9人連続で失敗したPK戦に「プロとしてさすがにまずいと思う」と語るセルジオ越後氏

内容はかなり大味。でも、両チームの選手がエネルギッシュで、チームとしての個性もしっかり出ていて、新シーズンに向けての意気込みが伝わってきた。地上波の生中継があるなか、得点シーンもたくさんあって、JリーグのいいPRになったんじゃないかな。

Jリーグのシーズン開幕を告げる富士ゼロックススーパー杯は、昨季王者の横浜Fマと天皇杯王者の神戸が対戦。3-3の派手な打ち合いの末にもつれ込んだPK戦を神戸が制した。これで神戸は元日の天皇杯に続いてのタイトル獲得だ。

ただ、内容的には横浜Fマが神戸を圧倒していた。ボールを支配して主導権を握り、チャンスを何度もつくった。

シュート本数は18本対9本。横浜Fマの攻撃はただ速いだけじゃなく、ボランチやサイドバックの選手も積極的にゴール前に顔を出すから迫力がある。たとえ相手が引いて守っても、サイドから外国籍選手や仲川ら個の能力が高い選手が仕掛けて崩してしまう。

この試合では後半から出てきた遠藤もよかったね。エジガル・ジュニオの故障からの復帰も明るい材料だ。

それでも勝てなかったのは、バックラインでのイージーミスからの2失点に尽きる。ボールを大切にしようという意識が強すぎ、パスをつなぐことが手段ではなく目的になっていた。

神戸が前線から強めにプレッシャーをかけてきていたのだから、もっとシンプルにプレーすべきだったね。まあ、そんな王者らしくないプレーも少なくなかったけど、新シーズンに向けて、おおむね期待の持てる内容だったと思う。

一方の神戸は昨季同様に"イニエスタ頼み"という印象。この試合でもイニエスタは別格のプレーを何度も見せた。ドウグラスの先制点をアシストしたスルーパスはさすがとしか言いようがない。

でも、後半に入って彼の運動量が落ちると、チームもトーンダウン。天皇杯の決勝同様、時間がたつにつれ、守る時間が長くなってしまった。延長戦があったら厳しかっただろう。

また、3バックのスピード不足も気になった。3人とも体は大きく前で止めるのは得意だけど重い。横浜Fマのスピードのある攻撃にやりたい放題やられていた。これから神戸と対戦する他チームにとってはいいヒントになったんじゃないかな。

神戸の収穫は、古橋が存在感を増したこと。昨シーズンも素晴らしかったけど、この試合でも好プレーを見せ、ゴールを奪った。

スピードがあって、スタミナもあって、シュートもうまいし、守備もさぼらない。彼がいなかったら、イニエスタはもう10分早くバテると思う。今の神戸にとって欠かせない選手に成長した。日本代表でももっとプレーを見てみたい選手だ。

いずれにしても、神戸は天皇杯から立て続けにタイトルを獲ったものの、アジア・チャンピオンズリーグもあるなか、リーグ戦で上位を狙うには戦力的にまだ物足りない。そのあたりを三木谷会長がどう考えるかだね。

ちなみに、最後のPK戦は両チーム合わせて9人が連続で失敗。独特の緊張感があるにしても、延長戦を戦い抜いての疲れ切った状態でもなかった。だいたいみんな同じように思い切り蹴って、思い切り枠を外していた。

しっかりGKの逆を突いて決めたのはイニエスタくらいじゃないかな。プロとしてさすがにまずいと思う。僕もこんなPK戦は初めて見たよ。

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