レッズに入団した元西武のヒットメーカー秋山は、オープン戦でもその持ち味を発揮。リードオフマンとして大きな期待がかかる

現地時間(以下同様)3月12日、新型コロナウイルスの影響でMLBのオープン戦が中止となり、開幕も大幅に遅れることが確実になった。当初は4月9日の開幕が目標とされたが、さらに先延ばしされることが決定し、今季のスタートは5月の最終週~6月になるのでは、という予想も出始めている。

今季にメジャー入りした日本人選手、筒香嘉智(つつごう・よしとも/レイズ)、秋山翔吾(レッズ)、山口俊(ブルージェイズ)は、残念な意味で歴史に刻まれることになった2020年シーズンにどんな状態で臨むことになるのか。スプリングトレーニングの結果、米メディアの報道から"ジャパニーズトリオ"の今後を占っていきたい。

まずは、オープン戦12試合で打率1割7分9厘(28打数5安打)、1本塁打だった筒香。この数字が示すとおり、メジャーへの適応が順調に進んでいるとは言い難い。

オープン戦2試合目のレッドソックス戦(2月25日)では、左投手からホームランを放つなど順調なスタート。しかし、その後は不振に陥り、結局は14打席連続無安打でオープン戦の中止を迎えた。「ストライクゾーンに戸惑っている」という報道もあり、アジャストメントの時間が必要なのは事実だ。

3月9日のブルージェイズ戦で1番打者に起用されたのも、数多くの打席に立たせるための「チーム側の配慮だった」と伝えられている。ピッチャーに慣れるための貴重な実戦の場が、予定よりも早く打ち切られたのは痛い。

今季のレイズの前評判は高く、米スポーツ週刊誌『スポーツ・イラストレイテッド』の電子版で組まれた開幕特集では、94勝68敗の好成績を予想。ア・リーグ東地区でヤンキースの対抗馬になると目されている。

そんなチームで、内野(三塁)、外野(レフト)の両方の守備をこなせる筒香に対する期待は小さくない。その分、早い段階で結果が求められるだろう。

28歳の日本人スラッガーは、実戦再開後にどれだけ早く適応を進め、自慢のパワーをメジャーで発揮できるようになるのか。

打撃だけではなく、米スポーツ専門局『ESPN』の敏腕記者、ジェフ・パッサンに称賛された守備(注・三塁の守備)でも存在感を示せるのか。選手たちがキャンプ地に戻って開幕を迎える頃、その真価が問われることになる。

続けて、オープン戦10試合で打率3割2分1厘(28打数9安打)という結果を残した秋山は、アリゾナのキャンプ地から聞こえてくる評判もすこぶる良好だった。

リードオフマンとして、メジャー通算打率3割7厘、284本塁打の強打者であるジョーイ・ボットの前を打ち、いきなり力を発揮。シーズン開幕後も1番打者での起用が濃厚のようだ。

「秋山は日本での過去5年、3割8分5厘以上の出塁率を残してきた。中距離打者で、ラインドライブが打てる選手。出塁率が高く、好守の外野手の獲得をもくろみ、レッズは1月に3年2100万ドル(約22億7000万円)の新契約で秋山を獲得した。

彼はここまで、その期待に見合った働きをしている。渡米直後ゆえに疑問符がつく存在と見なされていたが、すでに実力を証明している」

そんな、地元メディア『シンシナティ・ドットコム』に掲載された記事からも、開幕時には32歳になるルーキーへの評価の高さが伝わってくる。

近年、低迷が続くレッズは、今オフに野手の秋山、マイク・ムースタカス、ニック・カステラノス、投手ではウェイド・マイリー、ペドロ・ストロップと、実績ある選手を次々と獲得する大補強を展開した。ニック・センゼルなど若手注目株もおり、昨季、得点数でメジャーワースト6位だった打線が向上することは濃厚だ。

グレードアップしたラインナップの中でも、秋山、ボットと続く1、2番は見どころのひとつになるかもしれない。そうなった場合、やや停滞気味の名門カブスを押しのけての、8年ぶりとなる地区優勝も視界に入ってくる。

最後は、オープン戦4試合(2先発)に登板し、9回12安打9失点、防御率9.00だった山口。2年635万ドル(約6億9000万円)でブルージェイズに入団したが、オープン戦では苦しんだ。

全試合で失点しただけでなく、9イニングで5本の本塁打を許したことも。特にア・リーグ東地区には、球場の造りや気候条件などから「打者に有利」とされるスタジアムが多いだけに、先行きに不安を抱いたファン、関係者も多いだろう。

山口の目標は「先発ローテーション入り」だ。現時点で、柳賢振(リュ・ヒョンジン)、タナー・ロアーク、マット・シューメイカー、チェイス・アンダーソンのローテ入りは確実。残ったひと枠をトレント・ソーントンと争うが、オープン戦で結果を出せなかった山口は厳しい立場にある。地元メディアの報道でも、山口に関する厳しい記述は少なくない。

ただ、MLBの公式サイト『MLB.com』によれば、ブルージェイズのチャーリー・モントーヨ監督は「ボールに慣れることがすべて。(オープン戦の投球は)プロセスにすぎない。慣れる唯一の方法は打者と対戦することで、彼は大丈夫だ」と述べていたという。

日本で14シーズンを経験したベテランは、監督の言葉どおりにメジャーの水に慣れ、投球内容を向上させていけるのか。最初は、ロングリリーフで実績を積み重ねていくのもいいのかもしれない。長いシーズン中には必ずケガ人が出るため、力を蓄えておけば,先発のチャンスが巡ってくることも十分あるはずだ。