「ニュージーランドでは一度、ラグビー人気が低迷。だから、『国民から支持を得よう』とオールブラックスは常に考えている。そのマインドがある限り、彼らは強い」と語る今泉清氏

9月20日から、日本で開催中のラグビーW杯。日本代表の躍進も期待されるが、今大会一番の注目はなんといっても、世界最強の黒衣軍団「オールブラックス」こと、ニュージーランド代表が3連覇を達成できるかだ。

『オールブラックス 圧倒的勝利のマインドセット』は、早稲田大学でも活躍した元日本代表の今泉清(いまいずみ・きよし)氏が自身のニュージーランド留学経験などから、世界最強軍団の強さの秘密をひもといた一冊だ。

リーダーシップ、コミュニケーション、戦略、マインドセット(心構え)など、ビジネスや人生におけるヒントがいくつも得られる。

* * *

――オールブラックスの話をビジネスマンに向けて書かれたのはどうしてでしょう?

今泉 人が集まって、皆で協力してゴールを目指すということはビジネスでもスポーツでも同じ。そこにおけるマインドセットは変わりません。スポーツでうまくいっていることはビジネスにおいても応用できますし、ビジネスでうまくいっていることはスポーツにおいても応用できます。

「私はビジネスマンだからビジネス本しか読まない」ということではなくて、もっと広い視野を持ってほしい。オールブラックスというスポーツの中でもうまくいっている集団の話を読むと大いにヒントになると思います。

そこから得られる気づきがうまくいかないときや停滞しているときのブレイクスルーのきっかけになるはずです。だからこそ、オールブラックスを例にこの本を書こうと思いました。

――スポーツとビジネスの共通点はすごく多いんですね。

今泉 スポーツで大事なのはトレーニングだと思いますが、その言葉の語源はトレイン(電車)なんです。電車に乗れば決まった時間に目的地に着くじゃないですか。つまり、「この練習をするとこのゴールに行ける」というイメージが湧くのが正しいトレーニングなんです。

もしも、試合やゴールにつながっていないのならば、それは単なる鍛錬です。だから自分のゴールやなりたい姿を思い描き、そこに一歩でも近づくための意味のあるトレーニングを重ねることで自己肯定感が生まれ、よりよく生きることにつながります。

――そう思うようになったきっかけは、やはり、ご自身のニュージーランド留学の経験が大きいのでしょうか?

今泉 そうですね。早稲田大学時代にお世話になったグラハム・ヘンリー氏(元オールブラックスHC[ヘッドコーチ])に「おまえは世界を目指せ」という手紙をもらったことがきっかけで、代表選手を多く輩出しているオークランドに留学しましたが、最初は誰も何も教えてくれなかった。

しばらくしてから「僕は日本代表になりたい。もっと上のレベルでやりたい」と言ったら、「それを早く言え。それなら、こういった練習をしろ」と話が進んでいった。ニュージーランドでは自分がどうなりたいかということを主張しないと物事は何も進まなかったんです。

それから練習後に必ずフィードバックをもらう日々が続き、最終的には、当時、オールブラックスに準じる強さを持っていたオークランド州B代表まで上り詰めることになりました。

――その経験がご自身のその後のコーチングやビジネスにも生かされましたか?

今泉 清宮克幸さん(現・日本ラグビー副会長)が早稲田大学ラグビー部の監督をされていた2001年からバックスコーチをさせていただきました。ただ1年目はうまくいかなかった。自分の経験を伝えれば、選手の個性を引き出し、彼らの強みを生かしてもらえると思い込んでいたんです。

それなのに優勝を逃し、当時の4年生が「コーチの期待するプレーができなかった」と謝ってきた。そのときに「単なる自己満足で指導していた」と反省し、選手の成長を促すためには「どうなりたいか聞けばいい」と気づいたんです。

最近は学生向けの講演で話すことも多いですが、「あなたは10年後、15年後どうなっていたいですか?」と聞いています。自分のなりたい姿を考えて、そこに向かっていくうちに自分のやりたいことに気づくこともあります。とにかく理想の自分に向かって、行動を起こすことが大事と伝えています。

――本書で一番伝えたいメッセージはなんですか?

今泉 自信を持てない人、将来に不安を持つ人に読んでほしいですね。まずは自分の強みがなんなのかを知ることから始めましょう。そして自分の強みがわかれば、チームや組織の生産性を高めるために、どのように自分を表現し、そこに貢献できるのか思い描くことができます。また、自分に自信のある人はオールブラックスの成功体験を読めば、きっとその自信の裏づけになると思います。   

オールブラックスのようにほかのチームと違うオンリーワンの存在になり、自分らしさに自信を持って、「俺はこのことだったら誰にも負けない」と言える自分をつくることが大切だと思っていますし、「自信を持って自分をもっと表現してください」ということを僕は本書で一番伝えたかったですね。

――3連覇を目指すオールブラックスの強さの秘訣(ひけつ)は本書を読めばさらにわかりますよね。

今泉 オールブラックスは今大会も強い。優勝候補筆頭だと思っています。ニュージーランドでは一度、ラグビーの人気が低迷した過去があるので、「国民から支持を得よう」「オールブラックスというブランドを世界に広げよう」と常に考えている。そのマインドがある限り、彼らは強い。オールブラックスの選手たちは全員、このチームに入った理由やこのチームで成し遂げるべき目標が明確です。

前回のW杯で日本代表が南アフリカに大金星を挙げたときも目的や目標が明確でした。どのチームも勝ちたいという気持ちがあるのは当たり前。「どう勝つか」が大切で、「なんのためにそれをするのか」という意味づけが必要です。

そうすれば、「なんでこんなきつい練習しなきゃいけないのだろう」と考えることはありません。「自分たちはまだ勝てるレベルにないから、このハードな練習をするんだ」と納得すれば、練習に対するモチベーションも上がるし、効果も違ってきます。

――今大会のオールブラックスの戦いが楽しみです!

今泉 私はニュージーランド代表と日本代表が決勝トーナメントで対戦することを期待していますし、その可能性は大いにあると思っていますよ!

●今泉清(いまいずみ・きよし)
1967年生まれ、大分県出身。現在はパフォーマンス・コンサルタントとして活動し、大分県ラグビー大使も務める。6歳でラグビーを始め、早稲田大学時代は在学4年間で関東大学対抗戦優勝2回、大学選手権優勝2回、日本選手権優勝1回。誰にも予測できないビッグプレーで話題を呼び、日本のラグビー界の人気と発展に大きく貢献した。卒業後はニュージーランド留学を経てサントリーで活躍し、日本代表、7人制日本代表にも選出。現役引退後は母校・早稲田大学ラグビー部のコーチ、またサントリーフーズプレイングコーチに就任するなど、人材育成活動に尽力している

■『オールブラックス 圧倒的勝利のマインドセット』
(学研プラス 1400円+税)
ラグビー世界最強軍団「オールブラックス」はなぜ、こんなにも強いのか――。そこには圧倒的勝利の原則が存在する。本書では、早稲田大学ラグビー部や日本代表選手としても活躍した今泉清氏がオールブラックスの強さの秘密をひもとき、チームマネジメントの観点から解説する。ビジネスとラグビーに共通する原則を知れば、どんな組織も絶対に勝てると著者は語る。ラグビーファンだけでなくビジネスマンが学ぶべき生きる知恵が満載だ!

★『“本”人襲撃!』は毎週火曜日更新!★
serial_shugeki.jpg