サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第100回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、『ソサイチ』について。実は、あまり知られていない7人制サッカー『ソサイチ』が持つ可能性について宮澤ミシェルが語る。
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『ソサイチ』っていう言葉は聞いたことあるかな? サッカーの種類のひとつなんだけど、1チーム7人でやるものなんだよね。縦45m~55m、横25m~35mくらいのピッチで、5号球サイズの弾みにくいソサイチ専用のボールを使うんだ。
この連載でも何度か触れたことがあるけれど、僕が10代だった頃は『サロンフットボール』というのがあったんだよね。1930年頃からウルグアイやブラジルで盛んに行なわれ始めたもので、日本にはセルジ(セルジオ越後)が持ってきた。それが1994年に『フットサル』という競技名になって、いまじゃフットサルは多くの人が楽しむ認知度の高いスポーツになったよね。
じゃあ、ソサイチはフットサルとどう違うのという疑問を持つ人もいるだろうね。まず人数が違うんだ。フットサルは1チーム5人がコートに立てるけど、ソサイチは7人。それにコートのサイズがソサイチは、フットサルコート3面分くらいの大きさがある。だから、突き詰めていけば、戦術的にも異なった部分があると思うよ。
僕のラジオ番組に日本ソサイチ連盟の人がゲストで来てくれた時には、「競技人口700万人を目指しています」と言っていたよ。日本サッカー協会が目指しているのが「競技人口1000万人」だけど、まだまだそこは遠いレベル。ただソサイチには、それを実現する可能性を秘めているようには感じたよね。
これからもっと普及をしていきたいということで、リーグ戦を充実させたり、女性を取り込んだりしていくプランを持っている一方で、課題はコート数だっていう話もしていた。フットサル3面分だから、なかなか環境を整えていくのが難しいようだよ。
だけど、フットサルよりも広いコートでやるから、エッセンスとしては11人制サッカーとフットサルの中間くらいに位置するんだろうなって思うんだ。それにプロ化していくというよりは、生涯スポーツとしての存在を目指しているっていうのも、全年代で700万人の競技人口を実現するうえでは、いい方向性だなって感じるんだよね。
スポーツには『観るスポーツ』と『Doスポーツ』があるけれど、『観るスポーツ』として新たに確立させるには、資金力を含めて莫大な時間と労力がかかるからね。11人制サッカーの『Jリーグ』や、フットサルのプロリーグ『Fリーグ』だけじゃなく、サッカー以外のプロ野球やバスケットなどとも競合するし、海外スポーツも簡単に観られる時代では相当困難なことだからね。
でも、Doスポーツとしてなら、11人制サッカーやフットサルの受け皿にもなれる。そのメリットを生かしていければ、生涯スポーツとしての道は拓けると思うし、切り開いてもらいたいなと思うんだ。
そもそもサッカーはボールを蹴ってゴールを奪うという単純な遊びだから、それこそ世界中にいろんな種類があるよね。ソサイチもフットサルも南米発祥だけど、想像するに元を辿ればたぶん、「サッカーをやりたいけど、人数が揃わないから」って感じで発祥して、人数とコートのサイズが違うから呼び名が変わったくらいだと思うんだ。
海辺でやればビーチサッカーだし、泥の中でやればスワンプサッカーになる。パラスポーツでも視覚障害の人たちのブラインドサッカーがあって、上肢や下肢に切断障害のある選手が行なうアンプティサッカーもある。
ボールひとつあれば、誰もが楽しめるスポーツっていうのが、サッカーの魅力だからね。日本サッカーは25年かけてトップ選手たちの高い次元でのプレーを観られるJリーグが定着してきたけど、それだけがサッカーなわけじゃない。
年齢に関係なく、誰もが汗を流して、笑顔になれるのもサッカーだし、性別にかかわらず子どもから老人までが、ひとつのボールのもとで楽しめる国になって初めて、本当の意味でサッカーが文化に根付いたと言えるんだと思うんだ。
11人制、フットサル、ソサイチとあると、棲み分けが難しい部分もあるだろうけど、サッカーそのものの裾野が広がるという視点に立てば、ソサイチの取り組みには成功してもらいたいなって思うよ。時間のかかることだから、長い目で見ていきたいし、みなさんには『ソサイチ』というサッカーの種類があることを気に留めておいてもらいたいな。そして、機会があれば是非参加して頂けたらと思います。