Jリーグの若手は遠藤のプレーからたくさん学んでほしいと語るセルジオ越後氏

ただただ立派というしかない。

Jリーグ開幕戦で、G大阪の遠藤が名古屋などで活躍した楢﨑(2018年限りで現役引退)に並ぶJ1最多出場記録631試合に並んだ。しかも、連続開幕スタメンも最多の21に更新。90分フル出場を果たし、チームの勝利に貢献した。

J2、J3、さらにはJFLとカテゴリーを下げれば、年齢を重ねても試合に出続けられる可能性はある。でも、遠藤は横浜フリューゲルス、京都、G大阪とトップリーグのJ1で試合に出続けてきた(13年のG大阪でのJ2時代を除く)。そこに価値がある。

なぜ遠藤は40歳になる今までトップレベルでのプレーを続けてこられたのか。それはやはり、あの独特のプレースタイルに理由がある。

まず、彼は大きなケガをしない。体の手入れを怠らないのは大前提だけど、それ以上にケガを未然に防ぐ技術の高さを持っている。ドリブルでボールを運ぶタイプの選手はファウルで止められることも多いからケガをしやすい。

でも、遠藤の場合は相手が削ろうとしても、その前に簡単にボールをはたく。トラップもワンタッチパスもうまいから、相手も簡単に飛び込めない。

僕が関わっているアイスホッケーの世界でも(編集部注:セルジオ氏は06年よりアジアリーグに所属するH.C.栃木日光アイスバックスのシニアディレクターを務めている)、レベルの高い選手ほどパックのコントロールがうまいから、相手はボディチェックという接触プレーを仕掛けにくいんだけど、それと同じことだろう。

もうひとつは走力やスピードなどフィジカルを売りにしたプレースタイルではないということ。

実際、試合を見ていると、彼の運動量は多くない。時にはダラダラとしているようにも見える。でも、キョロキョロとつねに周囲を見回し、自分が生きるポジションを探し、効果的にボールに絡む。ボールをもらう時点で次はどこにパスを出すべきかも見えている。

そして、正確なキックで周りの選手を動かし、結局、一番目立っている。自分が走るよりもボールを走らせた方が効率的だということを理解し、実践している。今のJリーグならイニエスタや(中村)俊輔と同じだね。

G大阪で長くプレーしているから、周りの選手からの信頼も厚い。いい動き出しをすれば遠藤からパスが出てくる。そういう阿吽の呼吸がある。監督としても、こういう選手がいると助かる。ピッチ上の監督として試合をコントロールしてくれるのだから。

もちろん、中盤のパートナーにも恵まれた面もある。イタリア代表、ACミランなどで活躍したピルロの脇にガットゥーゾがいたように、G大阪では遠藤の近くに、明神、橋本、今野、井手口ら運動量が豊富でボール奪取に長けた選手がいた。

また、海外挑戦をしなかったことも記録更新には大きかったけど、僕が言うまでもなく、彼なら海外でもやっていけたはず。10年南アフリカW杯での活躍もそうだけど、意識を高く持っていれば、国内にいても世界で戦えることを証明してくれた。

最近はフル出場も減り、CKも宇佐美にまかせるようになった。年齢を考えれば、夏場など体力面の厳しさはある。それでも彼のプレースタイルであれば、まだまだ数年はやれるはず。Jリーグの若手は彼のプレーからたくさん学んでほしいね。

★『セルジオ越後の一蹴両断!』は毎週木曜日更新!★