サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第138回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマはJリーグの開幕節について。いよいよ開幕したJリーグだったが新型コロナウイルスの影響で、今後の試合は中止・延期となってしまったが、熱戦の多かったJ1開幕節を宮澤ミシェルが振り返った。
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やっぱりチームに強力な外国籍ストライカーがいるってのは大きいね。もちろん日本人ストライカーでもいいんだけど、現実問題として日本人選手だと"強力な"と言えるストライカーはなかなかいないんだよな。
J1リーグは開幕節で全9試合で26ゴールが生まれ、このうち12得点は11人の外国人選手が決めたもの。しかもベガルタ仙台のCBシマオ・マテを除けば、それ以外はすべて攻撃的なポジションを任されている外国籍選手が決めているんだよ。
サンフレッチェ広島は1トップのレアンドロ・ペレイラと、シャドーに位置するドウグラス・ヴィエイラがそれぞれ1得点。去年から広島でプレーしていて計算のできる両選手がしっかりと存在感を見せたことも、ダメ押しとなる3点目を森島司が奪えたことにつながった部分はあるよな。
柏のオルンガは圧巻だったね。去年の開幕前にジェフユナイテッド市原・千葉との『ちばぎんカップ』で見たときは、J2リーグと言えども厳しいんじゃないかって見ていたんだよ。それがシーズンが深まっていくなかで、どんどん成長していったんだよね。
J2では通用した。「じゃあ、J1ではどうだ?」って注目していたけど、期待以上のパフォーマンスだった。1トップとしてくさびのボールを奪われないし、味方もしっかり使う判断力がある。スピードも遅そうに見えて実は速いでしょ。高さもあるからね。もう少しパワーが付いたら、J1レベルだと誰も止められなくなるかもしれないね。
柏はオルンガと江坂任が2得点づつを奪って開幕戦に勝利したけど、クリスティアーノもいる。彼の右サイドからの仕掛けは脅威だし、切れ込んでのシュートもあるからね。オルンガとのコンビでシーズンで何得点を決めるかは注目だよ。
浦和レッズのFWレオナルドは、開幕戦で1得点。昨年のJ2得点王になった片鱗は見せたけど、彼のポテンシャルを考えればまだまだ片鱗に過ぎないよ。一昨年のガイナーレ鳥取では31試合で24得点、昨年のアルビレックス新潟では37試合で28得点だからね。浦和のチームにどうフィットできるかがカギだよな。
それにしても浦和は、新潟で活躍した外国籍FWをよく引き抜いていくね。エジミウソン(新潟2004年~2007年/浦和2008年~2011年)、マルシオ・リシャルデス(新潟2007年~2010年/浦和2011年~2014年)、ラファエル・シルバ(新潟2014年~2016年/浦和2017年)。
プロ選手だから資金力のあるチームに評価されたら移籍するのは当然の権利だけど、これだと新潟が若くて才能のある選手を見つけて、プレー経験を積ませたところで、かっさらわれている印象しかないよな。J2で活躍した外国籍選手を横取りするばかりではなく、浦和には少しは自前で選手を見つけられるようになってもらいたいね。
FC東京のブラジルトリオも強烈だったね。ACLとの兼ね合いで後半10分からアダイウトンが投入された途端に攻撃が活性化したもんね。ディエゴ・オリヴェイラのゴールで同点にすると、アダイウトンの得点で逆転して、最後は鹿島から今季加入したレアンドロがとどめの3点目。
昨季はディエゴ・オリベイラひとりだったけど、強烈な外国籍選手が2人も増えて合わせて3人。ここに加えて、東京五輪代表候補の田川亨介が成長してくれて、故障で出遅れている永井謙佑も戻ってくれば、昨年までの課題だった得点力不足は解消されるからね。
横浜F.マリノスの外国籍選手たちも強烈な顔ぶれが揃っているけれど、FC東京の方が守備のリスクは低いから、リーグ制覇に一番近い存在と言ってもいいんじゃないか。
開幕戦は鳥栖と戦ってスコアレスドローに終わった川崎フロンターレにもレアンドロ・ダミアンという強烈なFWがいるんだけど、活かしきれてないよな。惜しいシュートもあったけど、チームとしての戦い方で、彼の特長をもっと活かせるようにならないとキツイな。
どんなに強烈な個を持っていてもチーム戦術にフィットしないと宝の持ち腐れだからね。その点で名古屋グランパスのジョーも、昨季途中から就任したフィッカデンティ監督のもとでどうなるのか気になるところだよ。
新型コロナウイルスの影響でJリーグは、現状では3月15日開催予定までの試合がすべて中止・延期になった。開幕戦が見応えのある試合が多かっただけに残念だけど、いまはJリーグよりも守らなければいけないものがあるということ。
外国籍選手たちのフィジカルは中断期間でもっと高まるだろうし、チームにもフィットするはずだからね。再開されたときの彼らのパフォーマンスを楽しみにして待ちましょう!