川崎フロンターレとFC東京について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第106回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、川崎フロンターレとFC東京について。シーズン前半から好調で、現在1位のFC東京と、開幕直後は苦戦も徐々に調子を上げてFC東京の背後に迫ってきた川崎F。この2チームの好調の理由とシーズン後半戦の見どころを宮澤ミシェルが解説する。

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南米選手権やU-20W杯などで世間の目が国際大会に向いている間に、川崎フロンターレがしっかりといいポジションに上がってきた。さすがはJリーグ王者という感じだね。

今シーズンも開幕直後は勝ち切れなくて勝ち点を思うように積み上げられなかったけれど、第5節からの14試合は負けなしの9勝5分け。勝ち点を一気に32ポイントも積み上げてリーグの上位に浮上している。

ただ、川崎Fは昨シーズンもスロースターターだったからね。今季もこういう展開になると予測はしていたけれど、あまりに見事すぎるから改めて驚かされているよ。

彼らが今季、もっとも狙っていたタイトルはACLだったけれど、そこはグループリーグでコケてしまった。その悔しさはあると思うけど、ズルズルとリーグ戦にまで引きずらないのが、彼らがチャンピオンチームたるところだろうな。

小林悠がゴールデンウィーク頃から本調子になって、レアンドロ・ダミアンもリーグ戦でゴールが決まるようになってきた。だけど、前半戦の殊勲者はと聞かれたら、FWの知念慶だな。小林悠の調子は上がらず、レアンドロ・ダミアンが戦術に完全にフィットしないなかで、FWとして存在感を存分に発揮したよね。

知念は昨季も前半戦は頑張ったんだけど、後半戦は調子が落ちてしまった。だから、今季は最後まで突っ走ってもらいたいね。今季の動きならそれは可能だと思うし、知念が後半戦も与えられた時間で活躍するようだと、川崎Fのリーグ戦3連覇が、具体的になるんじゃないかと思っているよ。

それと、もうひとり忘れちゃいけないのが、CBのジェジエウ。今季から加入したブラジル人は開幕から9節まで出場なしだった。それが第8節で奈良竜樹が故障し、第10節でスタメン出場の機会をつかむと、ポテンシャルの高さを発揮してポジションを確固たるものにした。

能力の高い選手がベンチを温めていて、ワンチャンスをモノにする。こういうチームは底力が高いよね。レアンドロ・ダミアンもほかのチームに移ったら、得点王争いができるだけの力を持っているよ。川崎Fの独特のスタイルに慣れるのに時間がかかって、本領発揮には至っていないだけで、ストライカーとしての能力が低いわけじゃない。それに彼は、点が取れない時でも、ゴールを狙うだけじゃなく、守備のところでも頑張るし、前線で走れる強みもある。ゴール感覚は抜群のセンスがあるから、それを存分に見せてくれるのも時間の問題だと思っているよ。

その王者に背後につかれたFC東京は、ここからが正念場だな。今季は13節でセレッソ大阪(5/25)に0対1で敗れてシーズン初黒星を喫すると、第15節でヴィッセル神戸に0対1、第16節でベガルタ仙台に0対2と2連敗。

前半戦は首位争いをしていたけど、得点がピタッと止まってから苦しんだ昨シーズンと同じ末路をたどるのかと心配したけれど、次の横浜F.マリノス戦ではディエゴ・オリベイラが2ヶ月ぶりとなるゴールをあげて逆転勝ち。優勝を狙うチームがリーグ戦で3連敗すると、一気に厳しい状況になるから、この勝利は大きかったね。そのあとも、川崎Fに0対3で負けたけれど、次の清水にはしっかりと勝ったしね。

ただ、FC東京は久保建英が抜けた穴をどう埋めていくかという課題もある。ダブルボランチに橋本拳人と高萩洋次郎で、右サイドに東慶悟、左サイドにナ・サンホという布陣でひとまずは戦っていくのだろうね。

ポイントは彼らの最大の強みである厳しいプレスが、ここからの暑い時期にどこまで徹底できるのかだな。そこと連動しながら前線の永井謙佑のスピードと、ディエゴ・オリベイラの決定力を生かせたのが前半戦だし、それを後半戦もキープできるようだと初のリーグタイトルも見えてくるんじゃないかな。

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