Jリーグの優勝争いが佳境を迎えている。残り5節で鹿島とFC東京が勝ち点56で並び、勝ち点1差で横浜Fマが続く三つどもえの展開。ここまでの接戦は珍しい。
この3強のなかで僕が気になるのは、得失点差で首位に立つ鹿島。移籍や故障が相次ぎ、苦しい台所事情が続いているにもかかわらず、よくこの位置にいるなと驚くよ。
開幕前に昌子、西が移籍し、小笠原が引退。今夏には安西、安部、鈴木が立て続けに海を渡った。そして夏以降、主力のレオ・シルバ、三竿、セルジーニョ、犬飼が故障離脱。大岩監督が気の毒だし、普通なら成績低迷となってもおかしくない。実際、最近の鹿島の試合内容は良くなく、特に点が取れなくて苦しんでいる。
それでも首位にいるのは、チームのベースが守備にあって、メンバーが代わってもしっかり守るサッカーができるから。圧勝できなくても、我慢して守って、勝ち点1でもこつこつ積み上げる。そうした勝つ伝統、タイトルを獲(と)るノウハウが若手にも浸透している。これは本当に素晴らしいことだ。
以前、鹿島の選手と話をしたときに、「(都会のチームと違って鹿嶋市には)何もないから、僕らは一年中合宿しているようなもの。だからサッカーに集中できる」と笑っていたけど、今季から主将を務める内田らのベテラン、OBのコーチやスタッフが、ジーコ以来の伝統を受け継ぎ、常にチームを引き締めている。そうした環境面の影響は大きいと感じる。
ただ、そうはいっても今はチーム事情が本当に苦しく、優勝に向けて盤石とはいえない。本来、攻撃を牽引(けんいん)すべきレオ・シルバとセルジーニョが故障からいつ復帰できるのか。また、それまでに上田、伊藤、土居らの攻撃陣がどれだけ奮起できるか。そのあたりがカギを握りそうだ。
その鹿島と勝ち点で並ぶFC東京は今季、開幕ダッシュを決めてずっと首位をキープしてきた。ところが夏以降、徐々に勝ち点差を詰められ、28節でついに首位陥落。そのままズルズルいくかと思ったけど、29節の神戸戦で快勝して、鹿島に追いついた。
ラグビーW杯でホームの味スタが使えずに強いられたアウェー8連戦も残り2試合。ホームで戦えるようになれば、精神的にも落ち着く。優勝未経験チームの頑張りは新鮮だし、メンバー的にもライバルに見劣りしない。まだまだチャンスはあるだろう。
3位の横浜Fマは若手と外国人が噛み合い、尻上がりに調子を上げてきた。ここ6試合は5勝1分けと勢いに乗っている。
なかでも仲川のプレーには目を見張るものがある。スピードはもちろん、技術も決定力もある。左右両足で正確なボールを蹴れる。得点もアシストも多く、結果を出すことでどんどん自信をつけている。今や横浜Fマにとって特別な選手になった。先日の日本代表のW杯予選に選ばれなかったのが不思議なくらいだね。
ただ、その仲川は29節の湘南戦の後半に負傷退場。大したことがなければいいけど、ケガの程度が気になる。
最終節には横浜FマとFC東京の直接対決がある。3チームともそこまで負けなしでいって、ラグビーも面白かったけどサッカーも最後まで面白いですよと、Jリーグを大いに盛り上げてほしいね。