久保を今の段階で必要以上に持ち上げすぎるのは危険だと語るセルジオ越後氏

Jリーグにとって明るい話題だ。

17歳の久保建英(くぼ・たけふさ/FC東京)が今季、進化を遂げている。昨季はFC東京で出場機会を得られず、8月から期限付きで移籍した横浜Fマでもプレー時間は少なかった。ところが、FC東京に復帰した今季は開幕戦からスタメン出場を果たすと、上位争いをするチームにあってレギュラーの座を確保。印象的なプレーを続けている。

では、いったい久保の何が変わったのか。

すでに多くの人が指摘しているように、今季の久保はフィジカル面の進化が目覚ましい。体つきが明らかにたくましくなり、以前のように簡単に倒れなくなった。試合に出られない状況でも、弱点を克服しようと努力を続けてきたのだろう。そして、当たり負けしなくなったことで、ドリブルのうまさ、キックの精度、視野の広さなど、もともと持っている技術をより生かせるようになった。

また、精神的な部分での上積みも見逃せない。今は試合に出るたびに自信をつけているはず。ミドルシュートやドリブルからの仕掛けなど積極的なプレー姿勢が目につく。カウンターを狙うチームの戦い方ともマッチし、まだエースとまでは言えないものの、攻撃の切り札的な存在になりつつある。

最近は僕の周りでも「久保君がスゴいらしいね」という声をよく聞くし、集客面でも大きく貢献しているようだ。

ただし、今の段階で必要以上に持ち上げすぎるのは危険だ。スポーツニュースではいいプレーだけを切り取るから錯覚しやすいけど、いまだノーゴール(第6節終了時点)で、"消えている"時間帯もあり、途中交代となることも多い。

また、ベストメンバーを招集できそうにないコパ・アメリカ(南米選手権、ブラジル)に向け、A代表に招集するべきという声もあるけど、さすがにそれは時期尚早。もう少し静かに見守ってあげたいね。

当面の目標はJリーグで試合に出続け、5月開幕のU-20W杯(ポーランド)でしっかり結果を残すこと。それができてはじめて次のステップである五輪代表(U-22代表)でのレギュラー取りが見えてくる。焦らず、ひとつずつクリアしていけばいいんだ。それが最終的にA代表につながるのだから。

五輪代表の2列目には、すでにA代表でも活躍している堂安(フローニンゲン)をはじめ、今季横浜Fマで好調な三好、さらにU-20代表の安部(鹿島)らライバルは多い。オーバーエイジ枠も加わるかもしれない。特に、同じ左利きの堂安とはポジションがかぶる。レギュラーの座を奪うのは簡単なことではない。彼らを超えるためにも、U-20W杯は重要な大会になる。

また、今後はJリーグの対戦相手も"久保対策"を練ってくる。ボールを持ったら2人、3人と激しくプレッシャーをかけ、時にはファウル覚悟でつぶしにくるはず。そのときにどんなプレーを見せられるか。

個人的には、彼の技術をより生かすなら、得意ではない守備の役割をあまり求めずに、もっと自由にやらせてもいいと思う。

いずれにしても、試合に出ることで選手は伸びる。人気のある彼がこのまま成長して東京五輪で活躍すれば、日本サッカー全体が盛り上がる。過剰な期待に惑わされず、一歩ずつ確実に階段を上っていってほしい。

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