やっぱりカズが試合でプレーしてゴールを決める姿を見たいと語るセルジオ越後氏

数年前、カズ(横浜FC)がこう言ってきたことがある。

「セルジオさんに厳しいことを言ってほしいんです。みんな俺にペコペコしてホメるだけだから、自分でも何が足りないのかわからなくなってしまう」

彼のことはJリーグが誕生する前から知っているけど、サッカーが大好きで謙虚で練習熱心。それは50歳を過ぎた今も変わらない。時代や環境が違うとはいえ、20代で早々と現役を引退した僕とは大違い。あの情熱はどこから来るのか、本当に驚くべきことだ。

13年ぶりにJ1でのシーズンを迎えたカズが大きな注目を集めている。開幕前に行なわれたJリーグのキックオフカンファレンスでも、イニエスタ(神戸)との2ショットが各メディアをにぎわせた。東京五輪イヤーということで、他チームからは五輪世代の選手も多く参加していたのに、全部カズが持っていった。さすがキング。やっぱり華があるね。

でも、だからこそ僕はあえて言いたい。プロは試合に出てなんぼだよと。いつも言っていることだけど、これはカズも例外ではない。昨季はJ2でわずか3試合の出場。最後にゴールを決めたのは17年シーズンまでさかのぼる。普通に考えれば、契約を更新できなくても文句を言えない成績だし、もっと結果を出している選手がどんどんクビになっている。

もちろん、横浜FCはカズがチームメイト、ファン、スポンサーなど内外に与える影響力の大きさを含めたトータルでの評価をしているのだろう。その判断も理解できる。ただ、プロとしてどうなのか。僕はやっぱり彼が試合でプレーしてゴールを決める姿を見たい。それでこそキング・カズだと思うからだ。

去年、DAZNのCM撮影で会った際には、その気持ちを込めて彼にこう言ったんだ。「僕もどこかのチームに選手登録して、5分だけでも試合に使ってもらえば最年長出場記録更新だよ」と。カズは「セルジオさんなら認めますよ」と笑ってくれたけど、本人も自分の置かれた厳しい立場をわかっていると思う。

実際、ここ数年は出場機会を確保するのに苦労しているし、年々ケガも増えてきた。当然だよね。そういう年齢なのだから。

また、試合に出れば、カズにやられるわけにはいかないと、相手はいつも以上に激しく当たってくる。そもそもJ1に昇格したばかりで前評判の低いチーム事情を考えれば、今季は試合に出ても、あまり得点チャンスは期待できないだろう。

そういう意味で、今季は彼にとって背水の陣になる。本人もそのつもりかもしれないけど、もし昨季と同じように試合に出られないような状況が続くなら、J2でもJ3でも、それこそJFLでもいいから、試合に出られるチームを探すべきだと思う。

こういうことを言うと、セルジオがまた辛口で文句を言っていると受け取られるかもしれない。でも、それでも僕はそこを求めたい。だって、ベンチにいるカズではなく、プレーしているカズの姿を見たいでしょ。みんなカズダンスを見たいでしょ。

ついでに言えば、ほかの選手もいつまでもカズに話題を持っていかれるようではダメ。プロなのだから遠慮する必要はない。負けずにどんどんアピールしてほしい。そうすることでJリーグが盛り上がるのだから。

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