南野拓実(右端)所属のリバプールは、アウェーでのCLラウンド16第1戦でまさかの敗戦。ホーム連勝記録は継続中(54連勝)だが、第2戦で巻き返せるか

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響により、日本国内ではJリーグなどスポーツイベントの中止や延期が相次いでいる。

スポーツファンにとっては寂しい限りだが、海の向こうではサッカーの最高峰UEFAチャンピオンズリーグ(CL)が再開。今季もグループステージを勝ち抜いた16チームによる決勝トーナメント(ラウンド16)が幕を開け、熱戦が繰り広げられている。

とりわけ今季のCLが例年以上の盛り上がりを見せている最大の理由は、開幕当初に優勝候補と目されていたビッグクラブが、軒並みラウンド16第1戦で苦戦を強いられたからにほかならない。

昨季の王者リバプール(イングランド)は、鉄壁の守備を誇るアトレティコ・マドリード(スペイン)と対戦し、モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネによる自慢の3トップが沈黙。開始4分に喫した1失点に泣き、初戦を落とした。

また、昨季から無敗を続けていたプレミアリーグでは、下位ワトフォードに0-3で完敗して無敗記録が「44」でストップ。ここにきて暗雲が立ち込めている。現在、「世界最高の監督」と評されるユルゲン・クロップ監督はこの苦境をいかにして乗り越えるのか。ホームでの第2戦は要注目だ。

15-16シーズンからCL3連覇を達成したレアル・マドリード(スペイン)も、第1戦でマンチェスター・シティ(イングランド)に逆転負けを喫し、崖っぷちに立たされている。

チームを率いるのは、CLではいまだ途中敗退を経験していないジネディーヌ・ジダン監督だけに、まだ逆転の可能性は十分に残されているが、第1戦でアウェーゴールをふたつ献上している点が不安材料か。

そのほか、初戦でリヨン(フランス)に敗れた強豪ユベントス(イタリア)と、同じくドルトムント(ドイツ)に敗戦を喫したパリ・サンジェルマン(フランス)も苦しい状況だ。

どちらもホームでの第2戦で逆転勝利をもくろむが、ユベントスは第1戦で不発だったエースのクリスティアーノ・ロナウドにゴールが生まれるかどうか、パリはネイマール、キリアン・エムバペ、マウロ・イカルディ、アンヘル・ディ・マリアの「ファンタスティック4」が爆発するかどうかが最大のカギとなりそうだ。

不覚にも初戦を落としてしまった強豪4チームとは対照的に、第1戦に勝利したことで一躍優勝候補に名乗りを上げているのが、シティとバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)の2チームだ。

英国大手ブックメーカーで1番人気に躍り出たシティは、第1戦で先制を許した直後の選手交代策が奏功したように、かつてバルセロナを率いた時代に2度CL優勝を経験しているペップ・グアルディオラ監督の存在が大きい。

先月にはUEFA(ヨーロッパサッカー連盟)からクラブ財政に関する規約違反を指摘され、来季以降2年間はCL(またはヨーロッパリーグ)への出場停止処分を下されるという衝撃のニュースが世界を駆け巡った。それだけに、今季中にCL初優勝を飾って名誉挽回を図りたいところだ。

ブックメーカー2番人気のバイエルンは、アウェーでのチェルシー(イングランド)戦で3得点を挙げて完封勝利を飾っている。最大の売りは、ここまでの7試合で計27得点、1試合平均は脅威の約3.9ゴールを記録する圧倒的な攻撃力にある。

今季の序盤は不振が続いていたが、昨年11月に監督交代を断行したことが好転のきっかけとなり、ハンス=ディーター・フリック新監督が見事にチームをよみがえらせた。チームの完成度と勢いではシティを上回り、さらにCLでは過去5回の優勝を誇っている点が追い風となる。

一方、今季のCL得点王争いに注目してみると、現在11得点で独走しているバイエルンのロベルト・レヴァンドフスキ(ポーランド代表)が最右翼だろう。

ここまで出場した6試合すべてで得点を記録し、ブンデスリーガでももっか25得点を挙げて得点ランキング首位を快走するなど、コンスタントにゴールを量産し続けている。この調子を持続できれば、自身初のCL得点王も夢ではない。

そのレヴァンドフスキを1点差で追走しているのが、彗星(すいせい)のごとく登場した大注目の若手ストライカー、ドルトムントのアーリング・ブラウト・ホランド(19歳)だ。

昨年のU-20W杯で、ノルウェー代表として1試合9得点を記録して一躍脚光を浴びた大型FWは、今季のCLグループステージでは南野拓実(現リバプール)と共にザルツブルクの一員としてプレー。6試合で8ゴールを挙げたことが評価され、冬の移籍期間にドルトムント入りを果たした。

すると、ブンデスリーガのデビュー戦では途中出場ながらハットトリックを達成し、CLラウンド16第1戦ではパリ相手に2ゴールを挙げて勝利の立役者となるなど、現在最も旬なストライカーとして注目を浴びている。10代でCL得点王に輝けば、もちろん史上初の快挙となる。

07-08シーズン以降、CL得点王は常にC・ロナウドとリオネル・メッシの2大スターが独占してきた(14-15はネイマールを加えた3人が得点王)。

しかし現在は、ふたりともまだ2ゴールしか挙げていないことを考えると、今季は2大スターの時代にピリオドが打たれる可能性が高い。そういう点でも、得点王争いは注目に値する。