ビジャは基本に忠実にプレーしていると語るセルジオ越後氏

スペイン代表の歴代最多得点記録(59点)を持ち、優勝したEURO(欧州選手権)2008と10年南アフリカW杯では、いずれも得点王。その実績はダテじゃなかったね。

"バルセロナ化"を掲げる神戸に今季から加入したビジャが、さっそく実力を発揮している。左ウイングで起用された開幕戦は本人もチームもスムーズにプレーできていなかった。でも、ワントップで起用されるようになった2節目以降は、チームの攻撃のバリエーションが増え、ビジャ自身もゴールを重ねている(5節終了時点で3得点)。

ビジャは身長174cmとストライカーとしては小柄だ。空中戦は強くない。また、爆発的なスピードがあるわけでもなければ、運動量もそれほど多いわけではない。37歳という年齢による衰えもあるはずだ。その彼がなぜ今もゴールを奪えるのか。同僚のイニエスタ、ポドルスキのサポートがあることを抜きにしても、彼のプレーには日本人のFWが学ぶべきことが実に多い。

ボールコントロールが巧みで、ダイレクトシュートを打てば、高い確率で枠内に飛ぶ。そうした技術の高さは大前提。それ以上に僕が注目したいのは、ストライカーの仕事、つまり、点を取ることに徹していることだ。

常にゴールエリアの幅の中にポジションを取り、相手に厳しくマークされてもサイドに流れたり、下がってポストプレーをしたりすることは少ない。味方からいいパスが出てこなくても焦らずに我慢して、ゴールに近い、シュートを決めやすい位置でチャンスをうかがっている。忘れがちだけど、これはストライカーの基本。彼はその基本に忠実にプレーしているんだ。

確かに、現代サッカーではFWも守備の仕事を求められることが多い。それは間違いない。相手との力関係を考えて、FWが前線でのプレスはもちろん、自陣深くまで戻って守ることも珍しくない。

でも、守備の役割を多く求めるあまり、長い距離を走り、いざチャンスがやって来たときに、ガス欠でキレのある動きができない、シュートを外してしまう。日本にはそういうFWが多すぎるように思う。大事なのは試合中の総走行距離ではなく、メリハリのある効率的な動き方だ。

その点、ビジャはやみくもに走り回らない。自分の仕事は点を取ることと割り切って、常に相手の最終ラインの裏を狙い、一瞬の動きでマークを外そうと駆け引きを続けている。オフサイドを何度も取られるのは、ギリギリの勝負を仕掛けている証拠。相手DFからすれば、一番いやらしい相手だ。日本人選手でいえば、かつて日本代表で活躍した大黒(現J2栃木)が似たタイプといえるね。

ワントップというと、日本ではどうしてもポストプレーを求めがち。そこにボールを1回当てて、押し上げるように攻める。それがパターン化されている。だから、今の日本代表でも大迫がいなくなると、途端に攻め手が少なくなる。でも、体格的に大きくなく、ポストプレーが持ち味とはいえないビジャは、ワントップでも十分に機能している。そして、彼の武器のひとつである瞬間的な動きの速さは、多くの日本の選手が備えている特長でもある。

その意味でビジャのプレーはすべての日本人FWにとってお手本になる。読者の皆さんもぜひそうした部分に注目してほしい。

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