レアル・マドリーから期限付きで移籍し、マジョルカでプレーする久保。今季は途中出場が多いなかで3得点を記録するなど、欧州の名門クラブが注目する選手になった

新型コロナウイルスは欧州サッカー界にも大きな影響を及ぼし、プレミアリーグやラ・リーガ、ブンデスリーガ、セリエAを含む、ほとんどのリーグが中断。そして試合がないとき、メディアやファンはいつもよりよけいに想像を膨らませる。そう、移籍マーケットについて。

日本サッカー界の未来を担う久保建英は現在、レアル・マドリーから期限付きでマジョルカに在籍している。ラ・リーガでのデビューシーズンは、ここまで24試合に出場して3ゴール。下位に沈むチームのアタッカーとしては悪くない数字だし、この18歳が得点した試合ではチームが負けていない。

そんな才能ある若き日本人選手を他クラブが放っておくはずもなく、早くも今季終了後の移籍の噂が囁(ささ)やかれている。西メディア『ドン・バロン』は3月31日、アーセナルのミケル・アルテタ監督が久保を気に入っており、マドリーが欲しがっているピエール=エメリク・オーバメヤンとのトレード(久保+金銭)なら、実現するかもしれないと報じた。

また西紙『AS』は、今季のラ・リーガで4位と好調のレアル・ソシエダへの移籍の可能性を伝えている。こちらもマドリードからローンでソシエダに加入しているマルティン・ウーデゴーアの予想を超える活躍により、今夏には所属元に戻ることが決定的。その後釜として久保に白羽の矢が立てられているという。

そのスペイン、いや欧州全体の移籍関連の最大の話題といえば、リオネル・メッシの去就にほかならない。

現在32歳のスーパースターは先頃、バルセロナのチームメイトと共に、疫病の蔓延(まんえん)で苦しむほかのスタッフとクラブを助けるため、事態が落ち着くまでサラリーの7割減を受け入れると発表。しかし、以前からクラブのフロントとの仲たがいが報じられており、メッシは来季終了後に満了となるクラブとの契約を更新していない。

一部の上層部は「フリーで離れられるくらいなら換金すべき」と考えているようで、ついに育成時代から過ごすバルセロナを離れる可能性が浮上しているのだ。

また、バルセロナのフロントには、自分たちに都合がいい偽情報をSNSで拡散するために業者を雇っていた疑いがあり、複数の上層部が辞任したりするなど混乱が続いている。そんな状況にインテルのマッシモ・モラッティ元会長は「メッシの獲得を求めるのは、禁じられた夢ではなくなった」とイタリア国営放送『RAI』のラジオに語った。

メッシと並ぶサッカー界最大のスター、クリスティアーノ・ロナウドにも移籍の噂がついて回る。

35歳のポルトガル代表がプレーするイタリアは、新型コロナウイルスの影響を最も受けている国のひとつ。先頃、ロナウドらユベントスの選手たちは3月から6月までのサラリーを削除することでクラブと合意した。それでもユベントスの財政は逼迫(ひっぱく)しているようで、群を抜く高額のサラリーを受け取っているロナウドの放出を検討しているという。

伊紙『コリエレ・デッロ・スポルト』によると、その有力候補は彼の古巣マドリーで、2年前に支払った半額ほどの5000万ユーロ(約59億円)でも放出するかもしれないという。

また、英ラジオ『トーク・スポーツ』のインタビューで、ロナウドの代表での同僚ジョゼ・フォンテが、「彼がレアル・マドリーを愛していることを知っている。あそこには彼の友人がたくさんいるし、ドアは開かれたままだ」と話したことが、さらなる臆測を呼んでいる。

もっとも、マドリーが本当に欲しがっているのはベテランのロナウドよりも、パリ・サンジェルマンに所属する21歳のキリアン・エンバペだ。現在、移籍市場で最も価値のある選手と評されるこのフランス代表は、以前からマドリーのジネディーヌ・ジダン監督への憧れを口にしている。ジダンもその才能を高く評価しており、両者は相思相愛の関係にある。

これまでに何度も噂されてきたエンバペのマドリー行きについて、元フランス代表でパリでもプレーしたジェローム・ロテンは「私が知る関係者の話によると、エンバペのマドリー移籍はほぼ確定している。パリとエンバペの契約(2022年6月末まで)の延長はありえない。(マドリーへの移籍は)時間の問題だろう」と『ラジオ・モンテカルロ』で語っている。

4月1日に、エンバペの同僚のエディンソン・カバーニがヴィッセル神戸への移籍に合意したと報じたのは、仏メディア『ルキャルネ・オポジ』だ。日本のメディアはこの報道に色めき立ったものの、後にエイプリルフールのジョークだったことが判明した。

ただ、33歳のウルグアイ代表の契約が今季までという状況もあり、実際はチェルシーやアトレティコ・マドリーといった欧州のビッグクラブへの移籍が濃厚とみられている。ウルグアイのメディア『オバシオン・デジタル』は、「息子はまだ欧州でプレーを続けていきたいと考えており、スペインが最有力」と話すカバーニの母のインタビューを掲載した。

このように、フットボール界のトップレベルでは、今日もさまざまな噂が駆け巡っている。しかしなかにはフェイクニュースもあり、当然ながら、すべてを真に受けるわけにはいかない。その偽情報さえも、エンターテインメントとして成り立っているのかもしれないけれど。

いずれにせよ、フットボールの移籍市場では何が起こっても不思議はない。実際は、パンデミックの影響により、今季終了後の動きは少なくなるとみられているが、さてどうなるか。