日本代表のDFのシステムについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第103回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、日本代表のDFのシステムについて。キリンチャレンジカップ、南米選手権でのプレーを見て、宮澤ミシェルが考える日本代表に最適なDFのシステムとは?

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森保一監督はしっかり相手を見ながら、チームづくりを進めているなと思うよ。

トリニダード・トバゴとエルサルバドルを迎えたキリンチャレンジカップでは、A代表を率いるようになってから初めて3‐4‐2‐1のシステムを使った。一方、結成から3‐4‐2‐1をメインに戦ってきた東京五輪世代を中心にした南米選手権では、彼らにとって初めての4‐2‐3‐1で挑んでいる。

システムは1つしかできませんというよりは、2つを使い分けられた方がいいのは当然のこと。ただ、森保監督は広島時代に3バックを主体にしていたことで、3バックが基本線だと思われているけど、2022年W杯カタール大会でヨーロッパの強豪や南米勢を相手にした時に3バックで戦えるかというと、現状ではやっぱり厳しいと思うんだ。

3‐4‐2‐1は攻撃でも守備でも数的優位がつくりやすく、日本人の特長である組織力が活かしやすい。ただし、それは自分たちが主導権を握れた場合のこと。相手のレベルが上がって押し込まれてしまうと、ウイングバック(WB)は3バックに吸収されて、実際は5バックになってしまうんだ。

そうなると中盤の枚数は4枚になる。これだと中盤でプレッシャーをかけにくくなるからキツイんだ。DFラインでボールを奪ったとしても、それを預ける中盤の選手には相手が激しいプレッシャーをかけてくる。そこでボールがキープできたとしても、WBの選手たちが前へと出ていくパワーが必要になるんだ。

それだけパワフルな動きを1試合通じて何度もやれるかというと、格上相手では現実的ではないと思う。もちろん、冨安健洋や吉田麻也、昌子源、畠中槙之輔といった日本代表のCB陣が、超人的なフィジカルの強さを手に入れられるのなら3バックでいいんだ。ただ、相手は強豪国で攻撃陣には世界的なスター選手がいて、ペナルティエリア内のファールにはVARが監視している。そう考えると、3バックはメイン戦術ではなく、オプションとしてのものになるのかなと思うんだ。

でも、どうしても3バックでというなら、フィリップ・トルシエ監督時代の『フラット3』なら可能性はあるかな。ただ、当時は選手たちが国内組ばかりで合宿を重ねて連携力を高められたけど、海外組が増えた現在ではそれも非現実的なんだ。

それに対して4バックは日本代表にはCBに人材が育ってきたね。冨安はすごい勢いで成長を遂げているし、吉田、昌子、畠中と人材が揃ってきた。両サイドバックが長友佑都、酒井宏樹に続く人材がなかなか出てこない課題はあるけれど、格上との戦いでは両サイドはしっかり守れれば守備はなんとかなるからね。

そうしたこともあって、チリやウルグアイといった格上と対戦できる南米選手権は、東京五輪世代には4バックを試してもらいたいと思っていたら、さすが森保監督。相手との実力差を考えて4バックを敷いて戦い、選手たちに強豪との試合のなかで大きな経験を積ませたよね。

こうした選択を森保監督ができるのも、日本に選手が育ってきたのが大きいよな。南米選手権は招集外だけれど、エルサルバドル戦で見せた畠中のプレーなんて、驚きの連続だったよ。技術が高いから安定感はあるし、くさびの縦パスを入れるタイミングもいい。久しぶりにDFでセンスのある選手が出てきたなと感じたな。

攻撃陣もタレントが目白押しだよな。東京五輪世代の堂安律は、去年は日本代表に定着しようとフレッシュな勢いを見せてくれたけど、6月のテストマッチ2試合や、その前にあった3月のコロンビア戦やボリビア戦では物足りなさが残った。

選手層が薄くて堂安に代わる選手が現れなければ今後も起用していかなければならないけれど、南米選手権では堂安と同じポジションで同じ左利きの三好康児がウルグアイ戦で2ゴール。しかも、ここは久保建英もプレーできるポジションでしょ。堂安はうかうかしていられないよね。

攻撃的MFやCBをはじめ、使いたくなる選手がたくさんいて、新たに起用した選手がしっかりと結果を残す。このサイクルは日本代表が高いレベルへと登っていくためには不可欠。来夏の東京五輪も重要だけれど、その先のW杯カタール大会に向けて、日本代表は順調に強化が進んでいるし、ここからの成長をもっと期待したいね。

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