原監督はDAZNのアンバサダーに就任。DAZNは巨人を「宣伝媒体」としても活用する

プロ野球界のある"異変"が、放送関係者の間で話題になっている。スポーツ中継ネット配信大手のDAZN(ダゾーン)によるプロ野球中継のラインナップに、今季から巨人の主催試合が加わったことだ。

民放キー局関係者が言う。

「いまさら言うまでもなく、巨人は読売グループの一員。これまでその中継は、系列の日本テレビがBSやCSでの放送も含め、ほぼ一手に担ってきました。DAZNが日本のプロ野球中継に参入した2016年当時からずっと交渉していたようですが、本当に実現するとは驚きです」

17年にJリーグの10年間の独占中継権を2100億円で買い、"黒船"と呼ばれたDAZN。プロ野球中継でも、昨季は巨人以外の11球団の主催試合を(ごく一部を除いて)中継していたが、ついに"本丸"に手をかけたわけだ。

「やはりプロ野球界において巨人はフラッグシップ的な存在。新たな有料会員の取り込みが期待できるのみならず、業界内外への訴求力という点でも、ブランドの威光は計り知れません」(キー局関係者)

しかも、DAZNは単に中継権を買っただけでなく、読売グループと「包括的な提携契約」を締結。原辰徳監督はDAZNのアンバサダーに就任した。その経緯について、某ネット企業関係者が明かす。

「契約締結は3月でしたが、実は読売サイドはギリギリまで渋っていたと聞きます。しかし、年間20億円にも上るという中継権料に加え、DAZNが巨人のオフィシャルスポンサーになるなど多岐にわたる提携を持ちかけ、最終的に読売が応じたようです」

ちなみに、DAZNでの中継がスタートした今季も、従来どおりCS放送『G+(ジータス)』など日本テレビ関連の放送は続く。

「DAZNは映像のみならず、実況や解説などの音声も含めた中継全体を丸ごと買って放送します。このスキームなら、日本テレビの放送を保護した上で利益が出る。DAZN側としても、独自の実況、解説をつける必要がなく、制作費を抑えられる利点があります」(前出・キー局関係者)

ただ、この異例の大型契約には波紋もあった。

「20億円という中継権料は、ネット配信としては異例の高さ。他球団も一律ではありませんが、高くても10億円には届かず、多くは5億円前後という話もある。今季はDAZNの中継から広島とヤクルトが外れたのですが、巨人との金額差がその一因だったとも聞きます」(キー局関係者)

メジャーリーグではコミッショナーが中継権を一括管理し、各球団に収益を分配している。日本のプロ野球もそれが理想像だといわれているが、巨人のDAZN参戦はその第一歩となるのだろうか? 

「現状、日本では各球団が個別で中継権を売買しており、値段も諸条件も多種多様。それを取りまとめて一括管理に持っていくハードルはかなり高いでしょう。とはいえ、これまで読売グループ内での中継にこだわり、最も腰が重かった巨人が動いたことは意味深です」(キー局関係者)

球場のボールパーク化など、改革が進むプロ野球界。中継にも変革が訪れるか?