横浜FCは、三浦知良(右)や中村俊輔(左)、松井大輔らのベテランに、成長した若手選手が融合。助っ人頼みのサッカーから脱却した攻撃サッカーで上位に躍進した

大混戦模様でスタートした今季のJ2も、11月24日の最終節に向けていよいよ佳境を迎える。しかし全体の約8割の試合数を消化した段階においても、J1自動昇格圏内の2位争いと、プレーオフ圏内の6位以上の争いは大接戦。試合ごとに激しく順位が入れ替わる状況が続いている。

そんななか、混戦から一歩抜け出し、第34節時点で首位に立っているのは、昇格候補筆頭と目されている柏レイソルだ。今季の柏はシーズン序盤こそメンバーとシステムが定まらずに不安定な戦いを見せていたが、第19節から破竹の11連勝を記録。システムを4-4-2に固定するようになってから成績も安定した。

特に目立っているのが、昨夏に加入したケニア人ストライカーのマイケル・オルンガだ。夏に加入した昨季は3得点に終わったが、今季は抜群の身体能力を生かして16得点をマークするなど大ブレイク。クリスティアーノや江坂 任(あたる)を上回る得点源が生まれことで、チームは勢いを増した。

指揮を執るのが百戦錬磨のネルシーニョ監督であることを考えても、現時点で最もJ1昇格に近いチームと見て間違いないだろう。

一方、その柏から一歩離れたところでデッドヒートを繰り広げているのが、わずか勝ち点3ポイント差のなかでひしめき合う2位大宮アルディージャから6位水戸ホーリーホックまでの順位争いだ。

特に自動昇格圏内の2位争いは熾烈(しれつ)を極めており、これこそがJ2終盤戦の最大の見どころになっている。

そのなかで注目すべきは、6月22日の第19節から16戦無敗と好調をキープしている横浜FCだろう。今季は5月12日に成績不振でエジソン・アラウージョ・タヴァレス監督が解任されるなど苦しい序盤戦を過ごしたものの、早い時期での英断が分岐点となり、下平隆宏ヘッドコーチが監督に昇格したことで完全にチームは生まれ変わった。

タヴァレス時代はストライカーのイバと司令塔レアンドロ・ドミンゲスという助っ人に攻撃を託し、ほかの選手が汗をかいて守備をするというサッカーを貫いてきたが、下平新監督はそのスタイルを抜本的に改革。4-2-3-1を基本にふたりだけに頼らない全員サッカーを構築し、遅攻と速攻を使い分ける攻撃型のチームを完成させた。

そのなかで台頭したのが、抜群のスピードを誇る中山克広と松尾佑介の若手両ウイングだった。これによりチームに不足していたサイド攻撃が厚みを増し、CFイバとトップ下レアンドロ・ドミンゲスが相手の集中マークから解放されたことで、チーム全体として攻撃力がアップ。今年のU-20W杯にも出場した18歳の斉藤光毅がスーパーサブに回るほどの充実ぶりだ。

また、ボランチにベテラン松井大輔をコンバートしたのも大ヒットだった。ボールを収め、四方八方に正確なパスを供給できる松井がボランチに入ったことで、攻撃のバリエーションが増え、同時に本来CBの田代真一を松井と組ませたことで守備も安定した。

夏にはベテランの中村俊輔をジュビロ磐田から獲得し、セットプレーという大きな武器も手にした横浜FCは、現段階で自動昇格有力候補といえる。

就任1年目の高木琢也監督の下、さまざまな状況に対応できるようになった大宮アルディージャ。昨季は5位に終わり、J1参入プレーオフでも敗れた悔しさを晴らしたい

シーズン途中のチーム改革によって成績を上げた横浜FCとは対照的に、就任1年目の高木琢也監督がじっくりチームを成長させているのが大宮アルディージャだ。

戦術家としても知られる高木監督は、今季から大宮伝統の4バックを3バックに変更。相手のよさを消しながら、あるときは攻撃的に、あるときは堅守速攻に活路を見いだすという柔軟なサッカーを実践。序盤は取りこぼしが目立っていたが、第5節からは16戦無敗の快進撃を続け、以降は上位をキープしている。

チームの強みになっているのは強固な守備だ。3失点以上を喫する試合が少なく、基本的には堅守をベースに少ないチャンスをものにして勝つのが得意。河面旺成(かわづら・あきなり)、菊地光将、畑尾大翔の3バックが息の合ったコンビネーションを見せれば、石川俊輝、大山啓輔らボランチのハードワークも際立ち、彼らがチームのバックボーンとなっている。

そんななかで貴重な得点源になっているのが、ファンマ、ロビン・シモヴィッチの助っ人ストライカーだ。高木監督はふたりの併用を避けながら巧みに使い分け、結果を残すことに成功している。ベンチにはダヴィッド・バブンスキー、大前元紀らが控えるなど、戦力的には柏と並ぶレベルにあるだけに、横浜FCと並ぶJ1昇格候補と見ていいだろう。

初のJ1昇格を目指す水戸。7月にジュビロから期限付き移籍した小川航基が、移籍後8試合で5得点を記録するなど、堅い守備に得点力を加えて終盤戦に挑む

ダークホースとして注目したいのが、開幕ダッシュに成功した水戸ホーリーホックである。第18節に首位から陥落したものの、そのまま沈むことなく上位をキープしている点は立派のひと言。昨年9月に初めてJ1クラブライセンスを交付されたことをモチベーションに、虎視眈々(こしたんたん)と昇格の椅子を狙っている。

チーム最大の強みは、柏に次ぐ少ない失点数を誇る守備力だ。就任2年目の長谷部茂利監督が磨き上げた4-4-2のゾーンディフェンスは難攻不落で、選手全員がハードワークすることで粘り強い守備を成立させている。

逆に課題とされるのが決定力だが、これについては夏の移籍期間にジュビロでくすぶっていたFW小川航基を獲得。黒川淳史と清水慎太郎の2トップに即戦力を加えたことからも、J1昇格への強い意欲が伝わってくる。

この3チームに、モンテディオ山形と京都サンガF.C.を加えた5チームによる2位争いは、最後の最後まで目が離せそうにない。