カズについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第132回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、今シーズン開幕からJ1リーグに帰還するカズこと三浦知良について。52歳にして現役でプレーを続けるカズには、宮澤ミシェルも「本当に頭が下がる」という。

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いよいよ国内サッカーのシーズンが始まる。レギュラーシーズンが終わったのは昨年12月上旬。そこから2ヶ月しか経ってないのに、ずいぶん間隔が開いた気がするよ。

天皇杯を準決勝、決勝まで戦ったクラブにとっては、シーズンオフが短くて大変ではあるんだけれど、我々サッカーファンからすれば、待ちに待った新シーズン到来だからね。

今年は開幕前恒例の『FUJI XEROX スーパーカップ』が2月8日(土)にあって、2月16日(日)からルヴァンカップのグループステージが行なわれる。

そして、2月21日(金)の湘南ベルマーレ対浦和レッズの一戦で幕を開けるJ1リーグは、全34節・合計306試合という長いシーズンが始まる。開幕前は長丁場だし、試合数も多いと感じるのに、毎年のようにシーズン終盤になると「もう終わっちゃうの」となる。現金なものだよな。

2019年シーズンは史上最多の総入場者数1140万1649人を記録したけど、今年はそれを超える人たちにスタジアムでJリーグを楽しんでもらいたい。

優勝争いはもちろんだけど、今シーズンの注目はなんといってもカズ(三浦知良)じゃないか。

例年通り背番号11にちなんで、今年も1月1日11時11分11秒に契約を更新。横浜FCは13年ぶりにJ1リーグであるとともに、カズにとってもヴィッセル神戸在籍時の2005年以来となる13年ぶりのJ1リーグへの帰還だからね。

今年の2月26日の誕生日で53歳。学年では僕の4学年下なのに、いまだに現役を続けている。本当に頭が下がるばかりだよ。

なにがすごいって故障が少ないことだよな。僕は30歳になる前から膝が悪くて、満足にプレーするのもシンドくて、32歳のシーズンで引退した。僕に限らず、一般的にサッカー選手は30歳くらいになると体にガタが出る。それをごまかしながらプレーしていることが多いんだ。

カズも公言しないだけで、本当はあちこちに痛い箇所を抱えているのかもしれないけど、いまでも肉体を維持しているように見える。トレーニング理論や器機などが大幅に進化しているとはいえ、それでも想像を超えたところにいるよ。生活のすべてをサッカーに捧げていないと出来ないことだよな。

カズは昨季までのJ2で最年長記録を次々と更新してきたけど、今季はJ1で出場するたびに新記録樹立となる。それだけに、常に話題はカズに集まるだろうな。

これまでのJ1の最年長出場記録は、中山雅史がジュビロ磐田時代に記録した42歳2カ月5日。これを10歳以上も塗り替えるんだから、それも当然のこと。

ただ、世界は広いよ。昨年4月にイスラエル4部リーグで73歳のGKがフル出場して、それがギネス記録に認定された。GKとフィールドプレイヤーの年齢を比べるのは難しい部分はあるけれど、ウルグアイのロベルト・カルモナという選手は、1962年生まれでポジションはMF。いまも続けているのかわからないけど、56歳だった2018年はスペイン5部リーグでプレーしていたよ。

とはいえ、これらは下位リーグでの現役継続だからね。トップリーグで50歳でもプレーした選手となると、知っているのは初代バロンドールを獲得したスタンリー・マシューズだけだな。

1915年生まれで、2000年に85歳で亡くなったイングランドのレジェンドは、50歳でトップリーグでプレーした。これだけでも凄いけど、もっと偉大なのが、33年間の現役生活で一度もイエローカードをもらわなかったこと。にわかに信じられないくらい凄いよ。

カズ自身は年齢の記録更新などには興味ないタイプだよ。彼は記録のために現役をやっているわけではなくて、国内最高峰リーグの高いレベルのなかでサッカーを楽しみたいだけだと思う。

まあ、カズがいることで、横浜FCの話題が全部、カズの年齢に向いちゃうのもどうかと思うけど、やっぱりカズは唯一無二の存在だから、それも仕方のないことでもあるんだよな。

ここまで現役を続けると、個人的に気になるのは辞め時が難しそうだなってこと。どんな状況で引退を決断するのか気になるけれど、それはカズが決めることだし、ここからシーズンが始まるっていう時に触れることじゃなかったね。

横浜FCにとってはJ1リーグを戦うのはクラブ発足2度目。Jリーグ創設時から数々のタイトルを獲得してきたカズは、ピッチに立つだけでアウェーだろうとスタジアムの空気を一変できる力を持っている。これはチームにとっては大きな助けになると思うよ。

昨年にJ1昇格を決めたときには、カズは「イニエスタの股を抜きたい」と語っていたけれど、それが開幕カードから見られるかもしれないっていうんだから、Jリーグの対戦カードの組み合わせのなんと絶妙なことか。

2月23日(日)にヴィッセル神戸vs横浜FCが組まれたけれど、ノエビアスタジアム神戸はカズにとって古巣でもあるからね。どんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだよ。

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