サッカー協会の審判委員会の責任も問われるべきだろうと語るセルジオ越後氏

海外だったら、当該チームの試合ボイコットや、サポーターの暴動が起きてもおかしくない。それほどの誤審だった。

Jリーグ第12節の浦和vs湘南での誤審が大きな波紋を呼んだ。前半途中、湘南の選手が放ったシュートは右ポストに当たってネットを揺らし、完全にゴールラインを割った。ゴールは誰の目にも明らかだった。

ところが、川崎副審からゴールの合図はなく、山本主審もGKから投げ返されたボールを見て、そのままプレー続行を指示。その後、湘南側が猛抗議し、試合は約6分間中断する事態となったが、結局、ノーゴール判定で再開された。

主審も副審もゴールを見逃したという事実は動かなかったにしても、主審は副審や第4審判に確認、相談をしに行くことすらしなかった。あれでは選手も納得できないよ。審判団の技術不足、連携不足だったと思う。

この試合に限らず、今季のJリーグでは大きな誤審が目立っていた。「幻のゴール」はほかにもあった。もし今季の最終順位が得失点差で決まり、誤審の影響で優勝を逃したり、J2に落ちたりするチームが出てきたらどうするのか。審判はそれだけ責任の重い仕事だ。

選手たちはミスをして出場停止処分を受ければ、出場給、勝利給などの収入が減るし、来季以降の契約にも影響が出かねない。また、クラブはファンが問題を起こせば、罰金や無観客試合などの処分を科される。それと同じで、審判もプロである以上、「たるんでいる」と批判されて当然。その点、日本のメディアは優しすぎるくらいだよ。

確かに「審判も人間だからミスは仕方ない」と言われればそのとおり。「ミスは起きるもの」だ。でも、それを言い訳にして終わらせたら、今後の改善も進歩も見込めない。

渦中の山本主審、川崎副審には相当の処分が科されるべき。後日、Jリーグおよび日本サッカー協会管轄公式戦への2週間の割り当て停止の措置が下されたけど、あまりにも軽すぎる。今季はJ1の試合で笛を吹けない、または減俸くらいの厳しさが欲しかった。

そして、これだけ誤審が続いている以上、個人のミスがたまたま続いただけと片づけてはいけない。審判を統括するサッカー協会の審判委員会の責任も問われるべきだろう。

一般の会社でも社員が問題を起こしたら、その社員だけでなく、会社のトップが自らになんらかのペナルティを科すなどして責任を取る。それと同じで相次ぐ今季の誤審について、誰かがけじめをつけないと選手にも現場の審判にも示しがつかない。

今回の誤審を受け、審判委員会は追加副審の早期導入を目指すとした。また、この試合を現場で観戦していたJリーグの村井チェアマンはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)やゴールラインテクノロジーの早期導入を示唆している。それは自然な流れだし、誤審も減るかもしれない。

でも、それと同時に審判のレベルをどうやって底上げしていくのか、プロとして健全な競争原理が働く環境をどう築くのかを考えなければいけない。評価基準をより明確にし、よいレフェリングをした審判は待遇を上げ、悪いレフェリングをした審判は待遇を下げる。シンプルな話だ。

それを抜きに、大金をかけて最新技術を導入するだけでは機械頼みになり、逆に審判のレベルアップの妨げになりかねないよ。

★『セルジオ越後の一蹴両断!』は毎週木曜日更新!★