W杯予選とはいえ、必ずしもベストメンバーである必要はなかったと語るセルジオ越後氏

何よりも結果が重視されるW杯予選。その初戦ということで、森保監督が慎重になるのもわからなくはない。ただ、それにしても、こんな豪華なメンバーが必要だったのかな。

親善試合のパラグアイ戦(5日)、そしてカタールW杯アジア2次予選の初戦、アウェーのミャンマー戦(10日)に招集された日本代表メンバーを見て驚いた。いや、メンバーそのものは特に驚きのない、いわゆるベストメンバーなんだけど、今回の対戦相手やシーズンに入ったばかりの海外組のことを考えると、大いに疑問が残った。

FIFAランキング33位の日本に対して、ミャンマーは135位。力の差は歴然としている。W杯予選とはいえ、必ずしもベストメンバーである必要はなかったと思う。

特に中島、堂安、久保ら、新たなクラブで立ち位置の定まっていない選手を無理して呼ぶ必要はなかった。彼らはまだポジション争いをしている段階。この2試合のために長距離移動をさせ、チームに戻ったときに「コンディションが落ちている」「まだ連係がいまいち」として試合に出るチャンスを失うリスクも高い。

過去にも、所属クラブでやっと試合に出られるようになった選手が、代表戦の後にポジションを失うケースが何度もあった。長い目で見て日本代表にとってマイナスだし、森保監督もそれは理解していたはず。

実際、監督就任直後の親善試合では、当時トルコ移籍が取り沙汰されていた香川、ドイツ国内で移籍した大迫、原口、さらにイングランドに移籍した武藤らをメンバーから外している。新天地でのポジション争いを優先させる配慮をしたんだ。

もちろん、相手が手強く、厳しい試合が予想される状況なら、そんなことは気にする必要はない。でも、やはり今回は無理をしてベストメンバーを呼ぶことはなかった。

ミャンマー相手にベストメンバーで大勝したからといって、「自分たちの目指すサッカーができた」と喜べるかな。僕に言わせれば、まだ余裕のある時期だからこそ、新たな戦力を試し、選手層を厚くするチャンスだったと思う。

そして、もうひとつ気になっているのが、森保監督のA代表と五輪代表の監督兼任について。かつてトルシエ監督が2002年日韓W杯に出場するA代表と、00年シドニー五輪を目指す五輪代表を兼任して成功したけど、今回はこれまでのところ明らかに状況が違っている。

特に森保監督がほとんどチームを見られていない五輪代表(現U-22代表)が心配。今回もA代表と同時期にU-22代表の北中米遠征が行なわれているけど、森保監督は不在だ(横内コーチが監督を代行)。

確かに、五輪代表も海外組が増え、Jリーグ各クラブもシーズン中の選手招集に必ずしも協力的ではない。また、今回のようにスケジュールが重なれば、森保監督もA代表を優先せざるをえない部分もある。

ここにきて2チームを兼任することの難しさが表面化しているわけだけど、これに関しては日本サッカー協会の見通しが甘かったと言わざるをえない。

森保監督は東京五輪の目標を「メダルを獲る」と公言している。でも、このまま中途半端な兼任でメダルを獲れなければ、今度はA代表についても「大丈夫か?」となる。就任当初はメリットも多いと思った兼任監督だったけど、今は不安が大きいね。

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