川崎がシュート本数で札幌を圧倒していたし、内容でも上回っていたと語るセルジオ越後氏

結論から言うと、スリルがあって面白かったね。ナイスゲームだ。

今季のルヴァン杯決勝は共に初優勝を目指す川崎と札幌の対戦となった。試合は立ち上がりから札幌が積極的にプレスをかけ、いい形で先制したものの、その後は川崎がペースを握る。

そして前半のうちに同点に追いつくと、後半途中から(中村)憲剛、小林を投入し、ついに後半43分に逆転。これで誰もが川崎の優勝だと思ったはず。少なくとも僕はそう思った。でも、札幌は諦めず、アディショナルタイムにCKから同点に追いついた。

延長戦も見応え満点。札幌のチャナティップの突破を川崎の谷口がファウルで止めて一発退場となると、このチャンスに福森が見事なFKを決め札幌が再びリード。これはしびれたね。でも、10人になった川崎も意地を見せ、小林のゴールで追いついた。結局、最後はPK戦までもつれこみ、川崎が初優勝を飾った。

お互いに最後の最後まで諦めなかったし、サッカーをあまり知らない人でも存分に楽しめる、白熱した試合だったね。札幌の頑張りが試合を面白くしてくれたと思う。

ただ、冷静に試合を分析すれば、川崎がシュート本数で札幌を圧倒していたし、内容でも上回っていたかな。

勝敗を分けたのは札幌の守備。前半10分に先制した後、引いて守ってカウンターを狙うサッカーに切り替えてしまった。川崎の攻撃力を考えれば、あの時間帯から守りに入っても逃げ切れるとは思えない。何回かいい形のカウンター攻撃を見せたけど、それ以上に川崎に決定機を作られた。

また、延長に入ってリードを奪った後も引いて守りに入ったけど、川崎は退場者を出して10人になっていた。相手の攻撃を最終ラインで受けるのではなく、思い切ってラインを上げて中盤で勝負していれば逃げ切れたかもしれない。ひとり少ない相手に11人対11人の試合をしてしまった。川崎をリスペクトしすぎたね。

Jリーグ連覇はもちろんのこと、ルヴァン杯も5度目の決勝進出の川崎と、初めて決勝に進出した札幌、その経験の差が出たと思う。

また、選手層にも差があった。川崎は憲剛、小林をベンチに置く余裕があった。逆に札幌はキャプテンの宮澤が故障で欠場。その穴を埋めきれなかった。もし彼がボランチにいれば、あそこまで引かなくてすんだだろうし、もっとボールをキープできていたはず。

ただ、負けたとはいえ、札幌の頑張りは素晴らしかった。菅、進藤らの若手が順調に育って、ク・ソンユンといういいGKもいる。ここ数年はリーグ戦でも力を発揮しているし、もう少し選手層が厚くなれば、今度こそ初タイトルが見えてくる。

最後に、僕が選ぶMVPは川崎の家長。もちろん、PKを2本止めた新井、途中出場で2点を決めた小林もよかった。でも、僕が家長を推すのは、チームの中心として120分間プレーしたから。

憲剛と小林が入ってくるまでは彼が完全にゲームを作っていたし、試合を通して何度も決定的な場面を演出した。レアンドロ・ダミアン、阿部、脇坂がちゃんと決めていれば、試合は90分で終わり、家長がMVPに選ばれていたはず。守備でも体を張っていたし、菅とのマッチアップでも完全に勝っていた。さすがは昨季のJリーグMVPというプレーだったよ。

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