神奈川県勢とFC今治について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第133回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、J1の神奈川県勢とJ3に参入するFC今治について。いよいよ2月に開幕するJリーグの新シーズン。宮澤ミシェルが注目しているという「神奈川県勢」と「FC今治」について語った。

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今シーズンのJ1は、18チームのうち神奈川県内にホームタウンがあるクラブが4つある。

Jリーグ発足時から加盟するオリジナル10で、昨季優勝した横浜F.マリノス。2017年から2年連続王者になった川崎フロンターレ。昨季の昇格プレーオフで首の皮一枚つなげた湘南ベルマーレ。この3クラブに加えて、今季からは13年ぶりに昇格してきた横浜FC。

神奈川県勢は、この世の春を謳歌していると言っていいだろうね。

この4クラブのほかに、神奈川県内にホームタウンを置くJクラブは、今季はJ3を戦うY.S.C.C横浜とSC相模原もある。もしすべての神奈川勢がJ1に昇格することになったら、J1の1/3は神奈川県勢ってことになる。

大きな話題になるだろうけど、日本サッカー全体の視点に立って考えると、そんな事態はゾッとしちゃうよ(笑)。

まあ、それが現実になるのは相当ハードルが高いけれど、同じ県内にライバルクラブがあるのはシーズンを戦う上では大きなメリットになるのは間違いないよ。

J1の神奈川勢4クラブなら、各クラブともシーズン34試合のうちの6試合は、同じ県内での移動で済むわけ。さらに言えば、首都圏にホームタウンがあるFC東京、浦和レッズ、柏レイソルへの移動だって、神奈川からの距離は札幌からのそれに比べれば、たかが知れている。

これが地方のクラブとなるとそうはいかない。たとえばコンサドーレ札幌なら、リーグ戦のアウェイゲームは常に長距離移動。移動距離の一番近い仙台でさえも500キロ以上も離れている。シーズンを通してみたら、肉体疲労の面でのハンディは少なからずあるよな。

もちろん、サッカーは移動距離や移動時間で争うものではないけれど、長いシーズンを考えたら、移動による肉体疲労は小さく済むクラブが有利なのは間違いない。

それだけに地方クラブを応援したくなっちゃう気持ちもあるんだ。そのなかで、今シーズンは56番目のJクラブの動向にも注目していきたいと思っているんだ。

「Jリーグに56クラブもあるの!」と驚く人もいるかもしれないけど、J1に18クラブ、J2に22クラブあって、その下に位置するJ3には16クラブが所属している。

J3のリーグ戦は、その16クラブと、FC東京、G大阪、C大阪の各U-23の3チームをあわせた19チームで争われるんだけど、このJ3に今年から新たに加わったのが、56番目のJクラブとして愛媛県今治市にホームタウンを置くFC今治。

クラブオーナーが元日本代表監督の岡田武史さんと言った方が、ピンとくる人は多いのかもしれないね。

岡田さんがFC今治の経営に参加して5年目でのJリーグ昇格。ピッチのなかでの新たな取り組みはもちろんだけど、地方クラブだからこそ抱えるピッチ外での多くの課題に取り組みながら、着実に成果を遂げてきた。

FC今治が最短でJ1入りできるのは、成績だけではなくて他の条件をすべてクリアしたとしても2年後。J1昇格への道のりは甘くないけれど、ひょっとするとと期待したくなるよな。だって岡田さんの率いるクラブだからね。

まあ、その前にまずは愛媛FCとの愛媛ダービーを早く実現できるように頑張ってもらいたい。

このFC今治のほかに、四国地方には愛媛県にホームタウンのある愛媛FC(J2)と、徳島県にある徳島ヴォルテス(J2)と、香川県にあるカマタマーレ讃岐(J3)がある。ただ何が寂しいって、1クラブもJ1にいないことだよな。

徳島が昨シーズンの昇格プレーオフで、J1昇格まであと一歩まで迫ったのは、本当に惜しかった。ルールに泣いたけれど、仕切り直しの今シーズンこそ、プレーオフではなくて自動昇格の2位以内を目指して頑張ってほしいよ。

日本サッカーがもっともっと発展していくためには、やっぱり地方からのサッカー熱がさらに高まっていくのは欠かせないからね。だからこそ、すべての地方クラブには、移動のハンディを乗り越えて、地元の人たちを夢中にさせる試合をしてもらいたいよね。もちろん、僕は今シーズンも彼らの戦いをしっかりと見守って行きますよ。

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