普段はあまり報道陣に多くを語らない鳥谷。今回、球団から引退勧告を受けたと自ら明かしたのは一種の決別宣言と見る向きもある

早稲田大学から自由獲得枠で入団し、阪神ひと筋16年。2017年には阪神の生え抜きとして藤田平(たいら/1983年)以来の2000本安打も達成した鳥谷 敬(とりたに・たかし)が、野球人生の岐路に立っている。

8月31日、鳥谷は報道陣に対し、その2日前に球団社長らとの会談の席で事実上の戦力外通告を受けたことを自ら明かした。スポーツ紙デスクが語る。

「今季はここまで代打主体で打率.208、打点はゼロ(9月4日現在)。4億円という年俸に見合う数字ではないし、38歳という年齢を考えれば、戦力外という結論は理解できないこともありません。ただ、『引退してくれないかと言われた』と鳥谷自身も話していたとおり、球団側の伝え方は、鳥谷に対する態度として誠意あるものだったとはとても言えません」

鳥谷は去就に関し、表向きは態度を保留しているが、球団側との会談の場では現役続行の意思を伝えたという。その背景を、阪神球団関係者がこう明かす。

「鳥谷は今季、初めて控え野手としてシーズンを送っていますが、レギュラーと代打では日々の調整方法がまるで違い、開幕から迷い続けた。年齢による衰えではなく、そのことが不振の原因だと本人は考えているようです。ある程度試合に出続ければ、まだ期待に応えられる自信はあるし、代打の調整にもようやく手応えが出てきた――そんな思いから、より現役への意欲が強くなっているんです」

鳥谷は阪神の幹部候補生で、阪神で現役を終えれば将来は監督候補間違いなしなのに......。そんな声もあるが、球団関係者は首を横に振る。

「実は鳥谷は周囲がイメージするほど、阪神にも関西という土地にも愛着を持っていないんです。関東出身とはいえ、16年間暮らしても関西弁を口にしたのを聞いたことすらない。また、『引退後はプロ野球に関連した仕事に就かなくていい』と周囲に言ってはばからないほどですから、コーチや監督の座にもまったく執着はないでしょう」

早稲田大学から自由獲得枠で入団。阪神を選んだ理由は、人工芝ではなく土のグラウンドを望んだためとも

「後輩と食事に行くことも少なく、チームの中では浮いた存在」(在阪テレビ局関係者)といった声もあれば、「言葉より背中や姿勢で引っ張るタイプ」との評価もあり、人によって印象が大きく異なるのが鳥谷という選手。ただ、誰もが口をそろえるのが練習に対するひたむきさだ。

「控えになってもレギュラー時代と変わらず、誰より早く朝イチから準備している。また、かなりの酒豪でありながら、今季は断酒して体調維持に努めていました。そうした姿勢は誰もが尊敬しています」(前出・デスク)

では、そんな鳥谷を獲得する球団はあるのか?

「ロッテが有力候補とみられています。同じマネジメント会社に所属している井口資仁(ただひと)監督とは、かつて10年以上もオフの自主トレを共にしてきた仲。ただ、球団側が鳥谷をどれほど評価しているかについては不透明な部分があり、まだなんとも言えません」(デスク)

すでに戦力外を伝えられた鳥谷に、残り試合、どれだけ出番が与えられるかはわからない。それでも、鳥谷は今までと同じように毎日、誰より早く球場にやって来ては、汗を流しているという。