"ツヨカワ女王"の異名を取り、日本の格闘技界を代表するファイターに上り詰めたRENA。しかし昨年大晦日のRIZINでは、プロ10年以上のキャリアで初の減量失敗による欠場で、ファンを失望させてしまった。
4月21日(日)、横浜アリーナで行なわれる「RIZIN.15」で、大晦日に対戦するはずだったサマンサ・ジャン=フランソワ(フランス)と仕切り直しの一番に臨む。失意からどのように復調したのか? 再起戦直前のRENAを直撃!
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――試合まであと数日ですが、今の心境は?
RENA 大晦日の試合は、7月の2連戦からホルモンバランスが崩れ始めた影響で減量が思うようにいかず、残り300グラムのところで倒れてしまって。まさか自分がああいうことをしてしまうなんて思ってもいなかったのでショックでした。とにかく、迷惑をかけた方々やファンの皆さまに申し訳ない思いでいっぱいでした。ただ、いつまでも落ち込んでいても何も始まらないし、私の中では時間が止まったままなので、針を動かさなきゃと思っていました。
――時計の針を動かしたい、と。再起を決めた一番の理由は?
RENA すごく自分自身が許せなかったこと、まずはそれです。今まで自分なりの結果は残してきた自負がありますし、一瞬、引退という文字も頭をよぎりましたが、ちゃんと自分と向き合った瞬間にそれは消えていました。そして待ってくれているファンの方々のためにも、いつ試合が組まれてもいいようにと気持ちをすぐに切り替えられたのが大きいと思います。
実際に、知り合いに紹介いただいた病院の女医さんに相談して体調を正常に整えながら、試合に向けた練習は始めていました。それに元号も(自分の名前に似ている)令和に変わりますから、平成の失敗は平成のうちに片づけたい。このタイミングでオファーをいただいて時計の針を動かせるのはすごくありがたいと思っています。
――改めて聞きますが、なぜ大晦日はああいう結果になってしまったんですか?
RENA 年齢的に今年28歳になるんですけど、シュートボクシングのような立ち技格闘技とはまた違う筋肉がつくMMA(総合格闘技)の練習で体も大きくなることと、これまでの減量も決して楽にできていたわけではなかったので、ひとつの体調の崩れがきっかけで限界を迎えてしまったんだと思います。今まで50戦以上やってきて、イケるイケると思っていたのが前回はイケなかった。自己管理の甘さです。
――試合が中止になった大晦日は、どう過ごしていたんですか?
RENA RIZIN関係者や対戦相手のサマンサ選手に謝罪をするために会場には行かせていただいたんですけど、挨拶後は帰宅して家で休ませていただきました。RIZINはテレビで見ていましたね。
――大きな話題になった、フロイド・メイウェザー×那須川天心戦はどう見ていましたか?
RENA やっぱり体重差が大きかったのと、(メイウェザーのパンチは)そんなにガッチリ当たっていなくてもあそこまで倒れるというのは......すごいと思いましたね。終わってみれば、(天心にとって)危ない場面があったり、悔しい結果になって。でも、こればっかりはやった人にしかわからないから。やったことはすごいし、普段格闘技を見ない人たちにも届いたので、それはプラスだったんじゃないかなって思います。
――では、けっこう落ち着いてご自宅で中継を見ていたんですか?
RENA 本来なら自分もリングに立っていたはずなので、変な感覚というか、複雑な心境ではありましたね。でも、地元の大阪から家族や友達が来てくれて一緒に見ていたので、助かりました。ひとりでいたらダメージは大きかったと思うので、周りに助けられました。
――年明けは、外出はコンビニに行くくらいで、家に引き篭(こ)もっていたようですね。
RENA あまり外に出ずに家にいました。逆に、みんなが心配して家に来てくれたり連絡をくれたのはありがたかったです。
――多くの人に心配された?
