『週刊プレイボーイ』で『堂安 律の最深部』を隔週で連載している、日本サッカーの未来を担う若き野心家、堂安 律(どうあん・りつ)。
欧州挑戦2年目のシーズンを5月下旬に終え、帰国後すぐに日本代表に招集。6月5日のトリニダード・トバゴ戦(0-0△)、9日のエルサルバドル戦(2-0〇)にスタメン出場するも、「この2試合よくなかった」と振り返った。
「この半年でぶち当たった壁も自分にとって意味があると思っています」とも発言したが、果たしてその真意とは――。
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■脳をだます。思い込みは大事
最近は「根拠のない自信」を大事にしてるんです。
リーグ戦でしばらくゴールを決められていないときでも、「ピッチにいる22人の中で自分が一番うまい」という自信を持っていましたから。まったく根拠はなかったけど、そういう気持ちはすごく大事にしてましたね。
それこそ、4月のアヤックス戦なんかもそう。向こうはチャンピオンズリーグも勝ち進んでいたし、本当にすごい選手がいるわけじゃないですか。でも、「いや、こいつらより俺のほうがうまいやろうな」と整列したときに思えたんですよね。
列の一番後ろにいたエースのツィエク(モロッコ代表)と目が合ったけど、強い気持ちでいられた。脳をだますじゃないですけど、そういう思い込みは大事やなと。俺が一番うまいと思って、王様のようにピッチに立てば、堂々とプレーできるものやと思います。
オランダ1年目で初めてアヤックスと戦ったときはフンテラール(元オランダ代表)を見て、「すげえ」と思ってましたからね。メンタルが成長したんやと思う。
だから、時には勘違いって、やっぱり最強やと思ってて。サッカー選手がピッチ上で勘違いすんのって超大事なんですよ。冷静に見れば、どう考えたって自分は一番じゃない。アヤックスにはフレンキー・デ・ヨングやマタイス・デリフト(共にオランダ代表)もいる。実績ベースで俺が一番なわけないのに、勘違いできちゃうってのは幸せな性格してるなと思います(笑)。
「根拠のない自信」は恋愛でたとえるとわかりやすいかもしれないですね。
例えば、好きな女のコがいるとしますよね。その好きな人が自分のことを好きかもしれへんって勘違いしたら、めっちゃ楽しくないですか? 向こうは自分のこと好きやないねんで、ほんまは(笑)。
でも、そうやって勘違いできたら、自然と立ち振る舞いや言動も変わってくると思う。何より自信がみなぎるから、魅力が増すはず。そしたら、ほんまに自分のことを好きになってくれるかもしれないじゃないですか。
これはなかなか『週刊プレイボーイ』にぴったりのたとえだと思うんですけど、どうですか?(笑)
■不安を断ち切って自信を持ってピッチに立つ
根拠のない自信と言ってますけど、ほんまはほんの少し根拠はあるんです。正確に言うと、「根拠がある自信」に変えようと思って、日々、努力しているわけです。なんの努力もせずに、「俺はうまい、スーパースターや」と思うのはただの勘違いなんで。
試合の直前までは強い気持ちを持って自分を追い込み、限界までトレーニングをこなす。「これだけやったんやから、絶対に間違いない」と信じて練習するんです。
結局、どうしたってピッチに入る瞬間は不安があるもの。だから、「やばいぞ、どうしよう」って思う気持ちに打ち勝つためにも、「いや、これだけやってきたんやから、絶対に大丈夫や」って思えるだけの練習をやってこれたかどうかが大事なんですよ。
そういった不安を断ち切って、自信がみなぎった状態でピッチに立つのがサッカー選手として最強やと思う。この半年間の経験があったから、そういうことに気づけました。
自分にとって大きな収穫やし、たぶんこれからだいぶ得するんじゃないかな。もっとちゃんとメンタルをコントロールできるようになったら、サッカー選手としてもうひとつレベルアップできるはずなんで。
■勇気を持ってガラリと変える
アジア杯が終わってから、もっと成長しないといけないと思って、とにかくゴールにこだわりだしました。でも、今思えば、ものすごく勘違いしていたと思う。
点取ろう、点取ろうってほんまに勘違いしちゃったから、空回りしてしまった。ゴールが欲しいから守備をちょっとサボってしまったりとか。見てる人はわからへんぐらいのほんまちょっとなんやけど、その積み重ねが原因でもしかしたら運を引き寄せられなかったのかもしれない。
そんな葛藤があったけど、リーグ戦終盤にようやく吹っ切れることができました。「運を引き寄せるために練習しよう」「根拠のある自信を取り戻すために自分を追い込んで練習しよう」と、メンタルをポジティブに変えることができたんです。
根拠のない自信と同じくらい自分が大切にしているのは、変化を恐れないこと。成長していくためには、やっぱり変化を恐れないってことが大事やと思うんで。
同じ練習、同じ環境のままでは成長できないから、早くステップアップしたいし、より厳しいところに身を置きたい。変化を怖がる人もいるけど、成功体験に引っ張られているようじゃダメだと思う。俺は何かを変えないとそこからは成長できんって思うタイプなんで。
もちろん、自分が今までやってきたなかで持っている信念みたいなものは大事ですよ。それに継続していくことも当然、大事。でも、時には思い切って、勇気を持って考え方をガラリと変えることも必要だと俺は思っています。
●堂安 律(どうあん・りつ)
1998年6月16日生まれ、兵庫県尼崎市出身。ガンバ大阪を経て、現在はオランダ1部・FCフローニンゲンに所属。海外挑戦1年目はリーグ戦29試合に出場して9得点4アシストを記録。昨年9月、満を持して日本代表デビュー