複数クラブによる争奪戦の末、レアルと同じスペイン1部マジョルカに期限付き移籍した久保。※写真はイメージです

レアル・マドリードのカスティージャ(Bチーム)に籍を置き、今季はスペインの3部リーグでプレーするとみられていた久保建英(たけふさ)が一転、同1部リーグのマジョルカへ期限付き移籍した。

マジョルカは1990年代終盤から2000年代初頭にかけて1部で躍進したが、近年は低迷。昨季、2部リーグのプレーオフを制し、今季ようやく1部復帰を果たした。

当然、戦力は他チームより劣り、シーズン中は格上相手の対戦が続くことになる。そんなチームへの移籍を決断したことは、久保にとって正解だったのか。サッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏が言う。

「レアルのトップチーム、カスティージャ、1部の他チームへのレンタルの選択肢の中では最善の道でしょう。レアルのトップにいれば世界の一流選手と練習できるメリットはあっても、実戦出場は難しい。カスティージャならコンスタントに試合に出られたでしょうが、そのレベルが高くない上に、3部となると荒っぽい選手が多く、ケガを負わされるリスクもあった。その点、ほかの1部チームへのレンタル移籍なら、レベルの高い試合を数多く経験することで自身が成長できます」

とはいえ、久保にとってスペイン1部でのプレーは初めての経験で、なんといってもまだ18歳。そもそもマジョルカで先発の座をつかめるのか? サッカージャーナリストの小宮良之氏が語る。

「今季開幕前、彼はレアルのトップチームに帯同してプレシーズンマッチに出場しましたが、クラブ内はもとより、メディアからの評価が非常に高かったんです。『マルカ』や『アス』といった辛口の地元紙さえ絶賛しましたし、知り合いのスペイン人記者たちも『こんな選手がいたんだ』と驚いていました。そういう存在なのですから、昇格したばかりのマジョルカではただレギュラーとしてプレーするだけでなく、主力にならなければ。本人はそのつもりで移籍したはずですし、私もチームの中心になるのは間違いないとみています」

もっとも、久保が将来的に見据えているのはマジョルカで主力になることではなく、あくまでレアルのトップチームでのプレー。その目標を実現させるため、彼はどんなノルマをクリアする必要があるのだろう。

「単にチームの中心選手になるだけでは、レアルが久保を呼び戻そうという気にはならないでしょう。マジョルカの戦術面をすべて担当するぐらいの"王様"にならないと。特に古巣のバルセロナとの対戦では、向こうもかなり意識して彼を潰しにかかってくるでしょうから、どう対応するか興味深いですね」(後藤氏)

「少々活躍しても、チームが降格してしまうようではレアル復帰は無理です。マジョルカを1部残留させる、勝利を決定づけるプレーを何度も見せるのが最低条件。それができなければ来季以降も他チームへの期限付き移籍を繰り返し、二度とレアルへは戻れないかもしれません。ただ、彼はマジョルカ1部残留の立役者となれるだけのポテンシャルを間違いなく備えている。私はかなりやれそうな予感がしているんです」(小宮氏)

果たして久保は今季、マジョルカの英雄となれるのか?