アジア制覇に近づく一方で、Jリーグでは残留争い。実にちぐはぐな戦いぶりだね。
浦和が上海上港(中国)を破り、2年ぶりにアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝に進出した。日本勢唯一の勝ち残りだ。グループリーグは最終節で突破を決め、決勝トーナメント1回戦の蔚山現代(韓国)戦は、ホームの初戦を落としたものの、アウェーの2戦目で逆転勝ち。そして、準々決勝は2戦とも引き分けながらアウェーゴールの差で勝ち上がった。
振り返れば、優勝した2年前も準決勝、決勝とアウェーでは得点を決めて引き分けに持ち込み、ホームできっちり勝っている。選手がアウェーでの戦い方、アウェーゴールの重要性をよく理解しているということだろう。
ただ、ACLでは勝負強さを発揮している一方で、Jリーグでは低迷。26節終了時点で8勝7分け11敗と大きく負け越し、残留争いに巻き込まれつつある。ACLとのかけもちがそれだけ大変という言い訳があるにしても、勝ち進めば連戦になるのは最初からわかっていたこと。適切な補強を行ない、複数の大会を勝ち抜くためのチームづくりをしておくべきだった。
もっとも、これは今季に限った話ではない。ここ数年、浦和の補強はうまくいっていない。場当たり的に微妙なレベルの選手を獲得しては、あまり出場機会を与えないまま結局放出する。その繰り返し。今季も杉本や山中など日本代表経験者を獲得したけど、彼らをまったく生かせていない。どういうビジョンで獲得したのかな。
そして、ベテランを優先して使うから若手が育たない。ベテランからポジションを奪う若手が出てこない。そんな悪循環にはまって、世代交代が進まない。気がつけばレギュラーは30代のベテランばかり。数年後にどういうチームになっているのか、まるで見えない。これはフロントの責任だよ。
そんな浦和と対照的なのが鹿島。毎年しっかり結果を出し、今季もACLは準々決勝で敗退したけど、Jリーグ、ルヴァン杯、天皇杯の3冠の可能性を残している。それはチームの土台がしっかりしているから。
外国人はブラジル人と決めていて、日本人の補強も名前で獲(と)るのではなく、チームに合った若手を探し、日本代表に何人も育て上げている。そうやって常に世代交代を図っている。浦和だけでなく、各チームがお手本にしたい存在だね。
話を浦和に戻そう。今季はこれからACL準決勝と残留争いを迎えるわけだけど、狙えるタイトルがあるなら、それを狙うのがプロ。Jリーグはまだ残留圏内にいるので、まずはACL決勝進出を最優先に考えるべきだろう。
カギを握るのはエースの興梠(こうろき)。今の浦和は彼でもっていると言っても過言じゃない。Jリーグで8年連続2桁得点、ACLで日本人最多の25得点は大したものだよ。当然、相手の広州恒大(中国)も厳しくマークしてくるだろうけど、なんとか相手ゴールをこじ開けてほしい。そのためにもJリーグでは無理させなくてもいいと思う。
サポーターも、チームやフロントに不満はあるだろう。実際、観客動員数は減少傾向にある。でも、10月2日の第1戦は埼玉スタジアムを超満員に埋めて、相手にプレッシャーをかけ、浦和の選手を後押ししてほしい。それに選手が結果で応えればいい。それがJリーグ一の人気クラブ、浦和の本来あるべき姿じゃないかな。