1993年生まれの26歳。ジンバブエ人の父と日本人の母の間に南アフリカで生まれ、小学校時代から主に日本で育つ

10月5日にW杯1次リーグ第3戦、強豪サモアとの大一番を迎えるラグビー日本代表。そのなかでも、開幕戦のロシア戦でいきなりハットトリック(3トライ)を決め、勝利の立役者となったウイングの松島幸太朗に注目が集まっている。

ラグビーの母国・イギリスのメディアもこの活躍を称賛。『ガーディアン』紙は「W杯史上初めてハットトリックを決めた日本人選手」と紹介し、『テレグラフ』紙も「ヒーロー松島幸太朗が光っていた」と褒めたたえた。

ロシア戦後、日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は、松島の走りについて「まるでフェラーリが突進してくるようだった」と評していたが、具体的にどこがどうスゴいのか?

スポーツライターの斉藤健仁氏が解説する。

「まず、バネがある。ラグビーは50m走が速くなくてもいいんです。10m走が速ければいい。瞬発力の勝負なんです。そして、ステップがうまくフェイントが鋭いから、相手はうまくタックルにいけない。バネとステップに優れているので、1対1の局面では必ずといっていいほど抜いていきます」

こうした突破力が、前回のW杯イングランド大会からの4年間で成長した点?

「もちろん突破力もこの4年間で成長していますが、それより大きいのはメンタルです。前回大会ではアメリカ戦で1トライを取りましたが、大活躍したというほどではありませんし、本人も『先輩についていくだけ』と消極的でした。

しかし、今回のW杯日本代表では、松島は攻撃時とカウンターのリーダーになっています。リーダーになったことでチームの戦い方を考えなければいけないし、自分のパフォーマンスも落とすことができない。その気持ちが彼を成長させました」

松島は日本のサントリーでプレーすると同時に、前回大会が行なわれた2015年に、国際リーグ・スーパーラグビーに参戦する豪州のワラターズに所属すると、翌16年には同リーグのレベルズに移籍。そして17年から2年間はサンウルブズに加入している。 

ラグビーライターの向 風見也(むかい・ふみや)氏が語る。

「4年前は日本代表でレギュラー争いをする選手でしたが、今は代表の軸となる選手に成長しました。

また、松島選手は海外と国内の両リーグでプレーするというハードスケジュールのなかでも体を鍛えてコンディションを維持してきました」

こうした両リーグで戦ってきた経験が大きかったのだろう。普段からフィジカル、メンタルのケアを怠らなかったからこそ、どんな試合でも実力を発揮できるのだ。

では、世界的に松島の活躍はどう見られているのか?

「ワラターズ、レベルズ、サンウルブズでもそれなりに活躍していたので、ロシア戦の活躍に関していえば、『彼ならハットトリックは取れるよね』という評価だと思います」(斉藤氏)

松島は大会前のインタビューで「しっかり存在感を示して、(W杯後は)ヨーロッパでプレーしてみたい」と語っていた。その夢を叶(かな)えるためにも、強豪サモア戦で再びハットトリックだ!