南米選手権は親善試合とは別モノと語るセルジオ越後氏

親善試合とはまるで別モノ。ガチンコ勝負は得るものが多いし、何より面白い。そんな当たり前のことを再確認した。

日本も参加した南米選手権は地元ブラジルの優勝で幕を閉じた。ブラジル、アルゼンチンを除けば、親善試合でよく来日するチームが多いけど、ボール際や体の使い方など、激しさが全然違う。少し引っ張られたり、倒されたりするくらいでは選手も文句を言わない。悪いプレーをすれば、メディアやファンに容赦なく叩かれるし、みんな必死なんだよね。

近年の南米勢はW杯で欧州勢に対して分が悪いけど、それでもやっぱり南米は南米だ。日本にはよいレッスンになったし、今後もし再び南米選手権に参加するチャンスがあるなら、絶対にその機会をムダにしてはいけない。

優勝したブラジルはエースのネイマールを負傷で欠いた。また、守りを固めてカウンターを狙う、フィジカルでシステマチックなサッカーはほかのチームと大差なかった。

では、ブラジルと他チームでは何が違ったのか。それはサイドの攻撃力。ブラジル伝統の強みだ。そして今回、それを象徴する存在が大会MVPに輝いたダニエウ・アウベス。

彼は右サイドバックながら再三、最前線まで攻め上がってチャンスを演出した。大一番の準決勝、アルゼンチン戦でのガブリエル・ジェズスの先制点も、その前にドリブルで相手の守備を崩したアウベスのゴールみたいなもの。同じくワイドに開く前線のジェズス、エヴェルトンと共に攻撃を牽引(けんいん)した。

また、そうしたサイド攻撃を仕掛けるためのカギを握るのが、後ろのスペースをカバーするボランチ。今回のブラジルはカゼミロ、アルトゥールのふたりがいい仕事をした。特にカゼミロの安定感は素晴らしかったね。

アルトゥールほど運動量が多いわけではないんだけど、大事な場面に必ず顔を出し、しかも落ち着いている。別格の存在感を見せた。あれほど頼りになるボランチがいたら、後ろ(最終ライン)の選手はラクだろう。

ただ、これでブラジルが2022年カタールW杯の優勝候補に挙げられるかといえば、そんな簡単な話じゃない。PK戦までもつれ込んだ準々決勝のパラグアイ戦など危ない試合もあった。今後に向けての不安要素はある。

まず気になるのは、代えの利かないベテランの存在。アウベスは36歳、センターバックのチアゴ・シウバは34歳。代表で長年レギュラーを張る彼らの代わりを務められる選手はまだ見当たらない。

そして、もうネイマールがいなくても大丈夫という活躍をする選手も出てこなかった。ジェズスもエヴェルトンも頑張っていたけど、ネイマールのように"戦術を超える"選手ではない。そのあたりが今後の課題になるだろう。

ちなみに、準決勝でブラジルに敗れたアルゼンチンについて、多くのブラジル人は、相手の状態や試合の内容がよかろうと悪かろうと、勝てばオーケー。今回も「ざまあみろ」と大喜びしている。でも、個人的には少し寂しい。メッシ、アグエロは所属クラブでプレーするときとは違い、代表では相変わらず窮屈そうにプレーしていた。

また、彼らに続く若手も出てこない。チーム全体で見ても、以前のような貫禄や迫力がなくなってしまった。メッシももう32歳。代表でのタイトル獲得は難しいかもしれないね。

★『セルジオ越後の一蹴両断!』は毎週木曜日更新!★