ラグビーから、日本のサッカー界が学べることについて語った宮澤ミシェル氏 ラグビーから、日本のサッカー界が学べることについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第120回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、ラグビーついて。日本代表の躍進などで、大きな盛り上がりを見せているラグビーW杯。宮澤ミシェルは、そんなラグビーW杯の試合を見ていて、「サッカーにも生かせることがあるのでは?」と感じたと語る。

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すごい熱量で日本中を巻き込んだね。どこに行ってもラグビー日本代表の話題に溢れていたよ。

日本中がラグビーで盛り上がったのを見て、サッカーに携わる人間としては、うらやましく思ったし、こっちも負けてられないっていう気持ちになったよ。

フランスはラグビーが国技だし、うちの親父はフランス人だったから、子どもの頃からラグビーは身近にあったんだ。そのフランスも今回はベスト8まで勝ち上がった。きっと親父が生きていたら、国内でのラグビーの盛り上がりとか、フランス代表と日本代表の躍進を見たら、ハチャメチャになって喜んだろうなって思うよ。

僕自身のラグビーとの関わりは、現役を終えてからしばらく、よく松尾雄治さんとご飯に行ったり、飲みに行ったりしていたんだよね。彼のやっていたラジオ番組にも何度も呼ばれたりしてさ。家に遊びに行ったこともあったんだ。最近はなかなか会う機会がないんだけど、今回のラグビー日本代表の活躍に、すごく喜んでいる姿が目に浮かぶよ。

それにしても、ラグビーW杯を見ていて感心したのが、審判の毅然とした振る舞い。反則を犯した後は、しっかりと両チームのキャプテンを呼んで判定基準を話すでしょ。プレーが継続しているときでも、声を出しながら両チームが反則をしないようにコントロールする。

審判はマイクをつけているから、テレビを見ていると音声が聞こえてくるのも面白いよね。

あれはサッカーにも取り入れたらと思うよ。ラグビーの場合は審判としっかり会話してコミュニケーションを取る。だけどサッカーの場合は、選手がその日の判定基準をつかむのは、キックオフして審判が吹いたファウルを見て、選手各々の判断になっている。

やっぱりレフェリーとちゃんと会話した方が、誤解は少ないよな。それにマイクが付いていたら、判定が出た後に選手が審判に、時には審判が選手へ吐く暴言も減るんじゃないかって思うんだ。

まあ、ラグビーはスクラムのときは選手のほとんどが審判のすぐそばにいるから会話をしやすいけど、サッカーの場合はセットプレーになってもボールの周りに選手が集まることがない。キッカーが2、3人いる程度だからね。そういう課題はあるけれど、それでもキャプテンを呼んで、判定基準を話すことで、試合が引き締まる可能性は高まるはずだよ。

それと、ラグビー日本代表選手たちの体格を見て思ったのは、サッカー日本代表を目指す選手たちも、体をもっと大きくしてもいいんじゃないかってこと。日本のサッカー界には「体を大きくすると走れなくなる」という考えが根深くある。

だけど、ウイングで活躍した福岡堅樹はあんなに体を鍛えているのに、ものすごく走るのが速い。自分よりも大きな男もタックルで倒すくらいのパワーもあった。サッカー選手も鍛えているけれど、彼と比べたらヒョロヒョロに見えちゃう。

もちろん、ラグビーのフォワード陣くらい体を大きくしちゃうと、サッカーでは俊敏性も必要だから厳しい。でも、福岡くらいの大きさに鍛えるのはアリ。センターバックの選手はゴール前のポジション取りは肉弾戦になるのだから、世界の強豪と渡り合うために福岡くらいのレベルにまで上半身を鍛えた方がいいと思うな。

一気に鍛えて重くなると動けなくなる危険性もあるから、何年もかけて少しずつパワーアップする必要はあるけれど、そういう体つきがスタンダードになれば、ゴール前でのフィジカルに弱いという日本選手の課題も少しは解消されるはずだよ。

ラグビーとサッカーのどちらが上とか下とかではなく、お互いの良いところを参考にしながら、両方のスポーツの日本代表がもっともっと強くなっていけるといいよな。次のW杯は2022年にサッカーW杯があって、2023年にラグビーW杯がある。その舞台でサッカーも、ラグビーも、過去最高成績を残せるように、これからもしっかり応援していきましょうよ!

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