J1昇格クラブについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第127回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマはJ1昇格クラブについて。J1参入プレーオフも終わり、幕を閉じた今年のJリーグ。そんな中、来季からのJ1昇格を決めたチームを宮澤ミシェルが総括。昇格チームの今季の印象と来季について語った。

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最後はJ1リーグを戦ってきた意地を見せたね。湘南ベルマーレがJ1参入プレーオフで徳島ヴォルティスと1対1の引き分けに持ち込み、来シーズンのJ1残留を決めた。

湘南はJ1最終節で松本山雅に1-0とリードしながら、最後の最後に同点弾を決められて16位。この試合でも徳島に先制点を奪われた。流れとしてはJ2降格になっていても不思議ではなかったからね。

今シーズンはパワハラ問題などがあって夏場以降は苦しんだ。もしJ2降格になっていたらチーム再建に時間がかかる状況に追い込まれていたと思う。それだけに土俵際で踏ん張ったこの戦いを、来季以降のクラブ運営とチームづくりにいかしてもらいたいね。

徳島は6年ぶりにJ1リーグに王手をかけたけれど、あと一歩のところで惜しかった。今年はJ2リーグで4位。ラスト15試合で11勝3分け1敗の成績は立派だし、プレーオフでも2勝した。人件費は10億円に満たないクラブながらも、夢を見せてくれたよ。

来年もロドリゲス体制は継続するから、自動昇格の2位以内を目指してもらいたい。やっぱり四国のクラブにも1チームくらいはJ1リーグを戦ってほしいからね。期待しているんだ。

これで来季のJリーグは、ジュビロ磐田と松本山雅がJ2リーグに降格して、J2リーグで優勝した柏レイソルと2位の横浜FCが昇格する。

なんといってもカズ(三浦知良)だよな。13年ぶりのJ1リーグ。来年2月26日の誕生日で53歳だぜ。J1の最年長出場記録は、ゴン(中山雅史)がつくった45歳2ヶ月1日。カズは出場した瞬間に記録更新だからね。J1での最年長得点記録であるジーコの41歳3ヶ月12日も、塗り替えてくれるのを期待しているよ。

来季は神奈川県勢が4クラブもJ1リーグを戦う。J1優勝の横浜F.マリノス、4位の川崎フロンターレ、残留を決めた湘南ベルマーレと昇格する横浜FC。なかでも注目なのは、横浜F.マリノスと横浜FCの横浜ダービーだよな。

若い人たちは知らないかもしれないが、Jリーグ発足時には横浜フリューゲルスというクラブがあったんだけど、経営難で1998年にチームは消滅。横浜マリノスが吸収合併して、チーム名はいまの横浜F.マリノスになった。だから、『F』の文字はフリューゲルスを表しているんだ。

横浜FCはそのフリューゲルスサポーターたちが立ち上げたクラブで、2001年にJFLからJリーグに承認された。2007年シーズンにはJ1リーグに昇格したけれど、4勝4分26敗の18位で1シーズン限りで降格になった。来年は残留を目指すためにも、まず最初は前回J1時代の4勝、勝ち点16を上回るところを目標にしてもらいたいと思うよ。

最後は我が千葉県についても触れないとね。柏レイソルがJ2で優勝して1シーズンでJ1リーグ復帰を決めた。戦力的にはJ1時代と遜色ないメンバーが揃っていたとはいえ、それでも過去には昇格を逃したクラブもあったからね。よくぞJ1に戻ってくれた。

やっぱり千葉県にJ1チームがいないのは寂しいし、息子がユース時代からお世話になったクラブだからね。来シーズンの反撃を楽しみにしているんだ。

一方、今年もまた残念なシーズンになったのが古巣だよな。ジェフユナイテッド市原・千葉は42試合で10勝13分け19敗で、22チーム中17位。J3降格をなんとか逃れるような惨憺たるシーズンだった。愛想がつきそうだけど、それでも古巣だからね。

来季はユン・ジョンファンが監督就任するから、どう立て直してくれるかを期待しているんだ。彼がサガン鳥栖の監督時代には何度も取材に行ったけど、情熱的で厳しさのある監督だからね。落ちるところまで落ちたクラブをガツンと目覚めさせてもらいたいよ。

J1リーグは今季、総入場者数が史上最多の1140万1649人を記録し、1試合平均の入場者数は創設27年目で初めて2万人の大台を超えた。攻撃的なサッカーを志向するチームが増えて、ゴールも多く決まるようになったのも影響したんだろうね。

そのJリーグはシーズンが終わったけれど、国内サッカーはまだ天皇杯があるからね。12月21日(土)にヴィッセル神戸対清水エスパルス、鹿島アントラーズ対V・ファーレン長崎の準決勝が行なわれる。

今季はJ2で12位に終わった長崎が、天皇杯で勝ち上がってきたけれど、これこそサッカーの醍醐味だよな。鹿島相手にジャイアントキリングを起こせるかは見ものだよ。元旦には天皇杯決勝もある。年の瀬は収束感があるけれど、サッカー熱だけはもっともっと高めていきましょう!

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