ロッテという球団にとっては、実に54年ぶりの高卒新人の開幕スタメン。半世紀もの空白を埋めたのは、藤原恭大だった。

大阪桐蔭高校(大阪)で根尾 昂(中日)らと共に甲子園春夏連覇を経験。昨秋のドラフト会議では3球団から重複1位指名を受けた大物である。あるベテランスカウトはプロ入り前の段階から「即戦力に近い。すぐに1軍キャンプで順応できる」と語っていたが、その言葉どおり春季キャンプから順調に調整をこなし、開幕スタメンを勝ち取った。

ロッテの外野陣がちょうど世代交代を迎えていた絶好機。藤原には50m走5秒7の快足に、外野から低く鋭く伸びていくスローイングがある。打撃面で多少プロの壁に当たったとしても、走守で戦力になっているうちに順応できるはず......。そんな淡い期待もあったが、やはりプロは甘い世界ではなかった。わずか6試合の出場で1割5厘と低打率に終わり、藤原は1軍登録を抹消された。

それにより、昨秋のドラフト会議で3球団以上から重複1位指名された高卒ルーキー3人は、全員2軍ということになった。根尾は故障で出遅れ、ファームでも低打率に苦しんでいる。また、報徳学園高校(兵庫)から広島入りした小園海斗は、オープン戦で結果を残して1軍スタートとなるも、昨季ゴールデングラブ賞を受賞したレギュラー遊撃手・田中広輔の牙城を崩せず。巨人との開幕3連戦終了を待たずに2軍落ちした。

とはいえ、大器にもじっくり実力を養う時間は必要だ。藤原も高校時代から「当てにいかずに強く振り切れるようになりたい」と高い意識を持って取り組んできた選手だけに、スケールの大きな外野手に育つ可能性は高い。

今季はそのほかにも、野手の新人が春先から目立っている。阪神は開幕戦の1、2番を"社会人出身ルーキー"に託した。新人ふたりがスタメンに名を連ねたのは、球団にとって47年ぶりのことだった。

1番の木浪聖也は社会人の名門・Honda出身の内野手。オープン戦でチーム最多の22安打と結果を残し、北條史也、鳥谷敬らとの競争を制して開幕遊撃手の座を勝ち取った。

ところが、開幕後に打撃不振に苦しみ、無安打が続いて早々にスタメン落ち。Hondaのチーム関係者が「派手さはないけど、気づいたら戦力になっている底力がある」と評したしぶとさを見せられるか。プロとして最初の正念場を迎えている。

一方、2番の近本光司はドラフト1位の力を見せ、オープン戦では6盗塁をマーク。小柄ながらパンチ力のある打撃も評価されており、センターに抜擢(ばってき)された。

近本は、大阪ガス時代の昨夏、都市対抗野球大会で橋戸賞(MVP)を受賞した実力者だ。開幕直後から打撃面で苦労しているものの、順応性は高い。阪神特有の「関西メディアの過熱ぶり」と「熱狂的なファンの圧」に負けなければ、新人王争いの中心になるはずだ。

あまり騒がれていないものの、オリックスのドラフト2位ルーキー・頓宮裕真(とんぐう・ゆうま)の足跡もなかなか劇的だ。

亜細亜大時代は捕手としてプレーしており、野手として出場する際は一塁手だった。それが今やオリックスの三塁を守り、5番打者として中軸を任されている。

大学日本代表の4番打者で、角度のある打球は各球団のスカウトからも「本物のスラッガー」と評価が高かった。とはいえ、プロで初めて経験する三塁守備は「素人」に近い。入寮時にパンチパーマをかけてきたことが話題になったものの、本格的な脚光を浴びるのはまだ先になるとみられていた。

ところがオープン戦が始まると、広島のエース・大瀬良大地から本塁打を放つなど強烈にアピール。慣れない三塁守備では6失策と苦しんだが、西村徳文新監督から「ミスはしていい」と励まされ、経験を積んでいる。

オリックスは開幕から貧打に喘(あえ)ぎ6戦未勝利と苦しんだものの、7戦目には頓宮の決勝打でシーズン初勝利を挙げた。年間通して"頓宮砲"の才能が開花すれば、オリックスの未来は明るい。

投手のルーキーを見渡すと、上茶谷大河(かみちゃたに・たいが/DeNA)と甲斐野 央(かいの・ひろし/ソフトバンク)の、東洋大出身のドラフト1位コンビが元気だ。

上茶谷は「即戦力」の評判どおり開幕ローテーションに入ると、4月2日のヤクルト戦で初登板ながら7回1失点の好投。リリーフが打ち込まれて初勝利はならなかったが、実力を十分に見せつけた。

そんな上茶谷も、大学でブレイクしたのは4年春のリーグ戦と遅咲きだった。昨年の4月上旬にはドラフト戦線に名前も挙がらなかった男が、わずか1年後にはプロの第一線で活躍する。なんともロマンのある話だ。

甲斐野は大学時代から160キロに迫る快速球で注目され、プロでもリリーフとして開幕1軍入り。オープン戦では7試合の登板で防御率8.53と結果を残せなかったが、シーズン開幕後に本領を発揮した。開幕戦で好リリーフを見せ、11年ぶりの新人投手による開幕白星を手にすると、4月8日現在で1勝3ホールド、無失点と大活躍。4イニングを投げて9奪三振と驚異の"奪三振ラッシュ"を見せている。

ここまでに名前を挙げられなかった出遅れているルーキーの中にも、開幕直前に肺炎を患い離脱した松本 航(西武)ら、楽しみな即戦力タイプがまだまだいる。また、藤原、根尾、小園のような若き俊英が急成長して1軍を席巻する可能性も十分にある。

彼らのプロ野球人生は始まったばかり。そのイキのいいプレーで球界に新風を吹き込んでほしい。