ここ数年、開幕前になると、ある意味ではチームの仕上がり以上にその状態が注目されてきた阪神の"元エース"藤浪(ふじなみ)晋太郎。高卒1年目から3年連続2桁勝利を挙げた剛腕も、2016年から深刻なノーコン病に苦しみ続け、昨年はついに1軍登板わずか1試合に終わった。
そんな藤浪が昨秋と今春のキャンプで師事したのが、中日の生え抜きOBでありながら阪神の臨時投手コーチに就任した山本昌(まさ)氏だ。スポーツ紙阪神番記者が語る。
「藤浪は右打者の頭付近にすっぽ抜けてしまうボールに悩み続けていました。山本臨時コーチはその改善方法として、リリース時に手首を立てること、そのためにチェンジアップの練習をすることが効果的だと指南。これに藤浪も積極的に取り組んでいました」
ところが2月末、日刊ゲンダイが「山本臨時コーチは"途中降板"させられた」と報じた。阪神の投手コーチたちを差し置いて前に出すぎたため、キャンプの途中で肩を叩かれた......という内容だ。前出の阪神番記者はこの件について、
「確かに2月16日で山本臨時コーチがキャンプを離れたのは事実。ただ、阪神球団は『もともと16日までの約束だった』と否定しています」というが、在阪テレビ局関係者は次のように指摘する。
「今春キャンプの序盤までは、山本臨時コーチはメディアに対し、藤浪らへの指導について詳しく話してくれました。でも、あるときから急に口が重くなり、『彼はやるべきことはわかってるんで』などとはぐらかすようになったんです。
どうやらその理由は、一部の阪神OBが、熱心に指導する山本臨時コーチを快く思わなかったからのようです。それを耳にした山本臨時コーチは、目立つことを避けるようになってしまった。そんななかでのキャンプ離脱だったので、あのような報道が出てしまったのでしょう」
それが本当ならなんとも後味の悪い話だが、ともあれ大事なのは藤浪の状態。復活への道筋は見えたのだろうか?
「うん......。確かに、右打者への抜け球は目に見えて減りました。正捕手の梅野隆太郎も『よくなった』と言っていましたしね。ただ......」
最大の課題だった抜け球が解消したのに、何か問題が?
「実戦では相変わらず四死球が多いですが、もともと荒れ球の投手ですからそれは想定内。それに、ブルペンでの投球を見れば、やはり藤浪は阪神投手陣の中でも別格。圧倒的なボールを投げています。
しかし問題は、いざマウンドに上がると、150キロ以上のボールが簡単に打ち返されていること。山本臨時コーチとの取り組みが実を結び始めたことで、逆に『150キロ出るけど打ちやすい投手』になっているのなら、いいのか悪いのか......。まだなんとも言えません」(前出・阪神番記者)
3月5日、生き残りをかけて大阪商科大学との交流戦に登板した藤浪は、4回を投げ3安打1失点1四球。抜け球は目立たず、最速は155キロ。大学生相手とはいえ、なんとかアピールに成功した形だ。阪神ファンは復活を心待ちにしているが、果たして......。