開幕スタメンに向け、プレシーズン戦で十分にアピールができたウィザーズの八村。遠征でチームメイトに買い出しを行なう、ルーキー恒例の「雑用」もこなしつつ、存在感を高めている

「来年にオリンピックが東京であり、僕らも行くと決まっている。そんななか、NBAで3人の日本人選手がプレーするというのは、日本バスケ界にとって大きいことじゃないかなと思います」

現地時間9月30日、ワシントンで行なわれたメディアデーで、八村 塁が残した言葉に思わず頷(うなず)いたバスケットボールファンは多いだろう。

今秋、3人の日本人選手が世界最高峰のバスケットボールリーグ、NBAに挑んでいる。"日本バスケの黄金世代"の選手たちが、それぞれの形で夢舞台に足跡を残そうとしているのだ。

その"真打ち"と呼べるのが、今年度のドラフトでワシントン・ウィザーズから全体9位で指名された、八村であることは言うまでもない。日本人として前人未到の「ドラフト1巡目指名」という快挙を成し遂げた"怪物"の一挙一動に、今季は注目が集まり続けることになるだろう。

7月に開催されたサマーリーグでは、3試合で平均19.3得点、7リバウンドという好成績を叩き出し、プレシーズンゲーム(オープン戦)でも順調に実績を積み重ねている。

10月7日のニューヨーク・ニックス戦では約21分で12得点を挙げ、続く9日の広州ロングライオンズ(中国)戦でも、前半だけの出場ながら11得点、7リバウンドをマーク。さらに13日のミルウォーキー・バックス戦では10得点、12リバウンドと自己初のダブルダブルを記録した。

ディフェンス、パスワーク、スクリーンなど、数字に残らない貢献を果たしているのも大きい。サマーリーグの時点では、ほとんどボールに絡まない"消えている時間帯"も少なくなかったが、今ではさまざまな形で存在感を誇示できるようになった。

「NBAのプレーのペースに慣れてきている。正直、サマーリーグでプレーしたときとは違う。(FIBA)W杯も戦い、自分の自信も増している」

10月9日の試合後にそう述べたとおり、中国でのW杯、ウィザーズでのトレーニングキャンプなどハイレベルな舞台で経験を積み、自信がついたのだろう。キャンプ中の集中した練習のおかげでウィザーズの戦術にも慣れ、今ではより快適にプレーしている印象がある。

今後の注目は、10月23日にダラスで開催される開幕戦に、八村がスタメン起用されるかどうか。プレシーズン最初の3戦では先発し、周囲を納得させる結果を出した。チームの周囲でも、当初は「じっくりと時間をかけて育てるべき」という声が多かったが、駒不足のチーム内でそんな見方も変わり始めている。

再建中のウィザーズの期待を担う21歳は、いきなりスターターとして大舞台に立つのか。プロでも通用するフィジカルとスキルだけでなく、聡明さも示してきただけに、その可能性はかなり高そうだ。

プレシーズン戦で出場機会に恵まれなかった、グリズリーズの渡邊。本人も「焦りはある」としながら、時間をかけてシュート練習を行なうなど、準備に余念はない

一方、メンフィス・グリズリーズの2ウェイ契約選手として2年目を迎える渡邊雄太にとって、契約最終年の今季は勝負のシーズンになる。

昨季は日本人史上2人目のNBAプレーヤーとして15戦に出場。今夏のサマーリーグでも4試合で平均14.8得点、7.3リバウンド、1.5アシストを残し、さらに成長した姿を見せつけた。日本代表のリーダーとしてもチームを引っ張るなど、25歳になったオールラウンダーは全盛期を迎えている。

ただ、プレシーズン戦では最初の2試合でプレー時間が10分以下と、なかなか出場機会に恵まれていない。チーム側に主導権がある2ウェイ契約のシステム上、出番が後回しにされるのは仕方ない。そんななかでやるべきことは、とにかく腕を磨き、いずれ訪れるチャンスを確実につかむことだ。

具体的には、昨季苦しんだ3ポイントシュートの精度を上げ、下部リーグ(Gリーグ)だけでなく、NBAのゲームでも決めること。待望の本契約への昇格の可能性も、そこ次第だろう。アメリカでのキャリアを左右するシーズンで、開幕後も決して息の抜けない日々が続くことは間違いない。

マーベリックス傘下で下部Gリーグのチーム、レジェンズに同行することが決まった馬場。プレシーズン戦での経験を生かし、さらなる成長を見せたいところだ

さらに、ダラス・マーベリックスと「エキシビット10契約」を結んだ馬場雄大は、10月11日にGリーグのレジェンズ行きが決まった。プレシーズンは3戦に出場し、平均7.5分をプレーして2.3得点。結果的には"降格"となった形だが、マーベリックスのロースター枠は埋まっていただけに、こうなることは予定どおりではあった。

今後は11月8日から始まるGリーグでのプレーが目標。エキシビット10契約のシステム上、Gリーグに60日間連続で所属すれば、5000ドル(約54万円)から5万ドル(約541万円)のボーナスを手にできる。こうした金銭的恩恵を受けながら、馬場はアメリカの舞台で本格的に腕を磨いていくことになる。

日本でプレーしていた馬場は、アメリカでの知名度はないに等しかったが、今夏にプレーしたサマーリーグで存在感を誇示したことが今回の契約につながった。持ち前のバネ、突破力、思い切りのよさを生かしたプレーはさらなる伸びしろを感じさせる。

「しばらくはGリーグで経験を積まなければいけないが、例えばマーベリックスがプレーオフを逃すことが確実になった場合、馬場にNBAでプレー時間を与えることも考えられる」

ある関係者がそう述べていたとおり、チーム状況次第では来年の3月、4月あたりに"夢舞台への昇格"の可能性もある。そのときに備え、まずはGリーグのサバイバルレースの中でアメリカの水に慣れておきたいところだ。