケースもある。だけど、香川は試合出場に飢えていたから、試合に出られる喜びが上回ったんだろうな。

しかも、もっとも得意にするトップ下のポジションで起用されて、香川にしたら意気に感じないわけがない。ベジクタシュでは2月下旬からはスタメンで起用されるようになって、3月11日のコンヤスポル戦ではアディショナルタイムに決勝ゴールも決めた。ここから5月下旬のリーグ最終戦までの間に、評価をもっともっと高めてもらいたいな。

トルコリーグは日本での馴染みは薄いけど、リーグ優勝チームがチャンピオンズリーグのグループステージから出場できるし、リーグ2位チームもCL予選3回戦から出場できる

こともあって、ヨーロッパで名の通った選手は多いんだよね。それこそ、2002年のW杯日韓大会で日本代表が敗れたのはトルコだったしな。

ベジクタシュは3月末の時点でリーグ3位。首位のイスタンブールとの勝ち点差は11あって、2位のガラタサライとは勝ち点5差だから、来季のチャンピオンズリーグに出られるかは微妙なラインにいる。

香川とベジクタシュの契約内容がわからないけれど、来季のチャンピオンズリーグに出場できれば残留する可能性はあるけど、それがないなら再び移籍する道を模索するんじゃないかな。

彼の本心はきっとスペインリーグでのプレーを望んでいると思うんだ。ただ、それは厳しい道のりでもある。ラ・リーガにはトップ下を置くシステムを採るチームが少ないからね。でも、見方を変えればトップ下のポジションの有無にかかわらず、結局のところチーム内でのポジション争いに勝たないことには試合には使ってもらえない。

だから、香川にはまずは希望する移籍があるのなら、そこに向けて、まだまだ第一線でやれる力があることを証明してもらいたいね。それにうってつけの大会が6月にあるんだから。日本代表が20年ぶりに出場するコパ・アメリカでは、香川がスペインのクラブのお眼鏡にかなうようなプレーを攻撃でも守備でも見せてくれることを期待しているんだ。香川にはもう一度、世界のトップレベルで光り輝いてほしいからね。

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