RENA そうですね。ここまで心配してもらえるのは、普通は大きい病気とか手術をしたときくらいでしょうし、家族や友達の温かさが身にしみました。そして事務所やファンクラブを通じて勇気付けてくださったファンの皆さまにも本当に感謝しています。
――SNSでエゴサーチをしたりはしなかった?
RENA 全然してないです。そういうのをわざわざ見ても何もないですからね。子供の頃からツラい経験はたくさん乗り越えてきたし、(SNSでのバッシングについては)なんにせよ気にしていただけているんだって感謝しています。でも今回、自分がどん底に落ちたら当然離れる人はいるけど、どういう状況になっても変わらず応援してくれる人もいるということを改めて感じました。
――RIZIN参戦により、格闘技界のヒロインとして広く世間に名が知られるようになったわけですが、ご自身の人生を客観的に見ると?
RENA ただ単に試合に勝ち続けているわけではなく、(負けても)注目してもらえているのならプロとして評価していただけているということなので、それはありがたいことだと捉えています。
――RIZINの中継では「視聴率女王」。これはある意味、ベルトを獲るより難しいことかもしれません。格闘技人気の底上げという大仕事はすでに果たしているわけで、モチベーションを維持するのが大変なんじゃないですか?
RENA MMAに関しては、すごくベルトが欲しいわけではなかったんですよ。「挑戦」というのがテーマで、楽しさのほうが上回っていたので。だからモチベーションが下がることはなかったんですけど、(当初、MMAは)1試合で辞めるつもりが気づいたら9試合もやっていますね(苦笑)。
――2017年の「女子スーパーアトム級トーナメント」は決勝で浅倉カンナ選手に敗れましたが、もし優勝していたら?
RENA どうなんでしょうね? ベルトを巻いてしまっていたら満足して、(MMAは)もういいかなってなっていたかもしれないですね......わかりません(笑)。
――昨年は夏に浅倉選手とのリマッチに敗れ、大晦日の失敗があった。またイチから駆け上がっていくストーリーが見られるわけで、その意味でもRENAさんは「持っている」選手だなと思うのですが。
RENA 前向きに捉えていただいて、ありがとうございます(笑)。でも自分自身では、運がいいほうだとは思うんですけど、「持っている」とは思っていないんですよ。
――思ってない!?
RENA はい。ただ、タイミング的にRIZINがスタートする年に東京に出てくることになって、シュートボクサーとしてまさかのMMAに挑戦することになって......運命じゃないですけど、格闘家として成熟したときにこのチャンスに恵まれたという部分では「持っている」のかな、とは思います。いくら強くてもうまく時代とともに歩んでいけないと、世間からのスポットライトを浴びることができなかったりすると思うので、割と自分のタイミングは合ったのかな、と思います。あと3年遅かったらMMAはやっていないと思うし、あのときだったから挑戦したと思うし。
――3月末、アジア最大級の格闘技団体と言われる「ONE」の日本大会を両国国技館で観戦していましたね。どう見ていましたか?
RENA 日本の団体とはまた違う空気がありますよね。会場内でのBGMの使い方とか、音楽で楽しめたりもするので、10代、20代の人たちが来やすいイベントだなあって思いました。
――自分が金網の中で試合をする姿を想像したりは?
RENA 一回やってみたいですね。今までずっとリングだったので。金網は「檻(おり)」感というか、あの「逃げられない」感を一度体感してみたいです。
――再起戦は、どんなふうに勝ちたいですか?
RENA 相手も立ち技がベースですけど、柔術をやっていて下から寝技で攻めてくることができる選手なので、どんな状況になってもいいように準備しています。私自身、寝技の自信もついてきたし、そこで勝負をしてみたい気持ちもあります。タックルにも入ってみたいし、復帰戦だからと縮こまらずにいろんなことをやりたいですね。
――顔面を踏みつけてやろう、とか?
RENA そんな展開になれば、やってみようかな。とにかく、平成の失敗は平成のうちに片付けて、令和に向けて新しいRENAをお見せしたいと思います!
■RENA選手が出場する「RIZIN.15」の最新情報はRIZIN公式サイトでチェック!