南野拓実について語った宮澤ミシェル 南野拓実について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第98回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、南野拓実について。オーストリアリーグのザルツブルグで活躍する南野の成長に宮澤ミシェルは驚かされたという。

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あっという間に終わった感じのする2018-2019シーズン、今年も数多くの日本人選手が海外リーグでプレーしたね。昨年のJリーグが終了してから、シーズン途中に海外クラブに新加入した選手は、なかなかチームにフィットできずに苦しんだりもした。

そんな中、海外組の日本人選手で今シーズンもっとも驚かされたのが南野拓実だったね。

森保一監督が就任した新生・日本代表で、久しぶりに彼のプレーをちゃんと見たけれど、想像を超えるくらい成長していて驚かされたよ。なかなかオーストリアリーグのザルツブルグでのプレーを見る機会がなかったし、セレッソ大阪時代の印象では、サイドからドリブルで突っかけていくだけの選手だった。

それが日本代表ではトップ下に入って、しっかりとゲームをつくるし、右MFの堂安律、左MFの中島翔哉との絶妙な絡みからチャンスメイクをするでしょ。しかも、自分でもDFラインの裏に抜け出してシュートまで持ち込んだりもする。躍動感があって、はつらつとしたプレーは、観ている側に期待感を持たせてくれたし、いまや日本代表に不可欠な選手になっているからね。

やっぱりサッカー選手は、苦労を経験したほうが大きく伸びるんだろうな。ザルツブルグに2015年に移籍してからは、先発だけではなくベンチスタートも多かった。それでも昨シーズンに続いて今シーズンも、リーグ戦やカップ戦などの全試合を合わせたら2桁ゴールを記録しているんだよな。リーグ戦と国内カップ戦の二冠に輝いたチームのなかで、出場した試合ではしっかりと存在感を発揮して戦力になっている。これはすごいことだよ。

日本人選手のFWが海外リーグに移籍すると、なかなかサッカーに適応できなくて苦労することが少なくないからね。今季からドイツのニュルンベルクでプレーした久保裕也もブンデスリーガでの初得点がシーズン最終盤の4月13日だもの。苦労しているよ。

今季はハノーファーでプレーした浅野拓磨も、開幕直後から期待はされたけれど、本領発揮には至らなかったでしょ。彼は速さはあるけど不器用だから、時間がかかる面はあるとはいえ、突き抜けることができなかったよね。

南野のいるリーグよりは、ブンデスリーガの方がDFのレベルが高いのを差し引いたとしても、彼らは自分の持ち味を発揮できていないよな。どうやってチームのなかで出せるようにするのか。そこが来季への一番の課題だよね。

ただ、南野のケースを見ていると、少しレベルの下のリーグのなかで、着実に試合に出ながら成長していく道を進んだ方がいいように感じちゃうね。特に攻撃的なポジションの選手は、大柄DFへの対応力をそこで高めてから、ステップアップした方がいいんじゃないかな。

そうしたなか、いま一番の気がかりは、南野が来季はどうするのかってことだな。南野はトータルバランスがいい選手に成長しているからね。ドリブルだけじゃなく、パスもシュートもすべてが高いレベルにあって、フィジカルも強くなっている。オーストリアリーグよりも格上のリーグへステップアップしても、すぐに適応できるように感じるんだ。

個人的にはプレミアリーグでプレーする姿が見たいな。あれだけのスピードとパワーの凄まじいリーグで、南野がどれだけやれるのか見たいんだよな。岡崎慎司が退団するレスターあたりが南野を獲得してくれたら、おもしろいと思うんだけど、どうかな。

ただ、ザルツブルグは来季、チャンピオンズリーグに本戦から出場できることになった。南野にしたら悩ましいところだろうな。日本では若いイメージのある南野だけど、彼も来年1月の誕生日で25歳。ここから3~4年が選手として最も脂が乗る時期だから、ここでの選択が彼の今後のキャリアを大きく左右するのは間違いないだろうな。どんな選択をするのか楽しみにしているよ。

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