FC東京とサンフレッチェ広島について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第94回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、FC東京とサンフレッチェ広島について。Jリーグ開幕から好調を維持するこの2チームの強さの理由を宮澤ミシェルが分析する。

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平成から令和へ向かうゴールデンウィークのJリーグは、どのスタジアムにも大勢の観客やサポーターが詰めかけている。日本サッカーを昭和時代から知る者としては、これほどうれしいことはないし、新元号のもとではさらに多くの人を魅了するものへと進化してもらいたいなと思うよ。

そのJリーグで、開幕からFC東京とサンフレッチェ広島が好調を維持している。

FC東京は9節終了時点で唯一の無敗。J1リーグ戦の首位を走っている。この要因のひとつには、久保建英がフィジカル的に成長したことで、持ち前の技術の高さを存分に発揮していることがあるよね。

ただ、久保へ注目が集まるけれど、中心となってチームを牽引しているのは、間違いなく東慶悟だね。東の視野の広さやパスがあるから、最前線のディエゴ・オリヴェイラや永井謙佑が活きている。

永井はあのスピードがあるからDFにとっては厄介だし、相変わらずイージーミスもするけれど、目の覚めるようなスーパーゴールを決めちゃう。第4節の名古屋グランパス戦で決めたシュートなんて、すごかったよ。苦しい展開のなかで局面を一発でひっくり返せる武器があるし、チームの雰囲気をガラッと変えられる。やっぱり永井は貴重だし、だから魅力的に映るんだろうな。

東の後ろで守備と攻撃をつなぐ橋本拳人、高萩洋次郎の存在も見逃せないよ。開幕前は高萩の仕上がりに少し不安を覚えていたんだけど、さすがベテランだね。しっかりチームにフィットしてきた。橋本は3月の日本代表戦で代表デビューしたけれど、中盤の潰し屋としては欠かせない選手になったよね。

そして、なによりDFラインが安定しているのも大きい。森重真人とチャン・ヒョンスのコンビがいいね。昨年からの上積みもあって見ていて安心できるね。サイドバックは日本代表の室屋成の右は想定内だったけど、左に入る小川諒也がいいんだよ。元日本代表の太田宏介を控えに追いやるのもわかるプレーを見せてくれている。

攻守に充実しているから、FC東京がまだしばらくはJリーグの首位戦線を牽引していくだろうね。

サンフレッチェ広島は、無敗同士で迎えた第8節のFC東京戦で今季初黒星を喫すると、第9節では名古屋グランパスに敗戦。名古屋にかわされて3位に落ちてしまったけれど、まったく下を向く必要はないよ。

2連敗で心配する向きもあるけれど、名古屋戦もいいサッカーをしていたからね。勝ち点を手にできなかったのは、名古屋のGKランゲラックが素晴らしすぎたから。ここは割り切ってもらいたいね。

最前線でドウグラス・ヴィエイラやパトリックが最前線で発揮して、その後ろから柴崎晃誠、野津田岳人が攻撃に厚みを加える広島にあって、欠かせないのが左MF柏好文だよ。

広島の攻撃は柏のいる左サイドから始まるといいっていいくらい偏重している。相手もこれを分析しているのに、それを粉砕しちゃう。それくらいすごい。自分たちの強みを最大限に発揮できる形をどこまで続けていけるか。これが広島のここからの戦いのカギになるよね。

FC東京と広島の両チームとも、ハードワークをしながら堅守速攻というスタイルでリーグ戦の勝ち点を積み上げてきた。開幕から主力選手に大きな故障者もいなかったし、累積警告などもそれほど影響はしなかった。

だけど、これは昨季もシーズン前半戦は同じだったよね。昨年は疲労の溜まる夏場くらいから体力的に苦しくなった。ここをどう今シーズンに向けて改善してきたのかが、これからの見どころだよね。

戦い方を変えることは難しい。だから、選手層に厚みをもたせながら、クオリティーやスタミナ面を含めて、総合力で昨年以上のチームに仕上げてこられたかが問われるっていうわけ。だから、これからの両チームには控え選手も含めてどう戦っていくのかに注目しているし、秋風が吹き始める頃になっても、いまの順位にいることを期待しているんだ。

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