それぞれの環境に応じて工夫しながらスポーツを楽しめればいいと語るセルジオ越後氏

新型コロナウイルスの影響によるJリーグの中断期間が続いている。プロなのに試合ができない選手たちには同情するしかないけど、練習することまで禁じられているわけじゃない。その意味で本当に気の毒なのは子供たちだ。

大半の小中高が少なくとも春休みが終わるまで休校。その間、校庭で遊ぶこともできず、部活も大会が中止や延期となり、ほとんどが活動休止もしくは自粛となっているそうだ。

今はなるべく外に出ないほうがいいというのは理解できる。でも、だからといって、ずっと家に閉じこもって、体を動かさないのも無理がある。子供の仕事は遊ぶことだ。どこかで発散しないと、心も体もおかしくなってしまう。特に普段、部活やクラブでスポーツをやっている子供にとっては影響が大きいだろう。

今、多くのサッカー選手が子供たちに向け、自宅でできるリフティングや筋トレなどの動画を公開しているのは、素晴らしい取り組みだと思う。 

ただ、日本の住宅事情を考えれば、残念ながら部屋の中でリフティングをできる家は少ない。また、子供がひとりで黙々と筋トレを続けるというのもなかなか難しい。やはり、外に出て体を動かすのが一番自然だ。

そこであらためて感じるのは、日本は学校以外でスポーツや外遊びをする環境が乏しいということ。自宅に広い庭でもなければ子供は公園に行くしかない。それなのに、最近は野球やサッカーなどのボール遊びが「危ないから」「うるさいから」という理由で禁止されている場所が多い。つまり、野球少年やサッカー少年の行き場がない。

ちなみに、ブラジルではよく「ルールを守らない人はダメ。でも、ただ何も考えずにルールを守る人はもっとダメ」という言い方をするんだけど、もし「サッカー禁止」の公園があったとしても、ほかにいい場所がなければ、子供たちは朝や夜などにこっそりやると思う。

また、それを見逃してくれる大人も多いだろう。ダメだと言われたら、たとえ納得していなくてもきちんと従う日本人とは正反対だよね。

話がそれたけど、良くも悪くも、日本人はマニュアルに忠実。横並びが好き。でも、こんなときくらいは学校の校庭を開放したり、屋外での部活動を認めたりするなど、各自治体、学校の裁量の下、融通を利かせるべきだ。長い時間じゃなくてもいいのだから。それぞれの環境に応じて工夫しながらスポーツを楽しめればいい。

例えば、サッカーでフルコートの試合ができないのであれば、フットテニスやフットバレー、利き足じゃない足でのキックチャレンジ(的当て)をやればいい。

以前、高校生を教えたときには、ペナルティエリアの外からボールを蹴ってクロスバーに当てるゲームをやって、相当盛り上がった記憶がある。僕自身も、子供の頃は友達と電柱にボールを当てるゲームをよくやっていたし、楽しみながら上達できるやり方はいくらでもある。

サッカーに限らず、ほかのスポーツをやるのもいい。バレーボールはヘディングでジャンプするタイミングのコツをつかめるし、体を頻繁にぶつけ合うバスケットは、相手との接触時の体の使い方を身につけられる。

こんなときだからこそ、大人は子供を正しく導いてあげなければいけないし、スポーツの存在意義、楽しみ方を考える機会にできるといいね。

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